表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/56

第41話 林のボスさん

動物達のいる奥の方から声がしたと思ったら、動物達をかき分けて、狸のリックさんが現れた。


「アニキ、皆を集めて猫と話し合いなんて正気か?それに人間もいるじゃねぇか!」



「ああ。お前には今日ここに来い、としか言ってなかったか。」


「そうだぜ!こんなの騙し討ちじゃねぇかっ!」


「そうでもしねぇとお前は猫との話し合いに応じねぇだろ。」


「くっ。ボスもボスだ!本当にこんな話し合いに応じるんですかっ!」


リックさんは後ろを振り向き、声を荒らげた。

リックさんの視線の先には、切り株に座る影が。


「りす?うわー、小さくて可愛い!」


切り株にちょこんと座ったリスボスさんがぴくりと動いた。


「おいおい嬢ちゃん。今俺様を可愛いとか言いやがったのか?」


「ぴょえっ!?」


可愛い見た目にそぐわない、ドスのきいた声で凄まれる。


「落ち着いてくださいボス。相手はまだガキですよ。」


ラックさんがそう言って取り成してくれる。



「おう、すまねぇな嬢ちゃん。大人げない真似しちまったぜ。だがこれからは、大人の男に可愛いはよしてくれな。」


「ひゃっい!ごめんなさいっ!」


リスボスさんはニコリとそう言ってくれたが、その小さな体には無数の傷があり、それも相まって大きな2本の前歯を剥き出しで笑う姿はちょっと怖かった。


「リックも大人しくしやがれ。とりあえず、こいつらの話を聞いてみようじゃねぇの。」


リスボスさんがそう言うと、リックさんは素直にリスボスさんのそばに座った。


「それじゃあ、アラン。よろしく頼む。」


アランは私達より一歩前に出て、林の動物たちに近付く。


「はじめまして、僕はアラン。今日は皆の意見を聞きたいと思ってここに来たんだ。」


アランが話し始めると、林の皆は訝しげな表情をする。


「おい、待て。この人間はそこの猫共の飼い主じゃねぇのか?何でそいつが俺様たちに話し掛ける?」


リスボスさんがラックさん、ブランシュさん、私を順番に見やる。



「僕は動物と話せるスキルをもっているんだ。…毎回これを言わなくちゃいけないのがなんだか恥ずかしくなってきたなあ。」


リスボスさんは呆気にとられた表情で、またもラックさん、ブランシュさん、私を順に見やった。


私達は、さんにんともリスボスさんに向かって頷く。


「かあっー!不思議なスキルもあるもんなんだなー!それで、その人間が何で俺様達の話なんか聞きてぇ?」


「それは、私がお願いしたのっ!」


私が発言するとジロリと林の動物たちから睨まれる。


うう、怖い。 


「私は林の皆と仲良くなりたいんです!」


思いきってそう告げる。


「「ぶふぁはははーー!」」


林の皆に大笑いされ、ムッとしてしまう。


「ちょっとー。感じ悪いですよー!」



「ぎゃはは。だってよう、あのすかした猫共が俺様達と仲良くなりたいって?」


リスボスさんはお腹を抱えて笑い転げている。


「あ、いや街の皆はこのこと知らなくて…」


「だと思ったぜ。嬢ちゃん、俺様達と猫共は単純にうまが合わねぇのさ。そうだろう?そこの白いの。」


リスボスさんはブランシュさんに向かってそう投げかける。


「ああん?俺達はお前等のことなんてどうでもいいね、興味もない。」


「ほらな、そういうこった。俺様達は猫共が嫌いだし、猫共はこんななんだ。これまで通りお互い干渉し合わないのが一番だ。さっさと帰んな、嬢ちゃん。」


だめだ。全然話し合いになんないよー。


どうしたらいいか分からず右往左往していると、アランが口を開く。


「どうして君たちはそんなに猫が嫌いなの?」


アランが心底不思議そうに問いかける。


問われた林の皆はお互いに顔を見合せた後、それぞれ不満を口にしはじめた。まずはじめにウサギさんが話し出す。


「だってさ、ずるいじゃないのよ。私は人間の畑から箒で追いたてられたのよ!それなのに猫共は人間からご飯を貰えるなんて!私なんてこの林に来てから、ようやくお腹一杯ご飯が食べられるようになったっていうのに!」


それからアナグマの家族が話す。


「そうだそうだ!うちは家族で森の外縁部に住んでたんだが、魔獣に襲われて命からがらこの林に辿り着いたんだ!俺達はやっと安全に暮らせるようになったってのに、猫共はどこでも人間に可愛がられて優遇されて、ずるいじゃないかっ!」


その後話す動物達の言い分は、どれも同じようなものだった。


「リックもなんか言ってやれっ!」


他の動物たちがリックさんを焚き付けると、今まで大人しくしていたリックさんが、アランを睨み付ける。


「俺は人間に捨てられたんだっ!呑気な猫共も嫌いだが、人間だって嫌いだっ!あいつら、俺が小さい時は可愛がってた癖に、俺がでかくなったら、森に捨てやがったんだ!しかも理由が、精霊のいる犬じゃなかったからだとっ?ふざけんじゃねぇ!俺は最初から狸だーー!」


そう言ってリックさんは、わんわんと泣きはじめてしまった。


「「う、うう。うわーん。」」



リックさんにつられて、林の皆も泣きだしてしまう。


「そうだ、ずりぃよ猫ばっかり!」


「どうして人間は私たちを可愛がってくれないのよ!」



あわわ、どうしよう!もう収拾つかないよこれー!混乱を収めるために、ここは渾身のギャグを披露するべきかー?


一歩前に出ようとしたところで、ブランシュさんに止められる。


「皆、辛い思いをしてきたんだね。でもそれ、この街の猫たちは関係ないよね?」


アランの一言にその場が凍りつく。


ちょっ、アラーンッ!?ええ?

そりゃ私も、それって八つ当たりじゃない?とは思ってたけども。こわっ!子供の無邪気さこわっ!子供の素直さってってときには恐ろしいものなのですね。


「悪いのは、身勝手な人間達だ。僕が皆を傷付けた人間の代わりに謝るよ。本当にごめんなさい。」


アランが目線を合わすように、地面に膝をついた後、ぺこりと頭を下げた。





お読み頂きありがとうございました。


ムジナ→アナグマに変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ