ミルハルト村①
ユウが目を覚ましたのは、それから数時間後のことだった。
重たい瞼をゆっくりと開くと、見覚えのない木造の天井が目に入った。鼻をくすぐる薬草の匂いに混じって、どこか懐かしい木の香りが漂っている。
「……」
身体を起こそうとした瞬間、しわだらけの手がそっと胸元を押し留めた。
「無茶するんじゃないよ」
しゃがれた声に、ユウはゆっくりと視線を向けた。
そこには、小柄な老婆が椅子に腰掛けていた。白髪を後ろでまとめ、使い込まれたエプロンを身につけている。見た目だけならどこにでもいる年寄りだが、細められた瞳には妙な鋭さがあった。
「あんた、頭を強く打ってたんだ。あと少し運ばれてくるのが遅れてたら、危なかったよ」
老婆はそう言いながら、手を止めることなく薬草をすり潰している。その手つきには、長年こうした作業を繰り返してきた者の慣れがあった。
ユウはぼんやりと天井を見上げた。
森でゴブリンに襲われたことや、村へ辿り着いたことが断片的に蘇ってくる。そこでようやく、自分が助かったのだと実感した。
「……あなたは?」
「マリアさ」
老婆は小さく笑った。
「この村で薬師をやっとる婆さんだよ。医者なんて立派なもんじゃないけどね。ここミルハルト村じゃ、怪我人も病人も大体あたしのところへ運ばれてくるのさ」
どうやら、この村で唯一の薬師らしい。困ったことがあれば、村の者たちは皆「マリアさん」と呼んで彼女を頼るのだという。
「まったく、あんたが運ばれてきたときは大騒ぎだったよ」
マリアは苦笑しながら肩をすくめた。
「『子どもが倒れてるぞ!』だの、『頭から血が出てる!』だの、『早くマリアさんを呼べ!』だのってね。村中ひっくり返ったみたいな騒ぎさ。こんな小さな子が一人で森から出てきて、そのまま倒れたんだから、無理もないけどね」
そう言って一度手を止めると、マリアはユウの顔をじっと見つめた。
「でも、生きてた。それが何よりさ」
飾った言葉ではなかった。ただ、本当にそう思っているのだろう。その声には、年寄りらしい穏やかな温かさがあった。
「……そうですか」
ユウが返せたのは、それだけだった。マリアはそれ以上何も聞かなかった。ただ、言葉を返す気力もないのだろうと察したように、小さく頷く。
「まあ、今はそれでいいさ」
そう言って、マリアは傍らに置いていた木のコップをユウへ差し出した。
「ほら。まずは水を飲みな」
「……ありがとうございます」
ユウは差し出されたコップを受け取り、ゆっくりと水を口に含んだ。冷たい水が乾いた喉を潤していくにつれ、ぼんやりしていた意識も少しずつはっきりしてくる。
身体を起こしてみると、まだ全身に重だるさは残っていたが、森で感じていた痛みは驚くほど薄れていた。恐る恐る肩や腕を動かしてみても、ほとんど違和感がない。
(……ほとんど治ってるな)
脇腹の痛みも、背中を殴られた傷も、ほとんど気にならない。頭の傷こそまだ疼いているものの、呼吸もずいぶん楽になっていた。
そのとき、不意に視界の端へ淡い文字が浮かび上がる。
《スキル:自然治癒を取得しました》
《外傷や疲労からの回復速度がやや向上する》
ユウは目を細めた。
(……自然治癒?)
即時回復ほど強力なものではないらしい。それでも、森で負った傷がここまで早く塞がったことを考えれば、効果は十分に実感できる。死線を越えたことで、新たなスキルを得たのかもしれない。
もっとも、今はその理由を考える気力もなかった。浮かんだ文字が消えていくのを見送り、ユウは小さく息を吐く。
そんなユウの様子を、マリアは黙って見つめていた。しばらくすると、傷の状態を改めて確かめるようにユウの額へ目を向け、呆れたように、それでいて感心したように呟く。
「若いってのは恐ろしいねぇ」
「……?」
ユウが顔を向けると、マリアは小さく笑った。
「普通なら、一、二週間は寝込んでてもおかしくない怪我だったんだよ。それがもう、こうして身体を起こしていられるんだからね」
「……そうですか」
「そうですか、じゃないよ」
すかさず返され、ユウは思わずマリアを見る。
「頭を強く打ってるんだ。今日は大人しく寝てな。動き回ったら、せっかく治りかけた傷が開くよ」
「……分かりました」
ユウが素直に頷くと、マリアは満足そうに鼻を鳴らした。
「それでいいんだよ」
そう言って椅子から立ち上がると、マリアは部屋の隅へ目を向けた。
「それに、腹も減ってるだろう?」
「……まあ」
「だと思ったよ。顔に出てる」
マリアは小さく笑う。
「スープでも持ってきてやる。いきなり腹いっぱい食べるんじゃないよ。今は腹に入れられるものを少しずつ食べて、ゆっくり休みな」
「……ありがとうございます」
「礼は元気になってからでいいさ」
そう言い残すと、マリアは部屋を出ていった。
しばらくして、マリアが運んできたのは、野菜が少し入った薄いスープだった。豪華とは程遠い質素なものだったが、立ち上る湯気と素朴な香りだけで、空っぽだった腹がぐうっと鳴る。
「……」
ユウは少し気まずそうに腹を押さえた。
「ほら、やっぱり減ってるじゃないか」
「……すみません」
「謝ることじゃないよ。ほら、冷める前に食べな」
「……はい」
木の匙でスープをひとすくいし、ゆっくりと口へ運ぶ。優しい塩気と野菜の甘みがじんわりと広がり、疲れ切った身体の奥まで温かさが染み込んでいく。
「……おいしい」
思わず漏れた言葉に、マリアは鼻で笑った。
「大したもんは入っちゃいないよ。野菜と塩くらいさ」
「それでも、おいしいです」
「そうかい」
マリアはどこか嬉しそうに目を細めた。
ユウはもう一口、スープを口へ運んだ。野菜が少し入っているだけの簡素な食事だったが、今のユウにはそれだけで十分だった。温かなスープが空っぽだった腹に染み渡るたび、張り詰めていた身体から少しずつ力が抜けていく。
しばらくは静かな時間が続いていたが、突然、その穏やかな空気を破るように扉が勢いよく開かれ、バタンッ! と大きな音が部屋に響いた。
「マリアさん! あいつ、起きたってほんと!?」
「うるさいよ!」
「うわっ!」
怒鳴られた少年が慌てて足を止める。
栗色の髪をした活発そうな少年で、その後ろには同じくらいの年頃の少女が続いていた。少女は少年の背中越しに部屋の中を覗き込み、興味津々といった様子でユウの姿を探している。
「まったく……病人が寝てる部屋に、そんな勢いで入ってくるんじゃないよ」
「ご、ごめん。でも、本当に起きたのか気になって……」
「気になるのは分かるけどね、もう少し静かにできないのかい」
「……はい」
少年が気まずそうに肩をすくめる。その隣で、少女はもう我慢できないといった様子で一歩前へ出ると、寝台の上にいるユウを見つけてぱっと表情を明るくした。
「ほんとだ! 起きてる!」
ぱっと顔を輝かせ、少女が寝台へ近づいてくる。
「昨日、広場で倒れてた子だよね?」
「そうそう! 頭から血がいっぱい出てたやつ!」
少年もつられるように身を乗り出した。
「こら!」
マリアの声が飛ぶ。
「病人の前で『血がいっぱい』なんて言うんじゃないよ!」
「あ……」
少年は気まずそうに口を閉じる。
「ご、ごめん……」
「もう。悪気がないのは分かってるけどね」
マリアが呆れたようにため息をつくと、少年は改めてユウへ向き直った。
「俺、エリック」
照れくさそうに頭をかきながら名乗る。
「こっちはメアリー」
「よろしく!」
メアリーは人懐っこい笑顔を浮かべた。
「昨日ね、みんなで運んだんだよ! 広場で急に倒れたから、すっごくびっくりしたんだから!」
「俺なんて、最初は死んでるのかと思ったぞ」
「エリック!」
「……あ」
マリアの鋭い視線が飛ぶ。
「病人の前で何を言ってるんだい」
「ご、ごめん!」
エリックが慌てて頭を下げる。ユウはそんな二人とマリアを交互に見ながら、何度か瞬きをした。
(……なんだ、こいつら)
静かな場所で少し休めると思っていたのに、どうやらそう簡単にはいかないらしい。ユウがそんなことを考えていると、エリックが不思議そうに首を傾げた。
「そういえば、お前の名前は?」
不意に聞かれ、ユウは少しだけ間を置いてから口を開いた。
「……ユウ」
「ユウか!」
エリックはぱっと顔を明るくした。
「よかったな、メアリー! これで『血まみれのやつ』じゃなくて、ちゃんと名前で呼べるぞ!」
「うん! そのほうが絶対いいよ!」
メアリーも嬉しそうに頷く。
「じゃあ、ユウね!」
「……ああ」
昨日会ったばかりだというのに、二人はまるで昔からの知り合いのように接してくる。
(……変なやつらだ)
そう思った。けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。すると、メアリーがにっこりと笑ってユウへ手を差し出す。
「よろしくね、ユウ!」
迷いも打算もない真っ直ぐな笑顔を向けられ、ユウは思わず言葉に詰まった。
(……どうすればいいんだ、これ)
こんなふうに、何の警戒もなく接してくる人間は初めてだった。
これまで出会った人間は、誰もが生きることに必死だった。明日の食事や身の安全を心配し、見知らぬ相手に気を許す余裕などない。まして、こんな屈託のない笑顔を向けられることなんてなかった。
だから、どう返せばいいのか分からない。
しばらく迷った末、ユウは差し出された手を見つめたまま、小さく頷いた。
「……ああ」
返事と呼ぶにはあまりにも短い一言だったが、それでもメアリーは嬉しそうに笑い、エリックも満足そうに頷いた。
「よし、これで友達だな!」
「え?」
あまりにも自然に言われ、ユウは思わず聞き返した。
「だって名前を教えてくれたんだから、もう友達だろ?」
「そうそう!」
メアリーも当然のように頷く。
(……なんだ、それ)
あまりにも簡単すぎる。
けれど、否定する理由も思いつかなかった。敵意がないことは分かっている。それどころか、二人は本気で自分を受け入れようとしているのだろう。
ただ、こんなふうに誰かと距離を縮めた経験がないせいか、どうにも落ち着かなかった。
(……なんだ、この感じは)
胸の奥が妙にむず痒く、どうにも落ち着かない。それなのに、不思議と嫌ではなかった。
◇
その日の午後、ユウはようやく寝台から降りることを許された。
「無理するんじゃないよ」
マリアにそう釘を刺されながら診療小屋の外へ出ると、暖かな日差しと、土や草の匂いを含んだ風が頬を撫でていった。
倒れたときには気付かなかったが、ミルハルト村は思っていたよりずっと小さな村だった。家は二十軒ほどしかなく、畑も決して広くはない。それでも、麦や野菜はきちんと育てられている。
井戸の周りでは女性たちが洗濯をし、男たちは農具を担いで畑へ向かっている。その横を子どもたちが元気に駆け回り、ときおり楽しそうな笑い声が風に乗って聞こえてきた。
どこにでもありそうな、何の変哲もない村の風景だった。
それなのに、ユウはしばらく言葉を失ったまま、その光景を見つめていた。
「……平和だな」
思わず漏れた呟きは、風にさらわれて消えていく。
ついこの前まで、死者しか残っていないフォルナ村を歩いていた。だからこそ、井戸の周りで交わされる何気ない会話も、走り回る子どもたちの笑い声も、ひどく眩しく感じられた。
(……こんな場所も、あるんだな)
人々が当たり前のように行き交い、食べて、働いて、笑っている。ただそれだけの光景が、今のユウには新鮮だった。
そんな村の様子に見入っていると、遠くから聞き慣れた声が飛んできた。
「おーい!」
顔を上げると、大きく手を振りながらこちらへ駆けてくる人影が見えた。先頭を走っているのはエリックで、その後ろからメアリーも小走りで追いかけている。
「ほんとに動けるようになったんだな!」
エリックはユウの前まで駆け寄ると、自分のことのように嬉しそうな顔をした。
「マリアさん、まだ寝てろって言ってなかったか?」
「言ってたぞ。三日は大人しくしてろって」
「三日!?」
メアリーが目を丸くする。
「昨日なんて血まみれだったんだよ? そんなに早く動いて大丈夫なの?」
「……たぶん」
「たぶんじゃないだろ」
エリックが呆れたように言うと、メアリーも心配そうに頷いた。
「そうだよ。まだ怪我してるんだから、無理しちゃ駄目」
「……分かった」
二人に揃って言われ、ユウは小さく息を吐いた。昨日会ったばかりだというのに、妙に距離が近い。けれど、その騒がしさは不思議と嫌ではなかった。
「それより、村でも歩いてみるか?」
「村を?」
「俺が案内してやるよ!」
「ずるい! 私が言おうと思ってたのに!」
メアリーが頬を膨らませると、エリックも負けじと言い返す。
「別にいいだろ。俺のほうが詳しいんだから」
「そんなの関係ないでしょ!」
「あるだろ!」
言い合いを始めた二人を見て、ユウは呆れたように口を挟んだ。
「……なら、二人で案内すればいいだろ」
「「それだ!」」
二人の声が見事なまでに揃い、ユウは思わず苦笑した。
「……仲いいんだな」
「よく喧嘩するけどな」
「だいたいエリックが悪いけどね」
「なんでだよ!」
エリックが抗議する横で、メアリーは勝ち誇ったように鼻を鳴らした。そんな二人を眺めているうちに、気付けばユウの口元にもわずかな笑みが浮かんでいた。
「ほら、まずはここが井戸!」
メアリーが先に駆け出す。
「村のみんな、ここで水を汲むんだよ」
「向こうに見えるのが畑だ。今年は麦の出来がいいらしいぞ」
エリックも負けじと説明を始める。
「こっちは牛小屋! 牛は一頭しかいないけどね」
「あと、あれが村長の家だ」
「説教が長いから、近付くときは気を付けろよ」
「本当に長いんだから」
「お前、村長に聞かれたら怒られるぞ」
「だって本当のことじゃん」
二人は競うように村のあちこちを案内していく。妙なところで息の合う二人を眺めながら、ユウは何度か小さく笑った。
村自体は一周するのにそれほど時間もかからない小さなものだったが、それでも二人は飽きることなく、一つ一つの場所を楽しそうに紹介してくれた。その様子は、まるで自分たちの大切なものを見せているようだった。
そんな二人を見ているうちに、ユウはふと気になって尋ねる。
「……この村、好きなのか?」
二人は顔を見合わせ、ほとんど同時に頷いた。
「うん! 好きだよ!」
迷いのない返事だった。
「他の村なんて知らないし、たまにお腹空くし、マリアさんは怖いし、村長のお説教は長いけど……」
メアリーは少しだけ考えてから、楽しそうに笑った。
「でも、嫌いじゃないよ。ここ、好きだもん」
「俺たちの村だからな」
エリックも当然のように続けたが、ユウは何も言わなかった。
(……俺の村)
その言葉を聞いて、脳裏にグレイウッド村の風景が浮かぶ。父の姿や母の声、そしてルクたちの顔が次々と思い出された。
今ごろ、みんなはどうしているのだろう。
(……帰らないと)
その思いだけは変わらない。けれど、帰る場所を思い浮かべるほど、胸の奥には重たいものが沈んでいく。
そんなユウの様子には気付かず、メアリーが何かを思い出したように、ぽんと手を叩いた。
「そうだ!」
「ん?」
メアリーが何かを思い出したように、ユウの顔を覗き込む。
「ユウ、お腹空いてない?」
「空いてるだろ。昨日からまともに食ってねぇんじゃねぇの?」
「……少しだけ」
ユウが答えると、メアリーの顔がぱっと明るくなった。
「じゃあ、うちでご飯食べよ!」
「え?」
「いいじゃん! マリアさんも、ちゃんと食べろって言ってたし!」
メアリーが当然のようにユウの腕を引くと、エリックが慌てて口を挟んだ。
「ちょっと待てよ。勝手に決めんなって!」
「なんで?」
「飯なら、俺んちで食ったほうがいいに決まってるだろ」
「はぁ? なんでよ」
さっきまで楽しそうに話していた二人の間に、早くも火花が散り始める。ユウは二人を交互に見ながら、昨日会ったばかりとは思えない距離の近さに戸惑った。
(……距離感が近すぎる)
普通なら、見知らぬ相手にここまで踏み込まれれば警戒するところだ。それなのに、遠慮なく腕を引いてくるメアリーも、当然のように話しかけてくるエリックも、不思議と嫌には感じなかった。
「じゃあ、ユウが決めればいいだろ」
エリックがユウを見る。
「どっちの家で食べたい?」
「……どっちでもいい」
「飯が食えるなら、それでいい」
ユウがそう答えると、二人は顔を見合わせた。次の瞬間、揃ってユウへ詰め寄る。
「じゃあ、うち!」
「いや、俺んち!」
「なんでよ!」
「うちの母ちゃんのシチューのほうがうまいからだよ!」
「はぁ? 私のお母さんの焼きたてパンのほうが絶対おいしいし!」
「パンだけじゃ腹いっぱいにならないだろ!」
「いっぱい食べればなるもん!」
「それならシチューのほうが――」
「パンのほうが――!」
二人は一歩も引く気がないらしく、いつの間にかユウそっちのけで自分の家の料理自慢を始めている。
(……騒がしいな)
呆れながら眺めているうちに、ユウの口元にはいつの間にかわずかな笑みが浮かんでいた。
昨日まで、死ぬかもしれない森を一人で彷徨っていた。誰かと話すことも、こんなふうに穏やかな時間を過ごすことも、今となっては遠い出来事のように感じられる。
それなのに今は、目の前で二人の子どもが食べ物のことで言い争っている。その声が、妙に心地よかった。
「……じゃあ、二人の家で食べればいいだろ」
ぽつりと呟くと、二人の言い争いがぴたりと止まった。
「……え?」
「二人の家?」
「そうすれば、どっちの料理がうまいか比べられるだろ」
ユウがそう言うと、エリックとメアリーは顔を見合わせた。
「……それ、いいかも」
「だな」
二人はすぐに納得したように頷き、顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、まずは俺んち!」
「なんでよ! 先に私の家!」
「俺が先に言っただろ!」
「私が先に誘ったもん!」
「……結局、また始まるのか」
ユウは小さく息を吐いた。けれど、その表情にもう嫌そうな色はなかった。
暖かな午後の日差しの中、二人の声が村に響いている。その騒がしさを聞きながら、ユウはいつの間にか肩の力が抜けていることに気付いた。
――まだ、このときのユウは知らなかった。
この騒がしい午後の時間が、いつか何度も思い返すほど大切な記憶になることを。そして、この村で出会った二人が、やがて自分にとってかけがえのない存在になっていくことを。




