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第42話 大団円

頭を下げるアランを見つめたまま動物達はポカンとしている。


「ふははは。頭を上げな、坊主。まさか人間に謝られる日がくるとはな!」


アランは顔を上げて、林の皆を見回す。

林の動物達は皆、驚いて涙も引っ込んだみたいだ。


「もしも人間にしてほしいことがあるなら、僕に教えてくれない?出来るだけ叶えてあげたいんだ。」


アランにそう言われても、戸惑っているのか誰も言葉を発しない。


やっぱり林の皆と仲良くなるのは無理なのかな、と思いかけたとき、アナグマ家族の小さな子供たちが口を開いた。


「ぼくねぇ、にんげんとともだちになりたいなぁ。」


「わたしも。なでなでしてほしいなぁ。」


「あ、こらっ、お前たちっ!」


パパアナグマさんが慌てて子供たちの口をふさぐ。


それを見ていたウサギさんがぽつりと呟いた。


「それなら私だって、人間に可愛いって撫でられてみたいわよ。」


他の動物たちもそれに同意しながら、皆俯いていく。


「それなら孤児院に遊びにおいで!きっと孤児院の皆も喜ぶよ。」


「でも…」


迷うように動物たちはお互いを見合っている。

アランはリックさんに近づき、そっと頭を撫でた。


「できれば君にも来てほしいな。妹は動物が大好きだから。」


リックさんは初めこそ体を強張らせていたが、撫でられているうちに、だんだんと体から強ばりが抜けていき、気持ちよさそうにしていた。


リックさんはハッとして、アランの手を避ける。


「そんなの知らねーよっ!」


そう言って、林の奥へと走り去ってしまった。



「はぁ、リックのやつ。すまねぇ、アラン。」


ラックさんは呆れたようにリックさんの去った方を見ながら溜め息を吐いた。



「まあいいじゃねぇかラック。しばらくすればリックも落ち着くさ。それはそうとアラン、本当に俺様達が孤児院へ行ってもいいのか?俺様はこいつらに、期待だけさせて悲しませるような真似はさせたくねぇぞ?」


リスボスさんがアランを真剣な眼差しでじっと見つめる。


「うん。毎日この時間は孤児院の休憩時間なんだ。だからその時に遊びに来てよ!」


「わかった。」


リスボスさんが背中を向ける。


「待ってるよ。」


アランがそう言うと、リスボスさんはそれに何も返さず林の奥へと去っていき、他の動物たちもそれを追うようについていった。


「なんかわりぃな。けど、あいつらにも考える時間をくれねぇか。」


その場に残っていたラックさんが、私達を見る。


「うん、もちろん。」


アランが頷くのと一緒に私も黙って頷く。

とりあえず明日以降は、しばらく休憩時間に林の動物たちが来るのを待つことにして、解散した。


ラックさんは、もう少し林の皆と話してみると言って去っていき、アランは休憩時間が終わる前に急いで孤児院へと戻って行った。



ブランシュさんとふたりきりになり、私達はひとまずおじいさんの家に行くことにした。



「オヴィ、結局林の連中とは仲良くなってねぇがいいのか?」


「いいの!仲良くなりたかったのは本当だけど、林の皆の悲しみが少しでも癒えるなら、そっちの方がもっと嬉しいもん!」


「そうか。」


その日はふたりでゆっくりと歩いて帰った。




「こないねー。」


林の皆と話した次の日から、孤児院の休憩時間にアランとリリーちゃんと一緒にラックさんたちが来るのを待っている。


人目があるので、アランは私に返事はしないが、本を読みながらも林の方をしきりに気にして見ている。


「オヴィちゃ、かわいいねー。いいこねー。」


リリーちゃんに背中をよしよしと撫でられる。ちなみに私の名前は、アランが名付けたかのように装ってリリーちゃんに教えてくれた。


「うーん、やっぱり私がいるから来づらいのかな。一旦帰ったほうがいいかなー。」


立ち上がり、リリーちゃんのそばから離れようとすると、ガシッと上からアランに捕まえられる。


「うわっ!?」


「あーん、オヴィちゃー!」


アランが両手で私を持ち上げ、顔をすりすりして頬擦りをするふりをしながら、私に小声で話し掛ける。


「それじゃあ意味ないでしょ。」


「ぐわあ、くすぐったいぃ。」


そう言って私が手足を突っ張って避けると、アランは私をリリーちゃんの膝の上に乗せる。


「でもあれからもう5日だよ?やっぱり猫の私がいたらさー。」


「あー、りすたんだ!」


リリーちゃんが林の方を指差す。


「ええ、どこどこ?」


私は急いで振り返り、アランも林の方向へ目を凝らす。


「本当だ!リスボスさんだ!」


私はぴょんとリリーちゃんの膝から飛び下りて、リスボスさんに駆け寄った。


「リスボスさーん!」


「おう、嬢ちゃん。来たぜ。ってなんだその呼び方は。」


「だって名前知らないから。」


「そうだったな。俺様の名前はクッキーってんだぜ。あの美味い食い物と同じ名前よぉ。人間につけられたんだが、気に入ってるからそのまま使ってんだ。」


クッキー…可愛い。けど、クッキーさんか。ヤバい厳つい雰囲気と可愛い名前のギャップで、にやけちゃいそう。かわいい、くぅ。


頬っぺたの内側を噛んで耐えていると、クッキーさんが、続けて話し出す。


「まあ、名前でもリスボスでも好きに呼べや。そういや俺様も嬢ちゃんの名前を知らねぇな。」


「ぷはぁ、よかった。これからもリスボスさんって呼ぶね。それと私はオヴィっていうの!」


「ほう、いい名前じゃねぇか。」


「うん!今日は、孤児院に遊びに来てくれたの?」


「ああ。他のやつらも向こうにいるぜ。」


リスボスさんは小さな手で、クイっと後ろを指差した。その先にラックさんたちがいるのが見えた。


「林の全員、やっと覚悟を決めてよう。これから、お邪魔させてもらえるか。」


「もちろんだよっ!こっちこっち!」


私はリスボスさんに頷いた後、ラックさんを手招きした。


皆でぞろぞろと孤児院の庭まで歩いていく。


「おにいちゃ、どうぶつたんがいっぱい!」


きゃーきゃーとぴょんぴょん飛び跳ねてリリーちゃんが興奮している。それにつられて、周りにいた他の女の子たちがこちらを見る。


「いやーん見てウサギよー!可愛いーー!」


「いやーん、本当だー!」


女の子たちがきゃっきゃとはしゃぎ出すと、走り回って遊んでいた男の子たちもこちらへやって来る。


「うわー!俺アライグマ触りてー!」


「俺もー!あ、狸もいるぜー!」


あっという間に、林の動物達は子供たちに囲まれる。ひとしきり撫でた後、男の子達と何にんかの動物達は一緒に庭を走りだし、ウサギさんや小さな子供がいるアナグマさん家族は女の子達と一緒に花冠を作ったりして遊びだした。



いつもの木陰には、アランとリリーちゃん、私とリスボスさん、ラックさんとリックさんが残った。


「よかった。あいつらも楽しそうだ。ありがとうな、アラン。」



アランは黙って首をふった。


「あのね、アランはスキルのこと秘密にしてるの!だから、人前では話せないの!」


私がアランに代わってそう言うと、リスボスさんは頭をポリポリと掻いた。


「そうだったのか。いろいろ迷惑かけちまって悪かったなぁ。まあこれからも、たまにこうやってあいつらを連れて来させてくれ。」


アランは答える代わりに、リスボスさんの小さな手を握った。


「よかった、よかった!大団円だー!」


わーいわーいとひとり跳ね回っていると、ラックさんがリックさんをつついて私の方へと背中押す。


「ほら言いてぇことがあんだろ?」


「わ、押すなよラック兄!」



え、え、告白?あーん、ごめんなさい。まだ誰かと付き合うとか考えられないの。私まだ皆のオヴィでいたいの。といい女ムーブで返そうと、ワクワクしていると、リックさんがいきなり頭を下げた。


「たくさん追いかけ回して悪かった!」


「俺も初めて会ったとき、キツく当たって悪かったな。」


リックさんとラックさんに謝られる。


あ、告白じゃないんだ。…恥ずかしいぃぃ!


こっそり顔を赤くしながらも、ふたりに答える。


「大丈夫!全然気にしてないよっ!」


ニコッと笑ってラックさんとリックさんを見る。


「ま、まあ、そういうこった!じゃあなー!」


リックさんは男の子達が遊んでいる方へと走って行った。


「リスたん、リスたーん。」


リリーちゃんがリスボスさんを呼びながら、頭をそっと撫でる。


「おうおう、気持ちいいが、今は首を撫でられてぇんだなぁ。これが。」


リスボスさんはちょっぴり不満そうに言いながらも、大人しく撫でられている。


それを聞いたアランが、リリーちゃんにアドバイスをする。


「リリー、このへんも撫でてあげたらいいんじゃない?」


リリーちゃんがよしよしとリスボスさんの首元を撫でだす。するとリスボスさんは、ふにゃふにゃうとうととしはじめた。


「これだよこれ。最高だぜぇ~。」


威厳のないその様子にラックさんは少しひいている。


ラックさんがリスボスさんは飼い主に懐かないから捨てられたって言ってたよね。


こんなに撫でられるのが好きなのに、どうして人間に懐かなかったんだろう?

疑問に思ったが、繊細な話題なのでそっとしておくことにした、のだが。



「リスボスさんは、撫でられるのが好きなんだねー。」


「おう!俺様は人間に飼われてたことがあるから、余計にそうなんだろうな!でも前の飼い主は撫で方が下手くそでよう。撫でられるたび怒ってたら、捨てられちまったよ!がはははっ!ま、野生の方が性に合ってたみたいだがなー!がはははっ!」


明るーい。そんで気まずーい。そんな悲しいやら笑っていいやら、分からない話困るよー!


「そ、そうなんだ。がはは。」


ふたりで、がははは笑い合う。



それから休憩時間が終わると、子供たちは孤児院の中へと戻っていった。林の皆は、これからもたまに孤児院へ遊びにくる約束をして帰って行った。


私も今日のことをブランシュさんに報告しようとおじいさんの家へ走って向かった。



「でね、本当大団円って感じだったんだよー!」


「よかったじゃねぇか。」


話し終わっても興奮している私を、優しく見守っていたブランシュさんが、ふと思い出したように私に告げる。


「そういえばオヴィ、サーカス見に行ったのか?もうすぐ街を離れるだろう?」


ハッ!?


「サーカスっ!!忘れてたー!」





お読み頂きありがとうございました。


ムジナ→アナグマに変更しました。


それと、やせいの動物にむやみにさわっちゃいけませんよ。あぶないですからね。


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