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帰宅

皆さん、私の文章は読みづらい部分があるかもしれません。また、内容についてもご期待に添えないことがあるかもしれませんが、どうか温かい目で読んでいただけると嬉しいです。


80話ほど下書き書いていますがやはり序盤の話は書くのが難しいですね、



森の中には、まだ戦いの余韻が残っていた。


倒れたボアの巨体は地面に深く沈み込み、踏み荒らされた土と血の匂いが混ざり合って空気を重たくしている。近づくと、体からはまだわずかに熱が残っていて、ついさっきまで生きていたことを嫌でも感じさせた。


「……改めて見ると想像以上にでかけぇな」


ガルドが低く呟く。


ユウも同じことを思っていた。間近で見ると、その大きさは異様で丸太のような脚や分厚い皮膚を見ていると、自分の体など簡単に押し潰される光景が自然と頭に浮かぶ。


「これ、さすがに丸ごと運ぶのは無理だね……」


そう言うとガルドはすぐに頷いた。


「ああ。担げる重さじゃねぇし、運んでる途中で襲われるのがオチだ」


一度息を整えてから、ボアを見下ろす。


「ここで処理するしかねぇな。時間はかかるがそれしかねぇ」


「……処理って、つまり」


「解体だ。使えるとこだけ切り分けて持って帰る」


その言葉にユウは一瞬だけ黙る。


視線を落とせば、血に濡れた毛並みと動かない体がそこにある。分かってはいた。食べるというのは、こういうことだと。けれど実際に自分の手でやるとなると話は別だった。


「……やったことない。見るのとやるのはたぶん全然違う」


正直に言うと、ガルドは小さく息を吐いた。


「俺もだ。まともにはな。昔猟師がやってるのを横で見たくらいだ」


「じゃあ……ほぼ素人ってことか」


「ああ。だがやるしかねぇ。ここで置いて帰るなんて選択はないだろ」


その通りだった。


ガルドは周囲を見回し手頃な石を拾い上げる。縁が鋭く欠けたものを選び、手の中で重さを確かめた。


「ナイフの代わりだ。これでやるしかねぇな」


そう言ってボアの腹に石を当て、ぐっと力を込める。だが皮膚は想像以上に厚く、石は滑るばかりでうまく食い込まない。


「……固ぇな。思ったよりずっと手強ぇ」


角度を変えもう一度押し込む。ギリ、と嫌な音がしてようやく皮が裂けた。そこからじわりと血が滲み出す。


「……っ」


思わず息を詰める。鼻を突くのは鉄のような生臭さと湿った温度を含んだ匂いだった。


「ユウ、目を逸らすな。ちゃんと見ろ。食うってのはこういうことだ。楽なとこだけ見て済む話じゃねぇ」


強い言い方ではないが、逃げ道を塞ぐには十分だった。


ユウは一度、深く息を吸って吐く。


「……うん。分かった。ちゃんと見る」


ゆっくりと近づき別の石を拾う。そのとき、頭の奥にわずかな違和感が走った。


刃を入れる位置。皮の剥がし方。内臓を傷つけない順序。


知識ではなく、“体の動き”として流れ込んでくる感覚。


《スキル獲得:解体》


《動物・魔物・物体の構造理解と効率的な分解技術。素材ロスを抑える》


(……ちょうどいいタイミングだな)


小さく苦笑しながらも、今はありがたい。


「父さん、そこじゃなくて……こっちの方がいい」


ユウはボアの腹の下側を指差す。


「この辺少し柔らかいからたぶん切り込み入れやすい」


ガルドがじっと見る。わずかな間のあと短く頷いた。


「……やってみろ。お前に任せる」


ユウは石を握り直し、示した位置に当てる。今度は迷いがない。押し、引く――その動きに従うように皮が裂け、ぐち、と湿った音とともに内部が露わになる。そこにあったのは赤く濡れた肉と、まだ熱を残した温かさでついさっきまで生きていたことを嫌でも感じさせた。


「……っ、やっぱりきついな……」


喉がひきつる。それでも目は逸らさない。


「内臓は傷つけるな。破ると臭いが回って肉が駄目になる」


「……分かってる。たぶん、この辺りから外せばいいはず……」


短く返し手を入れる。温かく滑る感触が指にまとわりついた。


(うわ……思ってた以上に生々しいな……)


それでも手は止まらない。


分ける。外す。取り出す。


ガルドも無言で作業に加わる。


「……こうか? この辺を切り離せばいいのか?」


「うん、そのままでいい。たぶんそこは大丈夫」


最初はぎこちなかった動きも、次第に要領を掴んでいく。


やがて、いくつかの肉の塊が地面に並んだ。赤い肉と脂の白が混ざり、それははっきりと“食べ物”の形をしていた。


「……やれるもんだな。正直もう少し手こずると思ってた」


ガルドが呟く。


ユウは自分の手を見る。血で真っ赤に染まっている。それでも不思議とさっきほどの嫌悪感はなかった。


「……これで持ち帰れるね。量も十分ありそうだ」


「ああ。これだけあればしばらくは持つだろう」


枝や蔓で肉を縛り二人で分けて担ぐ。ずしりとした重みが肩に食い込む。


「……重っ。肩ちぎれそう」


「落とすなよ?。全部無駄になる」


文句を言いながらも、足取りは不思議と軽かった。



ーーーー


森を抜け、やがて村が見えてきた。その瞬間、空気が変わる。


何かに気づいたように視線が一斉に集まり、次の瞬間にはざわめきが広がって、人がこちらへと寄ってきた。


「……おい、あれ見ろ.....肉じゃねぇか……?」


痩せた顔、乾いた目。そのすべてがユウたちではなく、担いでいる肉へと向けられている。


「それどこで取った。森か?」


「森だ。それ以上は言えねぇ」


ガルドが短く答える。


だが、それで引く気配はなかった。


「場所教えろよ」

「俺たちにも分けろよ」

「どれくらいあるんだ、それ……」


声が重なり、距離がじりじりと詰まってくる。逃げ場を塞ぐように囲まれ、空気が一気に重くなる。


ガルドが一歩前に出た。


低く抑えた声で言うが、誰も止まらない。


「こっちはずっと腹減ってんだぞ!」

「助け合いだろうが!」


押されるように空気が迫ってくる。ユウは黙って周囲を見渡した。森で感じた恐怖とは違う、逃げ場のない息苦しさが胸に張りつく。


(……森より、こっちの方がきついな)


「……これは家族の分だ」


ガルドの声が低く落ちる。


「命張って取ってきた。簡単に渡せるもんじゃねぇ」


その言葉で一瞬だけ空気が止まるが、すぐに責める声が返る。


「同じ村の人間だろうが」


ユウは一度だけ視線を落とした。


わずかに息を吐く。


それから、顔を上げる。


「……今までさ、何か分けてもらったことあったか?」


大きな声ではない。それでもはっきりと通る声だった。


ざわめきが、わずかに止まる。


その隙にガルドが前に出てユウを背に庇う。


「……道を開けろ。これ以上は揉めるぞ」


低く押し出すような声に、しばらくの沈黙が落ちる。やがて一人、また一人と後ずさり、完全ではないが人の隙間が生まれた。


「……行くぞ」


二人はその間を抜ける。背中に突き刺さるような視線を感じながら、それでも振り返らずに歩き続けた。


背後のざわめきが、少しずつ遠ざかっていく。


しばらくはどちらも何も言わず、荒れた呼吸だけが残る。やがてガルドが小さく苦笑を漏らした。


「……さっきの方が、よっぽどきつかったな」


「ボアと戦った時よりも?」


ユウがそう返すと、ガルドは少しだけ肩を落としながら頷く。


「ああ。ああいうのは別だ。相手が人間だと余計にな」


その言葉にユウも小さく息を吐いた。さっき感じた圧迫感を思い出すだけで、胸の奥が少し重くなる。


「……うん。なんか息詰まる感じだった」


それからユウは顔を上げ、さっきまでの空気を振り払うように言った。


「でも……久しぶりにちゃんと肉食べられるね。みんなで」


ガルドはその言葉を受けて、ゆっくりと頷く。


「……今日は腹いっぱい食おうな」


ユウもそれに視線を落とし、小さく頷いた。


まだ血の匂いが手に残っている。


それでも、その重さは嫌じゃなかった。




<現在のステータス>

――――――――


【ステータス】


名前:ユウ

年齢:8歳


HP:15/ 30

MP:5/ 10


筋力:4

耐久:3

敏捷:5

知力:7


所持スキル


・採取 Lv1

→ 森林環境での素材・食料・薬草の識別能力。毒草と有用植物の判別も可能。


・格闘 Lv1

→ 素手戦闘の基礎。押す・掴む・倒すなどの初歩的戦闘動作補助。


・即時回復 Lv1

→ MPを約50%消費し、HPを約50%回復する緊急回復スキル。一日一回のみ使用可能で、MPが不足している場合は発動できない。


・解体 Lv1 (NEW)

→ 動物・魔物・物体の構造理解と効率的な分解技術。素材ロスを抑える。


固有能力

・窮地適応

→ 生命の危機、または極度の環境ストレス下において、生存に必要なスキルを獲得する。




過去のエピソード後半に、人物や世界の詳細を置いています。


読んでいる中で気になった方は、覗いてみてもらえると嬉しいです。

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