第15話
《アイン視点》
「俺様は反対ですよ!! 国王!!」
大会議室に響いたアサハの声は、その場の空気を一瞬で冷やした。
赤紫色の髪を後ろで束ね、分厚い鎧を着込んだその男――アサハ・ドワフ。
(ウリエが、若くして戦士長に就いた実力者だけど、傲慢で視線がいやらしいから嫌いって……)
「勇者パーティーだか何だか知らねーがよ――」
アサハは鼻で笑い、僕たちを見回した。
「よそ者に国の危機を任せる理由がないよな?火焔鉱石の件は俺様たち戦士団が解決するってよ、先日の会議で決まっているのさ」
侮蔑的な表情で語る。
「……アサハ」
ウリエが低い声で彼を呼んだ。
「なんだ?ウリエ」
アサハは当然のように彼女を見る。
その視線は、ウリエの顔から下へ行き胸元を舐める様に見ていた。そのまま、他のパーティーメンバーにも同様の視線を送る。
ウリエは寒気がして身を抱える。
「やめなよ!その目!」
「はぁ? 何がだぁ?」
アサハは醜悪な顔でニヤニヤとしていた。
「前からそのいやらしい視線が嫌なんだよ!!」
「何言ってんだか? どうせ俺のもんになるんだから良いだろうがよ」
――ドン。
重い音と共に、会議室中に強い重圧がかかる。
全員が恐る恐る視線をレックスに向けた。
「おい、小僧共。俺の話を遮って何ピーチクパーチク言ってやがる?」
――沈黙
(すごい重圧だ……、全身が震えてしまう。これがレックス国王の威圧)
「……違うのです王よ」
「あ゛? 誰が話して良いと言った?」
「……申し訳ありません」
レックス王の威圧に顔面蒼白となったアサハは、冷や汗を流しながら頭を下げた。
「……そうだな、今回の依頼は国家存亡の大事な依頼だ……」
レックスは全員を見渡した。
「アサハ、勇者。双方に聞こう、お前たちにとってウリエはどういう存在だ?」
アサハは恐る恐る問う。
「……どういう意味でしょうか?」
「国家の存亡、姫の未来。国王、父、それぞれの立場から、いろいろ考えている」
僕は一瞬だけウリエを見る。
彼女は不安そうな顔をしていた。
「ウリエであれば俺に相応しいと思っています。流石は王のお子です。大変美しく」
彼女の胸をチラ見して。
「文句のつけようがありません。……しいて言えば、もう少し相手を立ててくれると嬉しいですね」
アサハはまた醜悪な顔になっていた。
今度は僕が自分の気持ちを伝える。
「ウリエは一緒に戦う仲間だと思ってます!」
その言葉に、ウリエの目が僅かに見開かれた。
「強いし、頼りになるし、無茶もするけど、だから背中を預けるし、預けられます!」
ウリエに向かってウインクをする。
「ウリエに嫌って言われるまで、僕は頼るし、頼られる存在でいたいって、そう思っています!」
レックス王は目を瞑り、微かに口元が緩んだ。
「よし。勝負とする」
低く、だがよく通る声でそう告げた。
レックス王は立ち上がり、全員を見据える。
「どちらが先に火焔鉱石の異変を解決できるかの、勝負とする!」
ざわり、と会議室が揺れる。
「勇者パーティー、アイン」
「そして戦士団、アサハ」
「勝った方が、正式にウリエの婚約者となる権利を与える!!」
「――王命、拝命致しました」
アサハは礼をしつつ、口元が弧を描いていた。
「全力で頑張ります!!」
僕は元気良く答えた。答えてから……。
(……あれ?……婚約者って言った?)
レックス王は宣言した。
「両陣営、準備に入れ――」
◇ ◇ ◇
《ケイ視点》
ドワーフ王国に着いた俺は、アインたちの動向を陰からコッソリと見守っていた。
アインたちが王国へ入る門を通った時――
「あ!門番の一人が慌てて駆けてった……、ウリエいきなり帰国バレしてんじゃん」
アインたちがバロンと出会ってる時――
「おぉ〜、生バロンじゃん。さすが『七大聖王』の一人、めちゃくちゃ強そう。今チラっと見た?この距離で気付いたのか?」
アインたちが馬車で護送中――
「傲慢巨乳好きアサハじゃん。あいつはマジでクズだよなぁ。早くざまぁされてしまえ!」
そして現在――
(さすがに王城内までは行けないからな……)
「俺は俺のやるべきことをしますかね〜」
(生レックスはちょっと見たかったかも……)
そんなことを考えながら、ドワーフ王国へ来た一番の目的の場所へ移動した。
目的の場所――その名は『コットウ屋』。
その名の通り骨董品を扱っていて、ドワーフ王国ではとても珍しい店だ。
「こんにちわ~」
商い中という看板があったので暖簾をくぐって中へ入る。
(ドワーフ王国で暖簾って!)
そんな心の中の突っ込みをしながら店の奥へ進んで行く。店の中は置き場狭しと様々な骨董品が並んでいた。
(これは並んでいると言っていいのか?ゴチャゴチャしすぎだろ……)
カウンターに店主がいるが、チラ見しただけで何も言ってこない。俺個人としては、嫌いな対応じゃなかった。
(たしか、右奥の上の棚に目的の物があったはず……)
ゴソゴソ……。
「……あった」
俺は目的の物を手に取り、よく確認する。
(うん……、間違いないな)
俺は大事に持った”それ”を、カウンターに持って行った。
「……これ下さい」
店主が眼を見開く!!――そして一言。
「……あんた、わかってるね」
「ッ!!」
俺も驚いた。
何とか動揺を隠しつつ、店主と向き合う。
店主の眼差しは「儂も一緒だ」と、そう告げていた――
会計を終えた俺に、店主は大事そうに”それ”を包んで持たせてくれた。
俺は笑顔で店主に手を差し出す。店主も笑顔で応じ、俺たちは熱い握手をした。
店を出て、俺は振り返る。
(こんなところにも、同志はいたんだ……)
俺は“小さな胸の女神像“を大事に抱え、一度宿に帰るのだった――




