第23話 怒られた
走り続けて明け方頃に、ようやく骨董屋のおじいさんの家まで帰ってきた。
裏庭に置いてあるベッドで寝ているブランシュさんの姿を見て安心したのか、少しだけ瞳が潤んだ。
ブランシュさんのベッドの横には、いつものようにオヴィ専用の小さなベッドが並んでいたが、今日だけは心細さからブランシュさんのベッドへと潜り込む。
ブランシュさんは足元で丸まる私を、片目を開けてチラリと見やる。それから、ふさふさの尻尾で私を包みこむようにすると、目を閉じてもう一度眠りについた。
…何だか美味しそうな匂いがする。
そう感じて目を覚ますと、すでに日は昇りきっており、お昼くらいにみえた。
ベッドの上でもぞもぞとしていたら、ブランシュさんに話しかけられる。
「お、起きたかオヴィ。じいさんがお前の分の飯も用意してくれてるぞ。」
私はガバッと起き上がった。
「ごはーんっ!」
勢いよくベッドから降りると、一目散にご飯の入ったお皿まで走っていく。
はぐはぐっ。
「おいしい!流石おじいさんのご飯だね!」
腹ペコで一心不乱にご飯を食べきると、満足してコロリと仰向けに寝転んだ。
そこに席を外していたおじいさんが、戻ってくる。
「おはよう、オヴィ。」
おじいさんが私の鼻筋を撫でる。
あっ、ご飯に夢中でブランシュさんにおはようって、言ってなかった。
「おはよう。おじいさん、ブランシュさん。」
「ん、おはよう。つーか、昨日は遅かったな。どこまで行ってたんだ?」
ブランシュさんにそう尋ねられて、挙動不審になってしまう。
「あ、いや、あのえーとですね。ははは。」
「何だ?何か言えないような、危険なことでもしたのか?」
訝しげな表情で問われる。
林に行ったことを知れば怒るかもしれない。
あーん。昨日の私のバカバカ!どうしてもっと真剣に、行った後のことを考えなかったのー!
言いよどんでいると、おじいさんが空のお皿を持って立ち上がる。
「じゃあ、わしは仕事に戻るからな。ゆっくりしていけ。」
ブランシュさんと私の頭をひと撫でしてから、家の中へと戻っていった。
あー、待っておじいさん!二人きりにしないでよー。
尚もブランシュさんは黙って、私をじっと見詰めている。
「うー、わかったよー。白状します。」
その視線に耐えられなくなって、しかたなく話し出す。
「実は昨日、街の外れにある林まで行ったんだ。」
「なにっ?お前、危ないから行くなって教えただろ!」
うう、やっぱり怒られた。
「ごめんなさい。ちょっと林の外から見るだけのつもりだったんだけど。」
「中まで入ったんだな。」
「はい。」
はあ、とブランシュさんが大きな溜め息を吐く。
「まあ、無事でよかった。」
「ごめんなさい。でもね、モグラなんていなかったよ?狸さんとアライグマさんはいたけど。」
「お前は、ほんとに。」
ブランシュさんが呆れたように笑う。
「怖い思いしなかったか?」
「うん。ちょっとドキドキしたけど平気だよ!」
訳もわからず追いかけ回されて、ちょっぴり怖かったけれど、つい強がってしまう。
「そうか。まあ、ちゃんと説明してなかった俺も悪いよな。」
そう言ってブランシュさんが真剣な表情をする。
「あの林に住む奴らことをモグラっていうんだ。あいつらが自らそう名乗ってる。この街は猫に優しい、それはわかるな?」
「うん。」
ご飯をくれる人がたくさんいるし、そばに寄るのを嫌がられたことも追い払われたこともない。
「それはこの街の人間たちが信心深いからっていうのがでかいんだ。」
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