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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第3章》ドワーフ王国編

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第20話

《バロン視点》

 一瞬の油断で漆黒の死神・ダークに逃げられた儂は、元の道を振り返るが……。

(おおぅ、派手に戦い過ぎたのぉ……)

 儂とやつの戦いの余波で、元の道は完全に塞がってしまっていた。ダークが逃げて行った道も、儂が追えないように塞がれてしまっていた。


「ハァ、まあ良いか……。アサハには勇者が駆けつけておったしな。ダークも怪しいが、手合わせした感じでは悪党じゃない気がするしのぉ」


 儂はゆっくりと上の火口を目指して登り、時間が掛かったが王城へ戻ることができた。

 

 帰った儂が聞いたのは、弟子の喪失と、孫の死と罪じゃった――


 

◇ ◇ ◇

 王城の牢の中で、儂は絶望していた――

 

 王城に戻り火山でのあらましを聞いた儂は、自ら王城の牢の中に入った。

(儂は何をしてたんじゃ? ダークと打ち合わずアサハを助ければ良かったのか?)


「いや、そうではないな……、そこではないか……」

(アサハは傲慢だった……。儂は知っていたのだ……)


 儂は俯いたまま両手で顔を覆う。


「罪を犯してでも……、ウリエが欲しかったのか……」

(ウリエに執着しているのも知っていた……。歪んではいたが、本当に好きならばと……)


「儂にできることは、あったよなぁ……」

(結果として、ウリエも傷つき泣かせ……、アサハ自身も死んでしもうた……)


「アサハ……、馬鹿者がぁ……」


 幼い頃のアサハを思い出し、歯を食いしばる……。

(孫と向き合わなかった儂も……、大馬鹿者じゃぁ……)


 それに――

 可愛い弟子の、ウリエの顔が浮かんだ……。


「あの技を使用したということは、母の形見を失ったのか……」

(唯一の形見を……、あの子の心中を想うと……)


 アサハ……、ウリエ……、儂は自分だけ、のうのう生きていることに腹が立ってきた。


 自身の拳を見つめる――

(儂の力を腕に集中して、儂自身を攻撃すれば……)


 その時、レックス王が牢の前まできた――


「酷い顔ですよ、バロン叔父様」


 チラリとレックス王を見て、また俯き呟く。


「……儂を処刑して、くれないか?」

「なぜですか?」

「アサハの傲慢、ウリエへの執着、それを知っていて、放置してしまった……」


 レックス王はため息を吐いて……。


「アサハは罪を犯した。そして、処罰される前に……」

「……じゃから儂を、代わりに処罰してくれんか?」

「…………」

「……もう、疲れたんじゃ……、儂はもう……」


 瞬間――空気が張り詰める。

 儂は顔を上げ、レックス王を見た――


「あなたを処罰したら”ウリエが”悲しむ!!」


 レックス王は鬼の形相で儂を睨んでいた――儂は驚き目を見開いてしまった。


「ウリエにこれ以上の重圧を掛けるつもりか!? 甘えないでください!!」

「なっ……」

「俺も怒っているんだ!! あなたにじゃない!! 俺自身にだ!!」

「…………」

「だからこそ!! 俺は王として振る舞う!! ウリエをこれ以上悲しませないために!!」

「……その、通りじゃな……」

「もしもあなたが!! あなた自身が罰を必要とするならば!! 生きてっ!償って下さい!!」


 そう告げたレックス王は振り返って去っていった。


(……儂が、間違っていたな……)


「……ウリエだけは、悲しませてはいかんよな」


 儂は自身に圧し掛かった重りを抱えたまま、立ち上がることを決めた――



◇ ◇ ◇

《ウリエ視点》

 リミットブレイクの反動も抜け、あたいは療養終了の許可をもらった。

 その日がそのまま帰還の日となった。


 謁見の間――

 父さんが直々にあたいたち勇者パーティーへ言葉を掛けてきた。


「勇者アイン、そしてウリエ――」


 宰相から包みを受け取り、玉座から降りてこっちにくる。


「――この国を救ってくれたこと、心から感謝する」


 そう言って差し出されたのは――

 布に包まれた、大きな斧。


「……これは?」

「『進化の斧』だ。このドワーフ王国の国宝だ」


 父さんは、静かに続ける。


「不壊属性を持った斧で、使い手と共に進化する秘宝だ」

「…………」


 あたいは、思わず息を呑む。

 塵になった形見である相棒を思い出し、胸が痛んだ……。


「……また、あの技を使ったら……」


 あたいは気づかずに不安の声が漏れてしまった。


「大丈夫だウリエ」


 父さんは、はっきりと断言した。


「聞いてなかったのか? この斧は”不壊”、折れることが無い」

「え?……」

「この斧はウリエを守り続ける。きっと、あいつの想いも一緒のはずだ」

「かあさん?……」

「ああ。母さんいつもお前の未来を心配していたよ」

「母さんが……」

「勇者と共に魔王と戦うと誓ったのなら、この進化の斧は絶対にウリエに必要な力だ!」


 父さんの想い、母さんの想い――


 そっと斧に触れた。

 進化の斧に意志がある様に、鈍く光った気がした……。


「……ありがとう、よろしくね」


 胸の奥の悲しみが、少しだけ溶けていく気がした……。



◇ ◇ ◇

 王城を出てから王国の門を抜けるまでの間――

 あたいたちは盛大に見送られながらドワーフ王国を後にした。

 

 そして、エイユウ学園への帰路――

 帰りの馬車は大型で、みんなで一台の馬車に乗っていた。


(ドワーフ王国のみんなにも元気が戻ったみたいで良かった……、本当に良かった――)


 送り出してくれた時の王国のみんなの表情が、あたいたちが行った時と明らかに違っていて、活力が戻った良い顔をしていたとあたいは満足していた。


「フン、フン、フ~ン」


 あたいは気分が良くなりすぎて鼻歌を歌ってしまったのだけど――


(……あれ? あたい以外はなんか……微妙な雰囲気?)


 それにみんな、すごくこっちを見ている気が……。


「「「「…………」」」」


 そんな中、ラフィが代表したかのように話しかけてきた。


「……ねえ、ウリエ。……ちょっと、アインとの距離が近くない?」


 ラフィが青筋を立てて言ってきた。


「……そうかな?」


 みんなも同意なようで……。


「確かにそうかもね」

「そうですね」

「近いと思いますぅ」

「……うん」


 あたいはずっと隣に座っているアインに視線を向ける――


「アインもそう思う?」

「っ!……まぁ、そうかなとは思ってたかも……」


 アインの歯切れの悪い言い方にはちょっとだけムッとするけど、あたいは広い心で許すことにした。

(あっ! そういえば、ちゃんと言ってなかった?)


「……ウリエ?」


 アインが気にして覗き込んでくる。

 そんな彼にあたいは悪だくみしたような笑みで返す。


 次の瞬間――


 ぎゅっ。


 あたいはアインの腕に、抱きついた――


「「「「っ!!!!」」」」

「ちょ、ちょっと!?」


 あたいは満面の笑顔でみんなを見て――


「だって、アインは――」


 アインの腕をもっとギュッと抱きかかえて――


「――あたいの婚約者様だからねっ!!」


「「「「「えええええ!!」」」」」


 アインの顔が真っ赤になって、照れているのが分かった。

(父さん……、母さん……。あたいは幸せを掴んでみせるからねっ!)

 

 あたいの婚約者様とね――


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