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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第3章》ドワーフ王国編

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第16話

《アイン視点》


「各陣営準備ができたら舞踏会場に来て下さい。ささやかながら歓迎晩餐会を行います」


 宰相がみんなに告げる。


「おぉ!酒か!野郎ども明日からの景気づけに飲むぞ!」

「「「「「応!!」」」」」


 アサハたち戦士団は大会議室から出ていった。


「じゃあ、あたいたちも準備しよっか! みんなこっちね!」


 ウリエに連れられてみんなも出ていく。


「アイン様はこちらです」


 僕だけ執事っぽい人に連れられ着替え、応接室で一人待つことになった。

 応接室の調度品も見事で、見て回っているとバロンさんがやって来た。


「おうアイン、さっきは立派だったのう」

「ありがとうございますバロンさん!……婚約者は聞いてなかったんですが……」


 僕はどうしたものかと少し困りながら答える。


「なんじゃ? ウリエじゃ嫌なのか?」

「いえいえ! ウリエは可愛いし嫌とかではなくて……、僕は恋人とかもいたことがないので……、婚約者って聞いて驚いているというか……」

「ハッキリせんのう? 嫌ではないのか?」

「それはっ!……嬉しいです……」

「なら良いじゃないか!」


 そう言って豪快に笑うバロンさん。

(……急に沸いた話で混乱してるけど、良いのか?)


「それよりも、じゃ……」


 バロンさんは急に真剣な表情になった。何かあるのかと、僕も気を引き締めて向き合う。


「アサハじゃ……。あいつは儂の孫なんじゃがな……、本当に増長してのぉ……。今では儂の言うことも、聞かなくなってしもうた……」


 バロンさんは一度目を閉じ、再び開いてから僕を見た。


「申し訳ないがアインよ……。此度の勝負、必ず勝ってあやつの目を覚ましてやってくれんか?」


 少し驚いたが、僕もはっきりと返した。


「僕ができることを全力でやります。必ず勝ってみせますよ!」 

「ありがとう。頼むぞアイン」


 バロンさんは席を立ち扉へ向かう。


「では邪魔したのぅ。儂はやることがあって歓迎会に出れんが、お前さんたちを歓迎しておるよ」

 

 出る前に一度振り返って僕を見てウインクをする。


「ウリエは良い娘じゃ! 大事にするんじゃぞ!」

「っ!!~~」


 バロンさんは一方的に言って去って行った――

 


◇ ◇ ◇

 夜――王城の舞踏会場にて。


 歓迎会は盛大で、豪快な料理と酒、ドワーフらしい、気取らない宴が始まった。


「みんなすごく綺麗だよ。今まで見たどの宝石よりも輝いてみえるよ」


 みんな綺麗に着飾っており、僕は感じるまま全力で褒めていった。

(ステラ姉さんが女性が着飾った時は全力で褒めなさいって言ってたしね!)


 照れたり、赤面したりとみんなの反応は様々だったけど、喜んでくれたようで良かった。


 初めは勇者パーティーで固まって楽しんでいたけど、今はみんないろんな人たちに捉まって質問攻めになっているようだった。

(みんな綺麗だからねぇ)


 僕はそんなことを思いながら、ウリエの姿がないことに気づいた。

(……あれ? どこに行っちゃったんだろ?)


 僕は会場を探して回り、バルコニーに一人でいるウリエを見つけた――


「ウリ…………エ?」


 僕は声を掛けようとしたけど、うまく声が出せなかった……。


 ドワーフの女の子は低身長で手足は細く、どこにそんな力があるのだろうという見た目をしている。ウリエもやっぱりそうで……。

 

 バルコニーは空洞からの月明かりが照らす作りになっていて――


 サイドで編み込まれた紫色の髪が月明かりを反射して輝く――

(――とても綺麗だ……)


 下へ視線を向けた茶色の瞳は長いまつ毛に隠れ儚く見えて――

(――消えてしまわないように、抱きしめたい……)


 髪色に合ったラベンダー色のドレスは女の子らしいシルエットが際立っていて――

(――華奢でスタイルが良いから、まるで本から出てきた女神様みたいだ……)

 

 僕が見惚れていると、ウリエがこっちに気づいて……。


「あれ? アイン、どうしたの?」


 僕を見たウリエがキラキラと眩しくて、慌てて下に視線を向けると大きな果実もあって余計に慌てふためいてしまって、僕は視線を逸らしてしまった……。


「こら! なんで無視すんのさ!」


 ズンズンとこっちに来るウリエ。


「……ウリエが綺麗すぎて……見惚れてしまったところに声かけられたから、慌てちゃって……」


 僕は頭が混乱していて正直に言ってしまった。


「っな!!…………」


 ウリエも顔を真っ赤にしてフリーズする。


「「…………」」


 僕とウリエはお互いに下を向いたまま、バルコニーで静かに涼んでいた。


 しばらくして――


「……アイン、ちょっといい?」


 ウリエは意を決した表情で話しかけてきた。


「その……、今日の婚約者の話、あったでしょ?」

「うん……」

「父さんがさ、謝ってきた」

「え?」

「あたいの婚約者を勝負で決めるとか言っちゃってごめんってさ。言う前に相談してって話だよ……。でもね、最後に決めるのはお前に任せるからって言ってくれた……」

「……良いお父さんだな」

「でしょ」


 ウリエは少しだけ、安心したように笑う。


「アイン。あたいは……、あたい自身で決めるからね」

「うん」


 僕は迷いなく頷いた。


「ウリエの気持ちが一番大事だ!」


 僕の返答にウリエは一瞬だけ目を見開いて――

 ぷいっと顔を背けた。


「ばか、あんたなら……」

「ん? なんて?」

「絶対勝とうねって話!」

「うん! それはもちろんだよ!」



◇ ◇ ◇

 翌朝――


「行くぞ野郎ども! 火口方面だ!」

「「「おう!!」」」


 アサハの戦士団は早朝から動き出した。

 鎧を鳴らし、武器を担ぎ、迷いなく王城を後にしていく背中。

(猪突猛進……)

 僕はその様子を見送りながら、素直にそう思った。

(決断力と行動力。それ自体は、戦士として間違っていないと思うけど……)


「……ちょっと、嫌な予感がしますね」


 ぽつりと呟いたのは、ラフィだった。


「火焔鉱石の異変が起き始めたのは三年前。それだけ長期間、原因不明のままだったということは……、単純な魔物被害ではない可能性が高いです」


 みんなも頷く。ラフィは微笑みながら、王城の奥を指差した。


「まずは調べましょう。情報収集してから行動よね?」


 僕たちは王城書庫へと案内されて調査を開始した。

 書庫は年代別に整然と並んでいて、ドワーフ王国が積み上げてきた歴史そのものだった。


「すごいですねぇ……」

 セラフは素直に感嘆する。


「エルドラド王国でもこんなにないよ」

 ミカエラは感心する。


「シルク神聖国も歴史資料だけで、こんなには……」

 エルは驚く。


「うちの国ね、記録だけは無駄に几帳面なんだ」

 ウリエが肩をすくめて笑う。


 各々が分担して文献を漁り始める。過去の伝聞、火山活動の記録や魔物災害の記述を中心に確認していった。


 ――数刻後。


「あった……」

 ラフィが一冊の古文書を掲げた。


「約百二十年前。火焔鉱石の産出量が急減し、国が揺らいだ時期がある」


 その原因は――


「……突然変異の、サラマンダー」


「火焔鉱石を捕食し、飽和状態になった個体は地上へ降り、都市部を目指した、か……」

「どうなったって?」


 ウリエが食い気味に聞くが、ラフィは首を横に振った。


「記録が途中で途切れてる。ただ……」


 その先を指でなぞる。


「“討伐に成功したが、戦力の半数を失った”と……」


 室内の空気が、少し重くなった。


 僕の脳裏に、即断即決で出発した戦士団の姿がよぎった……。



 僕たちは改めて火山方面への探索準備を整えていた。


「……嫌な予感が、現実にならないといいんですが……」

 エルが祈るように言う。

 

 その時――


 ――ドンッ!!


 遠く響いてくる爆音――


 しばらくして、王城に駆け込んでくる伝令兵。


「報告!! 火口奥地で特異個体を発見、戦士団が交戦に入ったとのことです!」

「……っ!!」

(やっぱり、刺激してしまったのか……)


 ついさっき関連した古文書が見つかった。

 飽和状態になった個体は一回休眠に入るみたいで……。

 百二十年前は休眠中に刺激をしてしまい――

 街に特異個体が攻めて来たと書いてあったのだった……。



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》

 爆発音のあった頃――


 俺は溶岩が流れる洞窟奥の上部の空洞で様子を伺っていた……。

 焦げた鎧、倒れる戦士たち。


「クソ……なんだよ、こいつ……!」


 アサハが歯を食いしばり斧を振るが、巨大なサラマンダーの鱗には傷一つ付かない。


「俺様が……負けるわけが……!!」


 ドワーフ王国イベントのボス魔物、巨大サラマンダー……。

 その姿を見て俺は思わず呟いてしまった。 


「……こいつ、最高難易度の個体やん」


(これは、平気なのか?……今のアイン、勇者パーティーならいけるか?)


 魔族諜報員の活動を追っていたら、アサハたちがサラマンダーと交戦している所に出くわしてしまったのである。

(……さて、傍観か……介入か……)

 思考していると――


「ッ!!」


 ドカァッン!!!!


 咄嗟に高速移動で緊急回避する。

 さっきまで俺がいた場所に、クレーターができていた……。


「お前じゃろう? 昨日から儂等の周りをチョロチョロしていたのは――」


 そこには――

 湯気のように立ち昇る闘気を纏い、完全武装した『七大聖王』、

 ”双斧の戦鬼”バロン・ドワフが立っていた。


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