第34話 ブランシュさんとアラン
ツンツンと誰かに額をつつかれる。
「起きろ。もう日が暮れちまったぞ?孤児院に用があったんじゃないのか?」
「ふぁ~。むにゃむにゃ。」
寝ぼけ眼で辺りを見渡せば、すっかり夜になっていた。
「あーん。また寝過ぎちゃったよー。」
「しょうがないよー」
「ちっちゃい精霊はいっぱい寝なくちゃー」
落ち込んでいると、ブランシュさんがこれからどうするか聞いてくる。
「まだ寝るか?それとも一応孤児院まで行ってみるか?」
「うーん。」
夜空を見上げれば、昨日アランと話しをした時刻と同じくらいの高さに月が浮かんでいる。
「行ってみる。約束はしてないけど、もしかしたらアランがいるかもしれないから。」
「そうか。」
ブランシュさんは祭壇から降りると体をぐんっと反らして伸びをした。
「何だかスッキリしたな。」
「でしょう!しかも、お腹も空かないの!」
「いや、腹は減ったぞ。」
そっか、それは精霊特典だったか。
「えっ、どうしよう。ご飯のこと考えてなかったよー。」
「大丈夫だ。一食くらい食わなくたって。ほら、行くんだろ?」
ブランシュさんはすたすたと孤児院の方へ歩き出した。
「あ、待ってよー。じゃあね?妖精さん達!」
「ばいばーい」
「またねー」
孤児院に着くとやはり建物の明かりは落とされおり、辺りは寝静まったようにシンとしていた。
「やっぱりアランはいないかー。」
そう呟くと、大きな木の陰からアランがひょっこりと顔を出した。
「オヴィなの?」
「アラーンっ!来てくれてたんだね!ぶへぇっ。」
走ってアランのもとに駆け寄ろうとすると、うっかり木の根に躓いて転んでしまう。
いや、ここで転ぶんか~い!
と思わずセルフツッコミしてしまった。落ち着いて、前を見て歩かないとね。
「うわっ、大丈夫!?昼間に窓からオヴィが見えた気がして。約束はしてなかったけど、もしかしたらオヴィが来るかなって。」
「全然平気!わーい会えてよかったよー!」
「はいこれ。お腹空いてるかなって、一応ミルク持ってきた。」
アランがミルクの入ったお皿を私の前に置く。
「ありがとう!ブランシュさんっ、こっち来て一緒にミルク飲もうよー。」
振り返るとブランシュさんは目を丸くしていた。
「友達っていうから、てっきり猫だと思ってたぞ。」
そうして、ゆっくりこちらへ歩いてくる。
「へへ。前にミルクを貰って友達になったの!ねっ?」
アランの方を見るとビックリした顔をしていた。
…しまったーっ!アランはスキルを内緒にしたがってたのに、信頼できるからって安易にブランシュさんを連れてきちゃ駄目でしょうがっーー!!私のバカバカ!あわわ、どうしよう。
「ア、アラン?」
「ひとりじゃなかったんだね。」
「ごめんなさい。あの、えっと。」
「スキルのこと?大丈夫だよ。オヴィが信頼してるこなんでしょ?友達を紹介しに来てくれたんだよね?」
「うん。こちら私の大好きな友達のブランシュさんです!」
ブランシュさんは、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。
「今、会話してなかったか?」
「はじめまして、アランだよ。僕は君たちの言葉が分かるんだ。」
「俺はブランシュだ。よろしくな。」
「アランはね動物と話せるんだよ!凄いよね!でも、スキルのことは人間には秘密なの。」
ブランシュさんは少し考えてからアランに話し掛ける。
「スキルのこと、初対面の俺に話してもよかったのか?」
「うん。君はオヴィの友達でしょ。人前では気を付けてくれれば大丈夫だから。たしかに、この街の動物達とはあまり話さないようにしているけど、渡り鳥とはたまに話しをするんだ。」
「そうか、わかった。信頼してくれてありがとな。」
それから、アランと今日の感想を言い合ったりしてその日はお開きとなった。
「それじゃあ、おやすみオヴィ、ブランシュ。」
「うん!おやすみーアラン。」
「ああ、おやすみ。」
アランを見送ったあと、私達はおじいさんの家へ帰ることにした。
「また、行こうねブランシュさん!」
「いや、アランのためを思うなら頻繁には行かないほうがいいだろ。それに祭壇で寝るのは気持ちいいが、落ち着かねぇ。やっぱり慣れた場所が一番だ。」
「そっか、そうだよね。」
「でも、オヴィだけならいいんじゃねぇか?たまに会いに行くらい。」
「そうかな。」
「友達なんだろ?」
「うん!」
それからはアランと、たまにだけど夜にお話ししている。
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