第53話 再会
起こされて馬車から飛び出すと、ラハチェさんに
すぐ捕獲された。
「やめてよー。アランとリリーちゃんに会いにいくんだからー!」
ラハチェさんの手から抜け出そうと、全ての足を力がいっぱい突っ張る。
「勝手に動くなよな。新入りの居場所、知らないだろ?」
「そうでした!」
ハッとして大人しくなった私を、ラハチェさんが肩に乗せる。
「まだ村に着いたばかりだし、泊まる準備もしなくちゃいけないから、もう少しだけ待っててくれるか?」
早くアランとリリーちゃんに会いたいけど、これからお世話になるだろう人に迷惑をかけるわけにはいかないよね。
「わかった。待つよ!」
それでもラハチェさんが荷物の整理をしている間中、うずうずそわそわと体が勝手に動いてしまう。
「…なんか落ち着かねぇな。やっぱりここにいてくれ。」
そう言って肩に乗せていた私を掴んで、近くの草の上へと下ろした。
「じっとしててくれよな。」
「うん。待つけど、なるべく早くしてね。」
ゴロンと草の上に寝転んで、ラハチェさんが作業している様子を見守る。
「…ひまだ。」
村の民家の方を見れば、ぽつぽつと明かりが灯り始めている。夕方の薄暗さの中でも、獣人たちは夜目がきくのか未だランプの明かりさえ見えない。
民家がある反対側には畑が広がっている。おそらくここで作られた野菜や果物が街で売られているのだろう。
民家やサーカスの馬車がとめてある場所から、夕飯のいい匂いがしてくる。
くんくん。
「いいにおいですなー。」
食べ物の匂いにつられて、思わずふらふらとそちらへ歩いていこうとする。
「こら、待て。飯を食うときに団員が集まるから、それまで大人しくしててくれよ。はぐれて探し回るのはごめんだぞ。」
「オッケー!それに迷子になんてならないよー。これでも心は大人だよ?」
胸を張ってどや顔をする。
「…まあ、了承した意思は感じた。」
ラハチェさんは可哀想なものを見るような顔をした後、荷物の整理を続けたのだった。
「待てよ、近くにいるならアランの匂いを辿れないかな。」
くんかくんか。
小さな鼻をスンスン動かしながら、顔を上げて空中を嗅いでみる。
「うーん、ご飯のいいにおーい。」
…野性的な本能は持ち合わせてなかったようだ。
ぱんぱんっと払うように両手を叩いて、ラハチェさんが立ち上がる。腰に手を当てて、反るように伸びをする。
「よしっ。そろそろ時間だし、新入りに会いに行こうか?」
「待ってましたーー!」
ぴょこっと耳を立たせて跳ね起きて、村の民家の方へと走り出す。
「違う。ったく、こっちだよ。」
あっという間に捕まってしまった。足速いね、ラハチェさん。
「ごめんなさい。いい匂いがしたもんで。」
ラハチェさんは片手で私を抱えると、やっと明かりの灯りだした、サーカスの馬車が多くとまっている方へと向かって行く。
「さあ、私をアラン達のもとへと連れて行くのだー!」
進行方向を前足で指し示すと、ラハチェさんが足を止める。
「…なんか調子に乗ってるな?」
頭上から呆れた様な声が聞こえ、ぐいっと指先で強めに撫でられる感覚がする。
「いや~、つい。」
へへへ。前足で頭を掻き、舌を出しながら、ラハチェさんを振り仰ぐ。
「…許す。」
「ありがとう。さあ、行くのだー!」
はあ、と盛大な溜め息を吐きラハチェさんは再び歩きだしたのだった。
村の中のひらけた場所にやってくる。街から街へと走る馬車なんかをとめるための場所なのだろうか、それともただの空き地なのかな。けれど今はサーカスの馬車しかいない。火が焚かれ、その上に木が組まれ鍋がかけてある。団員たちは火の周りに集まり、手に器を持っている。そのなかに何人かの子供たちの姿も見えた。
「あの辺にアランがいるんじゃない?」
走って行きたくて、ラハチェさんの腕の中でもぞもぞと動く。
「今探してるから、ちょっと落ち着いてくれ。」
そう言って辺りに目をやる気配を背に感じたけれど、私はふと気落ちした様子で俯いている男の子に目が止まった。
「いたよ!アランだ!あっちあっち!ラハチェさん、早くーー!」
ぺしぺしとラハチェさんの腕を叩いて、催促する。
「あ、本当だな、新入りだ。よくわかったな。」
「友達だからね!さあ、急いでーー!もしくは離してくださーい!」
あ、隣にリリーちゃんもいる!
「おーい!アラーン、リリーちゃーん!」
手を振りながら二人のもとへ近付いて行き、再会を果たしたのだった。
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