第33話 私、実は…
うーん、と唸りながら悩んでいると、ブランシュさんが話を変える。
「そういえば、今日は安息日だから朝市やってなかっただろ。」
「うんっ!でもね、教会で御神体を見てきたんだよっ!」
「ああ、あのボロいのな。」
ブランシュさんもかー。ガックリと、肩を落とす。
「違うの!あの石像はあれで完璧なの!」
「けど、耳も尻尾も欠けてたぞ?」
「もうっ、私を見てよっ!」
そう言って耳をぴるぴると動かしてから、ブランシュさんに背中を向けて尻尾を見せつける。
「オヴィの耳と尻尾は小せぇな。」
「そうだけど、そうじゃなくて!石像と一緒でしょう?」
「そう言われればそうだな。」
変な奴だと思われてもいいから、ブランシュさんには本当のことを話そうと思った。勇気を出してブランシュさんに打ち明ける。
「私…実は精霊なのっ!」
「そうか。」
あまりにもあっさりとした返答に拍子抜けする。
「へ?それだけ?」
「ああ、オヴィはオヴィだからな。いきなり、精霊なの凄ーい!とはならねぇだろ。」
うん。たしかに精霊に、おおはしゃぎするブランシュさんを想像できないね。
「じゃあ、今まで通り友達でいてくれる?」
「そんなの当たり前だろ。」
ブランシュさんはニッと笑って、前足でぽんっと私の頭を撫でてくれた。
へへへ。緊張して損しちゃったなっ!
「オヴィー」
「オヴィー」
妖精さん達が耳や頬っぺたを引っ張ってくる。
「なあに?」
「あの場所で寝るのー」
「キラキラいっぱいになるのー」
「ん?」
ブランシュさんが不思議そうにこちらを見る。
「妖精さん達が私を祭壇に連れていきたいみたいで。」
「祭壇?」
「孤児院の近くにあるの。ブランシュさんは知ってる?」
ブランシュさんは思い出したように頷いた。
「ん?ああ、あのちっせー石の台みたいなやつか。」
「うん。それそれ!そこでお昼寝するの気持ちいいんだ!ブランシュさんも一緒に行こうよー!」
「んー。まあたまには、別の場所で寝てみるのもいいかもな。」
「そうこなくっちゃっ!」
いつの間にかおじいさんは、私達がご飯を食べ終えたお皿を持って入り、お店に戻ってしまったようだ。
「行こう!行こう!今すぐ出発だー!」
せっかくだから孤児院にも寄って、アランとリリーちゃんにも会えたらいいな!
「いこーいこー」
「しゅっぱつー」
「分かったから。ちゃんと前見て歩けよ。転ぶぞ。」
「転ばなーいもんねー!」
ブランシュさんと妖精さん達と一緒に、祭壇へと向かった。
「ブランシュさん、祭壇に行く前に孤児院に寄ってもいい?」
「いいけど、何でだ?」
「えへへ。そこの友達に、ブランシュさんを紹介しようと思ってー。」
「そんなこと言うなんて珍しいな。どんなやつなんだ?」
「えっとね、アランっていう男の子だよ!」
そんな猫がいたかな?と思いながらもブランシュは頷いた。
「あ、見えてきたよ!ブランシュさんは、ここでちょっと待ってて?」
そう言って、孤児院の手前でブランシュさんを待たせて、アランとリリーちゃんを探しに行く。
あ、いた!
窓から建物の中を覗き、見つけたはいいものの二人は勉強中だった。
しょうがない。また、後で来ようっと!
窓から離れ、ブランシュさんの元へと戻る。
「忙しそうだから、お昼寝した後にまた行ってみる。」
「わかった。」
「早くー」
「こっちこっちー」
妖精さん達に急かされて、祭壇へと走る。
「こんな所まで来るのは、久しぶりだな。」
「ブランシュさんも、街を探険したりした?」
「ああ、ガキの頃にな。」
話しているうちに祭壇へと到着する。既に妖精さん達は、祭壇の上で待ち構えている。
「ここ、ここ」
「ここに寝るのー」
「はいはい。ブランシュさんも早く。」
今日も祭壇からはキラキラとした光が溢れている。私は祭壇の上に飛び乗ると、ブランシュさんを呼んだ。
「いやー、なんか分かんねぇけど、畏れ多い気がすんだが。」
「え?あっ!もしかしてブランシュさんにも、このキラキラが見えるの?」
「キラキラ?そうじゃなくて、野生の勘ってやつだな。自然と尻尾が膨らんじまう。」
ブランシュさんの尻尾を見れば、たしかにいつもふわふわの優雅な尻尾が、ぼわぼわと大きく膨らんでいた。
「そんなぁ。それじゃあ、一緒にお昼寝出来ないの?」
キラキラの中で一緒にお昼寝をしようと、楽しみにしていたので、しょんぼりと項垂れてしまう。
「こうすれば大丈夫よー」
「ほらほらー」
妖精さん達がブランシュさんの上で体をふりふりして、身に纏っていた金色の粉を振りかける。ブランシュさんの尻尾が、だんだんといつもの大きさに戻っていく。
「お、何か平気になってきたぞ。」
「ええっ、本当に!?凄いじゃんっ!ふたりとも!そんな妖精みたいなこと出来たんだね!」
「妖精ですからー」
「ですからー」
驚いてふたりを見ると、くるくると宙で楽しそうに回っている。
「よいしょっと。」
ブランシュさんが祭壇に飛び乗り、私の横に寝転がる。
「おお、なんだか気持ちがいいな。」
「でしょう?お昼寝したらもっと気持ちいいよっ!」
そのままふたりで光に包まれながら、お昼寝をしのだった。
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