第54話 ミャオ!
そして今は、リリーちゃんに抱っこされて丸太に一緒に座っています。ラハチェさんも近くに腰を下ろして、スープとパンを食べ始めている。
「そのこがアランが待ってた猫か?」
犬獣人の少年がアランに話しかける。
あれれ、この間ラハチェさんと一緒に噴水広場にいた子かな?帽子をかぶってたし、ピエロのラハチェさんの印象が強すぎて耳や尻尾に気づかなかったなー。
「そうだよ。このこはオヴィっていうんだ。オヴィ、こっちはフォル。」
「こんにちは!はじめましてオヴィです!腹ペコです。」
精霊は食べなくても死なないらしいけど、腹は減るのだ。
「オヴィに何か食べるもの貰えるかな。お腹が空いてるみたい。」
「だな!ちょっと待ってろよ!」
そう言ってフォルは走って行ってしまった。
「アラン、このひとはラハチェさんだよ!顔はちょっと怖いけど優しいよ。ラハチェさんのおかげで、サーカスの馬車に乗れたんだ。」
「そうだったんだ。あの、ラハチェさん、僕はアランです。オヴィを助けてくれてありがとうございます。」
アランはラハチェさんに向かって、ぺこりと頭を下げてお礼を言う。
「いや、まあ成り行きだ。気にするな。それより俺の名前は、そのオヴィから聞いたのか?」
「はい。ラハチェさんのこと優しい人だって。」
「…そうか。」
ラハチェさんは照れたのか、器で顔を隠すように、静かにスープをすすった。
「あらあら、ラハチェさんたらー。人見知りなの?しょうがないなー、まったくー。恥ずかしがらないで仲良くおしよー。ほら笑顔、笑顔!こんな風に。」
私は自分の頬っぺたを前足で、ぐいっと持ち上げてみせる。
「ふふ。オヴィ変な顔だよ。」
「きゃはは。オヴィちゃ、へんなかおー!」
あばば、リリーちゃんが笑うと体が揺れるー。
「む、その猫、なんか世話焼きなおばちゃんみたいなこと言っただろ。」
「すごいや!どうしてオヴィの言うことが分かったの?」
「獣人は動物の言ってることが何となく分かるんだよ。ミャオの街じゃあ、獣人はほとんどいないから知らなかったんだな。」
「はい。サーカスに来てはじめて会いました。」
「ん?ねえねえ、ミャオの街って?」
アランに尋ねる。
「今までいたところだよ。この国の最東端の街で、猫の精霊様が誕生した地。」
「ええー!知らなかった。ちなみに街の名前の由来は?」
「猫の精霊様の産声がとっても尊かった?からだって。」
きっと街の名前をつけたひとは猫好きに違いない。
「おーい!持ってきたぞー!」
フォルが浅めの器を持って、小走りで戻ってきた。
「ほら。動物達の飯を分けてもらったんだ。野菜と肉のスープ、肉ましましだ!」
「うわー!ありがとうフォルー!」
私がリリーちゃんの膝から地面に飛び下りると、フォルが近くにそれを置いてくれる。
「うまうま。」
「そういえばフォルも動物達の言いたいことが分かるの?」
アランは、ご飯を食べるオヴィを楽しげに見つめるフォルに問う。
「まあね。たぶんオヴィは今、美味しいって言ってるな!」
「そうだよ。フォルに感謝して、うまうまって言いながら食べてる。」
「そっかそっか!腹一杯食べろよー、オヴィ。」
フォルによしよしと背中を撫でられる。
「うん!」
顔を器に突っ込んだまま返事をする。
「おにいちゃ、ねむたいよー。」
リリーちゃんが目を擦りながら、唇を尖らせている。アランはリリーちゃんをおんぶしてあげると、まだご飯をたべている私に問いかける。
「僕たちはテントに戻ろうと思うんだけど、オヴィはどうする?ご飯を食べ終わる頃に迎えにこようか?」
「ちょっと待った。フォルやアランたちのテントだと雑魚寝だろう?子猫一匹といえど、流石に動物と一緒は駄目だ。とりあえず今日は俺のとこでオヴィを寝かせる。明日、俺が団長に話を通しておくから。その後はオヴィは他の動物と同じ所で寝起きしてもらう。」
ラハチェさんにそう言われたアランは、少し戸惑う様子をみせたけれど、我が儘は言えないと思ったのか、素直に頷いた。
「はい。オヴィをお願いします。」
「なにもずっと別々に行動しろとは言ってないぞ、昼間は一緒にいたらいい。」
「大丈夫だよ、アラン!また明日ね!」
食事の後片付けをしてから、アランとリリーちゃんとフォルはテントに帰っていった。
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