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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第3章》ドワーフ王国編

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第14話

《アイン視点》

 ドワーフ王国はエイユウ学園から北東にあるカイエン山脈の麓にある。

 豊富な鉱脈があり、鍛冶が盛んで鍛冶師の腕も良く、世界各地からたくさんの強者が武具を求めて集まる国。


『良質な武具が欲しければドワーフ王国へ』


 そんな合言葉が大陸では常識だった。


 しかし、僕たちがドワーフ王国の門を抜けた先に見た印象は――


(ここがドワーフ王国?)


 ――想像していたよりも、とても静かだった。


 ドワーフ王国の街は岩と金属を組み合わせた堅牢な街並みで、至る所に鍛冶場の煙突が伸びていた。本来なら、昼夜を問わず金槌の音が鳴り響き、赤熱した炉の光が街を照らしているはずの場所だそうだけど……。


(金槌の音も、武具を求めて来た人々の声も、微かに聞こえる程度……)


 歩きながら見ると周りの職人たちの顔には、活気よりも疲労が色濃く滲んでいた。


「「「「…………」」」」


 伝聞との差異に、誰もが信じられない気持ちで声を出すことができなかった。


「……これが今のドワーフ王国の現状なんだ」


 その声は、いつもの元気が感じられないウリエの声だった。

 「そうだっ」と一歩前に出て振り返ったウリエは手を広げ、みんなに言った。


「今はこんなだけどさ……、ようこそ!ドワーフ王国へ!」


 少しぎこちない笑顔。

 頑張って作った笑顔で、僕たちを迎え入れてくれた。



◇ ◇ ◇

 ウリエの案内で大通りから外れ、脇道に入りしばらく歩いて行くと、広い空洞があり空が見える場所に着いた。そこには日に照らされた一軒の立派な家があった。


「バロン爺〜!! いる〜!?」


 大きな声で呼びかけると、中からゴツいドワーフの爺が出てきた。


「おお、ウリエじゃないか! なんじゃ?もう寂しくなって帰って来たのか?」


 爺は、ドワーフらしいモジャモジャな白髭をイジりながらニヤニヤと言ってきた。


「ちっ、違うよバロン爺!みんなの前でそういうこと言わないで!!」


 顔を赤くしてバシバシとバロンさんを叩くウリエ。

 しばらく「ハッハッハッ」と笑って受け入れていたが……。


「ちょっ!イタッ!えっ!?強くなったなウリエ、って!痛いわ!!」


 ドゴンッ!


 ウリエにチョップをして地面にめり込ませるバロンさん。 

 「「「「えぇ……」」」」と周りはドン引きであった……。


 家の中に通され、みんなで席に着くとバロンさんは話し始めた。


「さて、変なところをお見せしたが、私はバロン・ドワフ。ウリエの大叔父じゃ、よろしくの」

「バロン爺はあたいの戦聖の師匠でもあるよ!」

「まあの~。今は引退したが、ドワーフ王国の戦士長もしとったぞ」


 バロンさんは少しドヤ顔で言った。


「あたいが生まれるもっと前の話でしょーが!」

「まあの? 今でもドワーフ王国最強なんじゃぞ?」

「またその自慢~?……でも、今思うとバロン爺より強い人見たことないかも」

「……え?ウリエや、今まで信じてなかったんか?」


 「アハハ」と横を向いて誤魔化すウリエ。バロンさんは本当にショックを受けた表情をしていた……。


「ひどいのぅ……。まあ良い。ところでその斧、しっかり大事にしておるようじゃな?」


 手入れがしっかりしてあるウリエのグレートアックスを見て、バロンさんは感心したように言った。


「……もちろん!母さんの形見だかんね」


 ウリエが楽しそうに話している様子を見て、僕は少し安心した。

(良かった、少し元気が出たみたいだ)


 みんなが微笑ましい顔で見ているのに気づいたウリエは、ハッとした顔になって照れてしまう、それから真面目な表情になって――


「ごめん、みんなに来てもらった理由を説明しなきゃね」


 僕たちをドワーフ王国に呼んだ理由――


「当たり前だけど……、鍛冶には火力が必要なんだ」


 ウリエの説明では、ドワーフ王国の鍛冶にとって重要な火力の源が“火焔鉱石“という鉱石なんだそうだ。その“火焔鉱石“は約三年前から産出量が激減しており、一年程前からはまともに仕事できないくらい在庫が無くなってしまった……。


「みんなで何とか火焔鉱石を見つけようと洞窟を掘り進めたりとか、火口付近まで探索に行ったりなんかしたんだけど……」


 結果は現状が語っていた……。

 鍛冶という唯一の産業ができなくなってしまい、ドワーフ王国は今存亡の危機に瀕しているとのことであった。


「あたいは、戦聖として勇者パーティーで魔王討伐に参加する。だけど、故郷の危機も何とかしたくって、みんなに来てもらったんだ――」


 ウリエは不安な表情で頭を下げる。


「――ごめんよ、あたいたちの国の問題なんだけど、もうどうにもならなくってさ。勇者パーティーとして活動して、みんなとなら何とかできそうって思ったんだ、助けてくれないかな?」


 バロンさんも、真剣な顔で一緒に頭を下げた。


「ウリエが見込んだ勇者とその仲間たち、どうか儂等を助けてくれんか?」


 僕はみんなの顔を見る――どうやら、みんな答えは一緒みたいだ。


「分かりました!僕らでできることを、全力でやらせていただきます!」


 僕は笑顔でウリエに手を差し伸べる。


「……ありがとうアイン。みんなも、ありがとう」


 ウリエは少し安心した笑顔になって僕の手を取った。


 その瞬間――バンッ!と玄関のドアが開かれる。


「ジジイ!! ウリエが戻って来たって本当か!?」


 完全武装の戦士たちが、複数人押し掛けて入ってきた――



◇ ◇ ◇

 僕たちは完全武装の戦士たちに囲まれたまま、大きな馬車に乗って移動していた。

 連行、というより――護送に近い感じがする……。


(やっと少し元気が出たのにな……)


 横を向くと、ムスッとした表情をしたウリエが馬車の窓から外を眺めていた。


(やたら豪華な馬車だし、さっきの戦士たちの様子もだし、ウリエって偉いとこの子なのかな?)

 

 僕が不機嫌なウリエを見ながら考察をしていると周りで女子たちが……。


『なぁ、やっぱりウリエってそういうことだよね?』

『そうですね。そういうことですね』

『まぁ、状況的に間違いないでしょうね』

『ウリエさんはぁ、あまり知られたくなかったのかしらぁ?』

『……きっと、そう』


 女子たちは、僕が気づけない何かを確信したようだけど……。

(僕にもコッソリ教えてくれないかなぁ……)



 そんなことを考えつつ、僕は先ほどの場面を思い出す――


 ――バロンの家に戦士たちが押し入って来た時。


「って!! いるじゃねーかウリエ。なんであっちに来ないで、ここに顔出してんだよ?」


 ウリエはすぐにムッとした顔になった。


「アサハには関係ないでしょ? あんたは人の家に入るときのマナーも知らないわけ?」

「ここはジジィ家だから無礼講だろうが!? そんなことより俺の質問に答えろよ!」

「話す気はない。なんであたいが国に戻ってるって知ってんのさ?」

「門番が教えてくれたんだよ。俺様は戦士長だしなっ!」


 アサハと呼ばれた男はニヤニヤと話した。


「……っち!」

「舌打ちすんなや?まぁいいや。国王からの命令だ、全員連行するぜ。拒否権はねーからな?」

「まぁそう焦るな、少し話をしてからでも良かろうて」

「うるせぇよジジィ。ジジィも来いって言われてる。早く行くぞ!」



 そして、今に至る――


「到着しました!」


 馬車が止まり降りると、目の前に堅牢そうな王城があった。



◇ ◇ ◇

 玉座の間。

 部屋全体が精巧な美術品のような技巧が凝らされている。

 ドワーフ王国の技術力が一目で分かる部屋であった。


 中心の玉座に座って見下ろしている、一人のドワーフ。

 筋骨隆々、紫髭を編み込んだ、威圧感のある男だ。


「おう、戻ったかウリエ」

「……父さん」


 ウリエが、そう呼んだ瞬間。


「え?」「「「「「やっぱり」」」」」


 勇者パーティー全員の声が、綺麗に重なった。……僕以外。


「ちょ、ちょっと待って……父さんって……王様?」

(僕は偉い人の娘とは思っていたけど、まさかお姫様だったなんて……。あれ?みんなは気づいていたの?)


 ドワーフ王は、僕たちの反応を見て豪快に笑った。


「ははっ!あぁそうだ。こいつは俺の娘だ、ウリエ・ドワフ。ドワーフ王国のお姫様ってやつさ」


 ウリエは頭を抱えてハァっとため息をついた……。


「父さんは空気を読むって……、知ってる?」


 ジト目で国王を見るウリエ。


「細かいことは気にすんな。国に連れて来たってことは、教える気だったんだろうが?」

 

 再びため息をつき、ウリエはボソッと呟く。


「…………お父さん嫌い」

「っえ!? なんで!? そんなこと言うなよ!!」


 慌てふためく国王。

(王族なのに、なんか普通の家庭みたいで仲良さそうだなぁ……)

 ウリエに平謝りをする国王を見て、僕たちはほっこりしていた。

 その様子を見ていた宰相っぽい人が、「うぉほんっ!」と咳払いをする。


「お、おう、そうだったな」


 国王は玉座に座り直し、僕たちへ視線を向ける。


 瞬間、纏う空気が変わった――


「よく来てくれたな、勇者パーティーの方々よ。俺はこのドワーフ王国の国王、レックス・ドワフだ」


(すごい……、一瞬で雰囲気が変わった)


「勇者パーティーのリーダー、アイン・アマテです。この度は拝謁させて頂きありがとうございます」

「ウリエが世話になっている。危なっかしとこがある娘だ、よろしく頼む」

「はい!」

「今代の”光の守護者”か、良い眼だ。実力もありそうだ。ウリエ、良いやつを見つけたじゃねーか?」


 ウリエは横を向いて照れていた……。



 謁見後、全員で大会議室に移動した。


「さてウリエ。事情はバロンから聞いた、火焔鉱石の件で勇者パーティーを連れて来たそうだな?」

「そうだよ父さん。このパーティーなら原因を突き止めて解決できると思ったから、お願いして来てもらったんだよ」


 ウリエはジト目のまま報告していた。

 ハァとため息を吐いて、いつもの表情に戻り――


「父さん。火焔鉱石の問題解決を勇者パーティーへ正式に依頼として出してくれませんか?」

「うむ、そうだな……」


 レックス王が考えていると――


 バンッ! 扉を乱暴に開ける大きな音が大会議室に響いた。

(ああ、これさっきも見た光景かも……)


「俺様は反対ですよ!! 国王!!」


 会議室への乱入者――アサハが僕たちを睨みつけながら言った。


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