求める声
序盤の修正が難しい、、早く中盤まで持っていきたい、
もう少し内容修正すればよかったですね、、
評価押してくださってありがとうございます!
翌朝。
まだ日が完全に昇りきる前の、冷気の残る時間だった。薄い光が窓の隙間から差し込み、部屋の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせている。
ユウはその光の中で目を覚ました。体は重いが、昨日よりは確実に動く。筋肉の奥に残る鈍い痛みが、「まだ動ける」という感覚だけを妙に際立たせていた。
(……筋肉痛か。でも、動けないほどじゃないな)
そんなことを考えた直後だった。
コン、コン。
外から乾いた音が響く。朝の静けさには似つかわしくない、遠慮のない叩き方だった。
ガルドはすでに起きていた。火の前で一度だけ息を吐き、低く呟く。
「……来たか。まあ、そうなるよな」
驚きはない。むしろ最初から想定していたような声音だった。
「ユウ、覚えとけ。これから増えるぞ」
そう言って立ち上がり、扉へ向かう。その足取りに迷いはない。
扉を開けると、見知らぬ男が立っていた。
痩せているというより、削ぎ落とされたような体つき。頬はこけ、目だけが異様にぎらついている。
「……頼む」
開口一番、それだけだった。
「肉を少しでいい。ほんの一口でいいんだ。昨日、持って帰ってただろ。見てたやつがいる」
ガルドは一度だけ目を細め、静かに返す。
「悪いがもうねぇ。昨日で使い切った。うちも余裕はない」
男の表情が歪む。すぐには引かず、一歩踏み込んだ。
「そんなわけねぇだろ。あの量が一日で消えるかよ。隠してるんじゃねぇのか」
焦りと苛立ちが混ざった声だった。
ガルドは声を荒げないまま、はっきりと言い切る。
「疑うのは勝手だが、出せるもんはない。帰ってくれ」
短い沈黙。
やがて男は舌打ちし、背を向ける。
「……結局、自分らだけかよ」
吐き捨てるように言い残し、そのまま去っていった。
扉を閉めたあと、ガルドは小さく息を吐く。
「一人じゃ終わらねぇぞ、これ」
視線は扉の向こうに向けられたまま、そう続ける。
ーーーー
昼。
今度は女が来た。顔色は悪く、声は震えている。
「お願いします……ほんの少しでいいんです。子どもが熱を出してて、水しか飲めなくて……このままだと……」
言葉は途中で崩れ、それでも必死に繋ぎ直される。
ガルドは視線を逸らさずに答えた。
「悪い。分けてやりたいが、うちも同じだ。昨日でほとんど残ってない」
「……一口でいいんです。それだけでも,,,」
「分かってる。だが無理だ」
短く、変わらない声だった。
しばらくの沈黙のあと、女は小さく頭を下げて去っていった。
夕方には二人組が来た。
最初から遠慮はなく、扉を叩く音も強いまま間を置かずにもう一度響き、ガルドが開けると、細い男が一歩前に出て早口に言った。
「頼む……少しでいいんだ。肉、分けてくれないか」
だがその言葉が終わる前に、隣の男が苛立ったように舌打ちを挟む。
「どうせ余ってんだろ。少しくらい回せって言ってんだよ」
空気が一瞬で張り詰める中、細い男がすぐに口を挟む。
「おい、そういう言い方じゃ――」
だが遮るように言い返される。
「同じだろ。遠回しに言ったって意味ねぇ。」
視線が鋭くなる。
「こっちは朝から何も食ってねぇんだよ。分かってんのか?」
細い男はそれ以上強く言えずに口を閉じるが、引くこともできず、わずかに視線を落としたまま小さく続ける。
「……頼む。ほんの少しでいい」
最初の言葉に戻っているはずなのに、その響きはもう懇願だけではなく、どこか押しつけるような重さを帯びていた。
ガルドは二人を見たまま、間を置かずに言う。
「悪いが無理だ」
それだけで場が止まる。
「……は?」
苛立った男の声が低く落ちる。
一歩踏み出す。
「無理ってなんだよ。少しぐらい残ってんだろ」
言葉を重ね、距離を詰める。
だが――ガルドは一歩も引かない。
「出せるもんはねぇ」
ただ、それだけを返す。
沈黙が落ちる。
二人の間で視線が揺れ、押すか引くかを測るような一瞬の停滞のあと、苛立った男が舌打ちを鳴らす。
「……っち、話になんねぇな」
吐き捨てる。
それでもすぐには動かない。
ほんのわずかに踏みとどまる。
その横で、細い男が小さく言う。
「……行こう」
諦めきれていない声だったが、それでもここではどうにもならないと分かっている響きだった。
やがて二人はようやく背を向ける。
去り際、苛立った方が低く呟く。
「……覚えとけよ」
その言葉だけを残し、足音が遠ざかっていった。
夜が近づく頃、扉の外には人の気配が残り始めていた。
帰らない。離れない。ただそこに留まり、家の中をうかがっている。
その沈黙が、じわじわと空気の重さを増していく。
その中で、エナが静かに口を開いた。
「ねえ……ほんの少しだけでも、分けてあげるのは無理なの?」
責める声ではない。ただ確かめるような声音だった。
ガルドは即座に首を振る。
「分けたところで足りねぇ。全員で削り合って終わるだけだ」
一拍置いて続ける。
「それに量が足りねぇ。分けても意味がねぇ」
エナは言葉を失う。
そのとき、ユウが口を開いた。
「……分けるんじゃなくてさ」
視線が集まる。
沈黙の中で、空気だけがわずかに重く沈んだ。
「取りに行く方法、教えた方がいい」
ユウの言葉は短かったが、その場の空気を一段変えるには十分だった。
ガルドが眉をひそめる。
「簡単に言うな。昨日どうなったか忘れたのか。死にかけたんだぞ」
「忘れてない。でも生きて帰ってきたし、肉も持って帰れた」
そのあと、沈黙が落ちる。
火が、ぱち、と小さく弾けた。
「やり方さえ分かれば、自分たちで肉を確保できるようになる」
理屈は通っている。
だが、それがそのまま“安全”を意味しないことも、全員が分かっていた。
ガルドは黙る。
外から声が混ざる。
「頼むよ……!」
「子どもがいるんだ……!」
扉の外。帰らない人間の気配が、じわじわと濃くなっていく。
その声を聞きながら、ユウはもう一度口を開いた。
「……全員は無理だけど。危ないの分かってて、それでも行くやつだけでいい」
ガルドが低く問い返す。
「……線を引くってことか」
ユウは小さく頷く。
「うん」
それだけだった。
その瞬間、エナが小さく息を吐いた。
「……選ぶしかないのね」
その声は責めてはいない。ただ現実を言葉にしただけだった。
ガルドは顔をしかめる。
「……嫌な役だな」
その言葉に、ユウは一瞬だけ間を置く。
外の声はまだ続いている。止まらない。消えない。
その音を背にしながら、ユウは言い切った。
「……このままだと、みんなじわじわ死ぬだけだ」
静かだった。
反論は出なかった。
否定できるだけの“別の現実”が、誰にもなかった。
外では、まだ声が続いている。
中盤〜後半の方が設定とか内容がしっかりしてるので、そっちを早く出したいです。序盤は成長が遅めなので、ちょっと退屈に感じるかもしれません。




