第22話 今日は厄日
何とは無しに声のする方に向かって進んでみる。そこには、古いが清潔感のある建物の庭のような場所で遊ぶ十数人の子供たちがいた。
子供たちは各々好きなことしているようで、追いかけっこをしている子達もいれば、木陰で本を読んでいる子、座ってお喋りをしている子達もいる。
「何だろう?学校かな。」
子供の年齢はまちまちで、小さな幼児のような子から、前世の小学校の高学年くらいの子まで様々だ。
木陰で本を読んでいる子は7才くらいの男の子で隣にはお人形遊びをしている2才くらいの女の子がいた。
ぐうーー
「お腹すいたなぁ。」
もしかしたら、何か貰えるかもしれない。そう思い話しかけやすそうな、本を読んでいる茶色の髪の男の子の方へそろりと近付いていく。
「あー!おにいちゃ、ねこたん!」
男の子の隣にいた同じ髪色の小さな女の子が、これまた男の子と同じ色の青い瞳をキラキラさせながら、先に私に気付いて指を差す。
ありがとうね。初見で疑いもせず猫だと気付いてくれて。あと因みにそれ前世のあだ名の1つなんだよー。
「こんにちは!オヴィです。ご飯くれませんか?」
愛想よく話しかけながら、木陰に座る二人のもとへ歩いていく。
男の子は、はーっと大きな溜め息を吐くと本をパタンっと閉じて立ち上がる。
そして、建物の中へと歩き去っていき残される幼児と子猫。
「ねこたん!かわいいね!」
そんなことはお構い無しとばかりに、小さな手で私の体を持ち上げ、自分の膝の上に乗せる。
「あのー。できればご飯をですね、頂きたいのですが…」
尚も撫で続ける女の子に、どうしようかと途方に暮れていると、さっきの男の子が建物から出てきて、こちらへ戻ってくる。
「はい。」
そういうとミルクの入ったお皿を目の前に置いてくれた。
もぞもぞと女の子の膝から降りて、ミルクを夢中で飲み始める。
「うまうま。」
ふぃー。ペロペロと口の周りを舐めながら、お礼を言おうと顔を上げると、既に子供たちは全員いなかった。
うーん。言葉は分からないだろうけど、ちゃんとお礼を言いたいからなー。
どうしようか考えていると、お腹がいっぱいでなんだか眠たくなってきた。
「くあぁ~。」
欠伸まで出てきちゃった。だめだ、取り敢えず寝よう。子猫が睡魔に勝てるわきゃない。
「おやすみなさーい。」
誰にいうともなく、木陰で眠りについた。
目が覚めると辺りはいつの間にか日が暮れ、夜になっていた。
「おーまいがっ!」
飛び起きて建物を見やると、既にどの部屋の明かりも消えていた。
あーあ、寝過ぎちゃったみたい。
ミルクを飲んだお皿もいつのまにやらなくなっていたので、おそらくあの男の子が片付けたのだろう。
一応誰かいないか確かめるために、建物の周辺を彷徨いてみる。
すると昼間見た古いが清潔感のある建物から、少し離れた場所に小さな祭壇の様なものがあるのを見つけた。
「何だろうあれ。すっごいや~。」
小さな祭壇はキラキラとした光に包まれていた。その光は空から降り注いでいるようにも、地面から湧き出ているようにも見えた。
幻想的な光景に思わず時間を忘れて見とれていると、小さな子供の話し声が聞こえた気がした。
…いやいや。こんな夜更けに、更にはこんな街の端で子供の声なんてするはずがない。
「気のせい、気のせい。」
なんだかちょっぴり怖くなる。
「空耳だ、空耳。うんうん。」
さっきの建物からは少し距離があるけど、もしかしたら中にいる子供たちの声だったのかもしれない。
そう自分に言い聞かせ、一旦今から寝床まで戻ろうと、街へと足を向ける。
「こっちだよー。」
「こっちだよー。」
「おいでー。」
「おいでー。」
ひぃっ!?
今度はハッキリと聞こえてしまい、恐る恐る声のする方へと振り返った。
振り返った先には、ふわふわと宙に浮かぶ小さな光の玉がっ!
「ぎゃーー!人魂だーーーっ!」
そこからなりふり構わず全速力で逃げ出し、街へと駆けていく。
「うわーん、今日は厄日だーー!」
ありがとうございました。




