第100話 正当防衛な?
《アイン視点》
「光よっ!」
僕の周りから無数の光の矢が飛んで行き――
「「「「ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝」」」」
スケルトンの群れが、光に撃ち抜かれて消えていく。
「「聖なる光よ!」」
エルとハニエから清らかな波動が放たれる――
「「「「オ˝オ˝オ˝オ˝オ˝」」」」
レイスの群れが、波動を受けて消えていく。
「ハッ!!」
光の斬撃を飛ばす――
「ガアアアア!!!!」
30層のボス、ケルベロスゾンビが斬撃で真っ二つになって消える。
(き……っもち良い~~~!!!!)
不死者迷宮は、その名の通り不死者であるアンデットばかりの迷宮だった。アンデットに対して無類の強さを誇る”光”と”聖”。この迷宮における神官やシスターなどの聖魔法を使える者の優位性が、とてもよく分かる時間になっていた。
「いや~、あたいたち、要らない子状態だよね?」
「まあ、楽で良いんじゃない?」
「いやいやラフィ。出番が無いからって拗ねるな拗ねるな」
「……修行に、ならない」
「出来ることを、やりましょっかぁ~」
僕とエル、そして当然のように参加しているハニエが無双しているため、みんなは手持ち無沙汰になっているみたいだった。
「ハァ、しょうがないわね。みんな、維持と回転よ!」
「さすがだねラフィ、容赦がない」
「うるさいわよ!ミカエラ!」
「了解、了解。怒らないでおくれよ、お姫様っ」
「姫はあんたでしょ!?」
(でも、楽しそうに魔武術と魔力操作の熟練度上げをしているみたいだ……)
「やっぱり光魔法も、アンデットへの特効が高いね?」
「さすが、勇者魔法~って感じだよね~」
「フフ、何? 勇者魔法って?」
「適当に言っただけだよん! エルも勇者様の話、好きだったじゃん!」
(っ!? エルも勇者が好き!?)
「ちょっ!違いますよ!? 勇者様は絵本の勇者様で、アインさんじゃないですからね!!」
エルが赤面しながら僕へ振り返って、必死に否定してくる。
(そんな、名指しで否定しなくっても……)
正直とても悲しい気持ちになって、俯いてしまった。
そんな僕の心情を察してか――
「あっ、あっ、アインさんが嫌いなわけではないんです。……好きでも、ないですが……」
(微妙にフォローになってな~~~い!?)
僕はそのまま崩れ落ちた。
◇ ◇ ◇
何となく探索を続ける雰囲気ではなくなったので、僕たちは転移ポータルを登録して入口に戻ったのだった。ちょうどタイミング良く、親友のうしろ姿を見つけた僕は声を掛けた。
「ケイ~~! 今日はもう帰りか~~い!?」
僕に気づいてくれたみたいで、一緒に探索してたと思われる三者三様のみんなとこちらへ来てくれた。
「アイン~。俺目立ちたくないんだから、大声で呼ぶなっての!」
「え?」
(あの時にシスターの受け入れを断った時の方が、よっぽど目立ってたのでは……)
「なんだよっ!その目はっ!」
「ケイ君さ~、多分ね、シスター受け入れ拒否とか目立つ行為してさっ、今更ってアイン君は思ってんじゃないの?」
「えっ!? あれ、目立った!? 当然の権利を主張しただけ……」
「目立って無いと思ってたの!? あーしはそっちにビックリさ~」
(……ん? ん˝ん?)
この二人、前と距離感が……。
(ナミエさんは気軽にケイを叩いたりしているし、それを受け入れるケイも何か……、嬉しそう?)
「ねえケイ」
「ん? どしたアイン?」
「もしかして、なんだけど……」
「なんだ?」
「二人って、恋人同士になった?」
「「…………」」
僕の問いに、固まる二人。
しばらくして、ケイは頬を掻きつつ照れた様子で、ナミエさんは頬を手で挟みながら赤面してしまった。
「まぁ、分かるよな。ああ、ナミエとは先日恋人になったんだ。いずれ、結婚もするつもりさ」
(えええええ!! ちょっと!!!! 照れるケイが可愛いんだが!?)
「そっか。ケイ、おめでとう」
僕は、心からの祝福を親友に送らせてもらった。
そして――
「ナミエさん。ケイは素直じゃない所もあるけど、凄く優しいやつなんです。どうか、親友を末永くよろしくお願いします」
「アイン、お前、ちょっ!」
「はいっ! あーしはケイの優しいところも、その信念も知った上で、好きになりました。だから、あーしが捨てられない限り、一緒に居るつもりさ〜」
「いやいや!! 俺がナミエを捨てるわけないだろ!?」
「アハッ、知ってるさ〜」
慌てるケイを見て、幸せそうに笑うナミエさん。
(うん、彼女なら親友を任せられるな!)
僕たちはみんなで二人を冷やかしつつ、普段見せない親友の反応を見て楽しんでいた。
そんな時、揃いの鎧を装備した集団に声を掛けられた――
「おい、貴様ら、迷宮の入口近くで騒いでいるんじゃない」
声を掛けてきた男に、エルとハニエが反応した。
「ギュエル騎士団長、お久しぶりです」
「騎士団長、任務ご苦労様です」
「聖女様もいらしたんですね。これは失礼しました。職務故、御勘弁いただけたらと思います」
「いいえ、このような場所で騒いでいた私たちが悪いのです。騎士団長は職務を全うされただけですので……」
「ご理解いただき、ありがとうございます。シスタージェレミ、貴様は担当としての職務が全うできていないのではないか?」
「……申し訳ありません」
ハニエを叱りつけた騎士団長は、次に僕らを一目見てフッと鼻で笑い一言。
「勇者ねぇ…、どこぞの田舎者って感じだな……」
「「「「…………」」」」
僕は気にしなかったけど、みんなの怒りのオーラを背中で感じたため、手のサインで制止した。僕の意図をみんなは察してくれたようで、我慢してくれた。
ただ一人を除いて――
「おい、そこのゴテゴテな気色悪い鎧の、頭が足りない騎士団長。お前がバカにしたのは、光の守護者のジョブを、女神様から授かった、勇者様だぞ?」
「「「「っ!!!?」」」」
「は?」
その場に居た全員が驚き振り返る。
言葉を発した人物、ケイが悠然と前に歩いて出てきた。
「お前、今、何と言った?」
「あ? 聞こえなかったのかよ? 頭だけじゃなくて、耳まで悪いのか?お前?」
ギュエル騎士団長は怒りで手を震わせつつ我慢した様子で、口元を引きつらせているが、何とか平静を装って話す。
「失礼な学生だな。エイユウ学園も地に落ちたということかな? 礼も尽くせないような学生を抱えて……」
「ハァ、本当にバカだなお前は。さっき説明したろ? 女神様が選んだ勇者様だぞ? 神聖国の騎士なら、勇者様にこそ、謙虚に接するべきだろ?」
騎士団長の額に青筋が立ち、肩も怒りで震えだす。
そして、とどめの一言――
「そんなんだから、七大聖王から降格されるんじゃね?」
プチンッ 何かがキレる音がした――
「貴様ああああああ!!!!」
騎士団長は剣を抜き、ケイへ切り掛かった――
「はい、正当防衛ね」
ケイは騎士団長の神速の斬撃を避け、彼の顔面に拳を叩き込んだ。
ドゴオオオンッ!!!!
殴り飛ばされた騎士団長は、迷宮の壁にぶつかり白目を剥いて倒れる。
「これで許されると思うなよ?」
(ケイさあああああん!! きっと許されないの僕たちいいいいい!!!!)
不幸にも僕たちは、神聖国騎士団の団長を倒してしまった……。




