親子
皆さん、私の文章は読みづらい部分があるかもしれません。また、内容についてもご期待に添えないことがあるかもしれませんが、どうか温かい目で読んでいただけると嬉しいです。
ストックが80話ありますが、内容を考えると今のタイトルと合わないような気がしてならない、、、、、
異世界生存記に変えたほうがいいのかもしれない
朝の光が、薄い布越しに差し込んでいた。
柔らかいはずの光はどこか色を失っていて、部屋の中の空気を静かに沈めている。
外では鳥が鳴いているが、その声さえも壁一枚隔てただけで遠くに押しやられたように感じられた。
ルクはまだ眠っている。
ユウはそっと額に手を当てる。
昨日より熱は引いていたが、それでも安心できるほどではない。指先に伝わるわずかな熱が状況の厳しさをそのまま示していた。
(……もっと栄養のあるものを食べさせないと)
肉。
それも、しっかりとしたものを。
そう思ったそのときだった。
床板がきし、と小さく鳴る。
振り返るとガルドが立っていた。
壁に寄りかかるでもなくただそこに立っている。
その姿には、昨日まで確かにあった迷いがもう残っていなかった。
ルクの方を一度だけ見てから低く言う。
「……このままじゃ足りねぇな。一緒に肉を持って帰るぞ」
短いがはっきりとした言葉だった。
ユウは一瞬だけその顔を見つめ、それから静かに頷く。
「……うん、行こう」
それ以上の言葉は必要なかった。
森へ続く道は、朝露でしっとりと濡れている。
歩くたびに草が擦れ、靴の先で水滴が弾けた。
その冷たさが足元からじわりと伝わってきて、まだ身体が完全に目覚めきっていないことを思い出させる。
ユウは隣を歩くガルドを、何気なく見上げた。
大きな背中に、太い腕。
一歩一歩の重みは変わらないはずなのに、どこか噛み合っていないような違和感がある。
踏み出す足が、わずかに地面を捉えきれていない。
力はあるはずなのに、それがうまく乗り切れていないように見えた。
(……無理してるな)
そう思ったが、口には出さない。
視線を前に戻す。
「どこへ行く」
ガルドが前を向いたまま、低く聞いた。
「昨日の場所に行ってみたい。倒したやつをそのままにしてるから……もし残ってたら少しは使えると思う」
言葉を選びながら答えると、
「……ああ」
ガルドは短く息を吐いた。
「残ってりゃ運がいい。こういうのは大体食われてるからな」
否定でも期待でもない。
ただ、経験から出た現実的な言葉だった。
それで十分だった。
森に入ると空気が変わる。
湿った土の匂いが濃くなり、葉が擦れ合う音が周囲を満たす。
足音は地面に吸い込まれるように沈み、外の世界から切り離されたような感覚が広がっていく。
ユウは足元を見ながら進み、不意にしゃがみ込んだ。
薄く光を帯びた草を摘み取る。
指先にぬめりのある感触が残る。
【根かじり草】
・食用可(根)
・栄養価:中
・毒性:なし
・効果:噛むほどにわずかな甘み
「……それ、食えんのか」
横から覗き込むガルドの声。
「たぶん。見た感じは大丈夫そうだし匂いも変じゃない」
「“たぶん”で口に入れる気か……普通はやらねぇぞ」
呆れたように言いながらも、止めはしない。
ユウは肩をすくめる。
「なんとなく分かるんだよ。食えるやつと、やばいやつの違いが」
「……なんとなく、か……まあ、問題ねぇならいい」
それだけだった。
――踏み込まない。
その距離が、今はちょうどいい。
やがて、昨日の場所に辿り着く。
一歩踏み込んだ瞬間、鼻を刺す臭気が広がった。血と腐りかけた肉の匂いが湿った空気に絡みつくようにまとわりつき、視線を向ければ、そこにはすでに骨と毛だけになった残骸が転がっている。肉はほとんど削ぎ落とされ、白く乾きかけた骨がむき出しになっていた。
「……遅かったようだな」
ガルドが低く呟くと、その声には驚きよりも納得が混じっていた。
「まあな、こういうのは匂いで寄ってきてすぐ持ってかれるからな」
ガルドはそう言って、足元の骨を軽く蹴る。乾いた音が森の奥へ転がっていく。
——その音が消えきる前に、背後の茂みが大きく揺れた。
まとわりついていた湿った空気が、一瞬で張り詰めたものに変わる。
「……来るぞ」
押し殺した声とほぼ同時に、喉の奥から絞り出すような唸り声が響き、黒い巨体が地面を抉る勢いで飛び出してきた。
――グルルルルッ!!
一直線の突進。
「ボアだ、横に飛べ!」
その声を聞くよりも早く、ユウの体は反射的に動いていた。地面を蹴るというより投げ出すように横へ転がり、そのすぐ脇を重たい風圧が叩きつけるように通り過ぎる。かすめただけのはずなのに、皮膚が焼けたようにひりついた。
(速い……!)
そう思ったときには、すでにガルドが前へ出ている。拾い上げた枝をそのまま振り抜き、全身の体重を乗せて叩きつけたが、鈍い音とともに衝撃は弾かれ、分厚い皮膚に浅く止まるだけだった。
――ブォオオオッ!!
怒りを帯びた咆哮とともにボアは即座に体を反転させ、今度はガルドへ一直線に突っ込む。
「くそっ……!」
避けきれないまま衝撃が叩き込まれ、ガルドの体が浮き、そのまま地面を削るように吹き飛ばされた。
「父さん!」
思わず叫んだ瞬間、ボアの視線がこちらに向く。荒い鼻息が白く滲み、前足が地面を掻いた。
「は……こっちかよ……!」
逃げると判断した時には、もう遅い。
地面が一瞬沈んだ。
次の瞬間、黒い塊が真正面からぶつかってくる。
衝撃。
体が宙に浮き、そのまま背中から叩きつけられた。息が潰れ、視界が跳ねる。
【HP:5/30】
「いってええ……」
一瞬、痛みとは別に、頭の奥が妙に静かになる。
その静けさの中で。
《スキル獲得:即時回復》
《MPを約50%消費し、HPを約50%回復する緊急回復スキル。
一日一回のみ使用可能。MP不足時は発動不可。》
(……今かよ)
考える前に、喉が動いていた。
「……即時回復……!」
内側から熱が弾ける。焼けるような痛みとともに強引に呼吸が戻り、空気が肺に流れ込んだ瞬間、激しく咳き込みながらもユウは視線を逸らさなかった。
――グルルル……ッ
低い唸り声がすぐ近くで響く。
「ユウ、下がれ!」
「無理だ……一人じゃ止められない!」
かすれた声でも、はっきりと言い切る。
ガルドはふらつきながらも立ち上がり、口元の血を拭って短く息を吐いた。
「……ああ、分かってる。だったら――合わせるぞ」
その一言で十分だった。
次の突進に合わせてガルドが前に出る。真正面で受けるように見せて限界まで引きつけ、寸前で体をずらすと、巨体が地面を抉りながら横を通り過ぎた。
その一瞬の隙に、ユウはすでに踏み込んでいる。
狙うのは脚。
分厚い皮膚の中で、ほんのわずかに動きが鈍る場所。
「っ……!」
全力で叩き込むと、鈍い衝撃が腕に返り、骨に響くような感触が伝わる。硬い。まともに通っている感触ではない。
だが――わずかに、ほんのわずかに、踏み込みが遅れた。
(……止まった)
そのまま間を置かずもう一撃、さらに一撃と重ねるたびに腕の痺れが強くなるが、止めれば終わると分かっているから振り抜くしかない。
その横で、ガルドもすでに踏み込んでいた。
重い打撃が重なり、衝撃が積み上がっていく。
――ギャアアアアッ!!
それまでの唸りとは違う悲鳴が森に響き、巨体が大きく揺れて体勢を崩しかける。
「終わらせるぞ、今だ!」
その声に押されるようにユウは最後の力を振り絞って踏み込み、全身の重みを乗せて一撃を叩き込んだ。
次の瞬間、巨体がゆっくりと崩れ地面に叩きつけられる。重い振動が足元から伝わりそれきり動かなくなった。
森に静寂が戻る。
ユウはその場に座り込んだまま荒い呼吸を繰り返し、焼けるような胸の痛みをこらえながら、かすれた声で「……やった、のか……」と呟くと、ガルドも息を吐きながら「……ああ、もう動かねぇ」と答えた。
しばらくは言葉もなく、互いの呼吸音だけが続く。
やがて、ガルドがぽつりと呟いた。
「……危なかったな」
ユウは小さく息を吐き、かすかに笑う。
「ほんとにな」
短い沈黙が落ちる。荒い呼吸だけがまだ体の奥で残っている。
ガルドは少しだけ視線を動かし、ユウを見る。
「さっきの動き……ちゃんと見てたな。無茶に突っ込まなかった」
ユウは肩で息をしながら、わずかに首を振った。
「父さんが前に出てくれたからだよ」
その言葉にガルドは小さく頷く。
「……当たり前だ」
わずかな間。
「無事でよかった」
それだけ言うと、すぐに視線を前へ戻した。
風が木々を揺らす。血の匂いはまだ薄く残っている。
それでも、二人はそのまま並んで立っていた。
<現在のステータス>
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【ステータス】
名前:ユウ
年齢:8歳
HP:15/ 30
MP:5/ 10
筋力:4
耐久:3
敏捷:5
知力:7
所持スキル
・採取 Lv1
→ 森林環境での素材・食料・薬草の識別能力。毒草と有用植物の判別も可能。
・格闘 Lv1
→ 素手戦闘の基礎。押す・掴む・倒すなどの初歩的戦闘動作補助。
・即時回復 Lv1(NEW)
→ MPを約50%消費し、HPを約50%回復する緊急回復スキル。一日一回のみ使用可能で、MPが不足している場合は発動できない。
固有能力
・窮地適応
→ 生命の危機、または極度の環境ストレス下において、生存に必要なスキルを獲得する。
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過去のエピソード後半に、人物や世界の詳細を置いています。
読んでいる中で気になった方は、覗いてみてもらえると嬉しいです。




