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男子は根性 〜 根性があればなんでもできてしまう男の恋物語 〜  作者: しいな ここみ
素直になれない二人! の巻

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39/52

私が好きなのは…… (神崎梓視点)

 ウズウズする──


 あぁ……。心がウズウズしてしょうがない。


 私はそれを求めている。

 あのスリルと興奮が忘れられない。


 もう一度……


 いいえ、できれば一生、私は忍者になりたい!


 笑は何か勘違いをしている。私が柏木のことを好きだとか思っているようだ。私が好きなのは、赤い忍者装束に身を包んだ自分自身なのに。


 柏木と二人で英愛学園に潜入した時の自分が恋しくてたまらない。

 私、どうして忍者の家に産まれなかったのかしら。どうしてフィットネスクラブのパパの元に産まれてしまったのかしら。


 あぁ……できることならかけもちで忍者部に入部したいのよ!


 誘ってくれるのを期待して、柏木の隣にいつもひっついてるのに、ヤツはそんな気もないのか、ちっとも忍者の話題すら口にしてくれない。あの時のスリルと興奮が、コイツにはどうでもよかったのかしら。


 一人で忍者部の部室 (天井裏)に行って、「入部させてください!」なんて、とても言えない。恥ずかしい。

 くのいち部員のひとは2人いたけど、それでもあの地味を極めて隠密行動に徹してるような忍者部に私が一人で入ったら、なんか場違いじゃない?

 柏木が必要なのよ。

 外見だけはやたらいい柏木とセットなら、私が忍者部の中に入ってもおかしくはないわ。


 でも柏木はなんだかどうでもいい話ばっかりして、そんな気はないようだ……


 私から話をもちかけるのも癪だ。したくない。


 でも忍者にはなりたい!


 あぁ……、どうしたらいいの!?


 私が部室の隅っこで悶々としていると、笑が横からニタニタしながら話しかけてきた。


「どうしたの、梓ちゃん? なんか座ったまま頭を抱えながらスライムみたいに体を動かして? もしかして恋の悩み? 聞くよ?」


 ──そうだ。


 どうしてもっと早く思いつかなかったんだろう? 親友だ。笑を誘って一緒に忍者部に──って、いやそうか。コンジョーくんと少しでも長く一緒にいたいだろう笑のことを気遣って誘わなかったんだった。

 でも、親友の笑になら頼める。柏木に、私を誘って忍者部にかけもち入部するよう、けしかけてもらって──

 あぁ……。でも、そうか。笑はめちゃくちゃ口が軽いんだった。それで笑の口から私が柏木と一緒に忍者部に入りたいなんて話がヤツ本人に伝わったら──恥ずかしい以前に、嫌だ!


 笑がニタニタ笑顔を浮かべながら、聞いてきた。

「柏木くんのことが好きなんだね?」


 私はきっぱりと答えた。

「断じて違う」


「ふふふ……。女の子の『嫌い』は『好き』って意味なんだよね?」


「は? じゃあ、笑はピーマンが好き?」


「嫌い。大嫌い」


「それと同じ意味よ」


 笑が真理を見つけたピタゴラスみたいな顔になった。そして震える声で言う。

「じゃ……、じゃあ、本当に? 柏木くんのこと、嫌いなの? でも……」

 今度は世界の不条理に翻弄されるショーペンハウアーみたいな表情で頭を抱えた。

「じゃあ、なんで最近、柏木くんの側にいっつも位置してるのーー!?」


「うっ……」

 私は答えに詰まった。

「その……」


「ほらほら」

 笑がニタニタ笑顔に戻った。

「好きなんでしょ? 素直になれって」


「イケメンは本当に嫌いなの。私の過去のアレ、笑に話したことあるでしょ?」


「あー……。まだ引きずってるの?」


 私の頭の上にあの出来事が浮かぶ。

 笑の頭の上にも想像でイメージが浮かんでいるようだ。


 一年の頃、付き合ってた、二個上の茶羅尾《ちゃらお》先輩──。全校の女子が憧れてた彼に私は告白された。


 初めてのデート──。嫌な記憶が蘇る。


 遊園地だった。

 みんなに見せびらかすように私を連れて歩きながら、先輩は何度も私のことを呼んだ。


「ほら、女の子。こっちだよ」

「ねぇ、女の子。あっちへ行ってみようよ」

「俺、バニラにする。女の子は? 何味?」


「ちょっと待って」

 私はさすがに気になって、先輩を問いただした。

「私の名前──、知ってる?」


 先輩は白い歯をキラーンと輝かせながら、答えた。

「知らないけど……女の子でしょ? 俺、かわいい女の子、大好き」


 そして上から目線で、この私を見下した。


 あれから私は学園のアイドルを目指し、そして君臨した。

 先輩は卒業してしまったけど、二度と男から見下されないよう、私のほうが男どもを見下すよう、努力したのだ。

 イケメンは女王たる私様のプライドを傷つける。だから嫌いなのだ!


 笑がにこっと笑顔になって、言った。

「でも柏木くんは違うよー? イケメンだけど、優しいし。それがわかってるから梓ちゃん、いっつも側にいるんでしょ?」


「ち、違うわ」


 何と答えたらいいかわからず、私がモゴモゴ言ってると、はっと気がついたように笑が言う。


「あ! お金か!」


 チャンス。


 そうそう。アイツのお金が目的なのよと言えば、笑も納得してくれるはず。

 でもなんか自分が醜くなるようで嫌だった。


 私は覚悟を決めた。

 親友にすがるように抱きつくと、耳許で告白した。


「笑……。私、忍者になりたいの」


「へっ?」


 あまりに意外な相談内容だったようで、笑がTシャツにはりついたカエルみたいな表情で固まった。





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― 新着の感想 ―
もう茶羅尾先輩が、茶羅尾先輩が気になって仕方ない私ですʕ◉ᴥ◉ʔ 茶羅尾先輩の登場をお待ちしております♩ 読ませていただきましてありがとうございます!(ᵔᴥᵔ)
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