第19話 ユリとロラムの酒飲み配信
「かんぱーい!」
「かんぱーい!」
ロラムさんとユリさんの配信が始まった。
「皆さん飲んでますか? 私たちはもうすでに二杯くらい飲んでますねwww」
「そうだねロラムちゃん、もう準備は完璧だよ!」
もうすでに二人は飲んでいるようだった。
私も冷蔵庫からストゼロを持ってきて飲み始めた。
「今日はですね、雑談配信をやっていくんですけども、ユリさんなんか今日いいことありました?」
「んーと、とくにないかな〜、あっ」
「ん? どうしたんすか、なんかあったんすか?」
「えっと、最近すごくいいことあったんです…ふふ」
「えーー? めっちゃ気になるんですけども」
(コメント欄が流れていく。私は静かに画面を見つめていた)
「なんかあれすか、うまい酒見つけたとかですか?」
「えーと…なんかね…最近隣の人が優しくて…あ、やば、これ言っちゃダメなやつだ!…」
「え! ほんとですか! いいっすね〜」
《隣の人!?》《ユリさん恋してる?》《え、誰!?》
「ち、違いますよ!? そういうんじゃなくて……でも……うん、ちょっとだけ、嬉しかったんです」
私の心臓が跳ねた。
その心臓が少しだけ痛んだ。
なぜなのか私には分からない。
「いいっすね〜恋の波動を感じますよ」
ロラムさんがストゼロをグイっと一気に飲みこんだ。
こころなしか彼女の顔が赤くなった気がした。
ロラムさんの酒に関するありがたい話が続いた後、
ユリさんが小さな声でしゃべりだした。
「私ね…もっといろんな人に見てもらいたいんです。
もっと、誰かの心に届く配信がしたい」
「それは、すごく素敵な目標すね」
《ユリさん、素敵!》 《応援してます!》 《頑張って!》 《私が生きる理由…》
視聴者たちから応援の声が続いた。
(その言葉が胸に刺さった。
私も…何かを届けてみたいと思った。
誰かを救えるような人物になりたい…)
「では!! ユリさんの〜目標達成を願って〜踊ります!!」
「え!?」
ロラムさんが立ち上がって、ふらふらしながら踊り始めた。
コメント欄は大盛り上がりだった。
ロラムさんがふらふらと踊り続け、
コメント欄は《草》《かわいい》《酔ってるw》で埋まっていた。
「ロラムちゃん、ちょっと落ち着いて〜!
あはは、ほんとに酔ってるじゃん!」
ユリさんが笑いながらロラムさんの肩を支える。
その笑顔は、画面越しでも伝わるほど柔らかかった。
「はぁ〜……楽しいね、今日……」
ユリさんがぽつりと呟いた。
さっきまでのテンションとは違う、少しだけ静かな声。
「ねえロラムちゃん、私さ…
もっと頑張りたいんだよね。
もっと、誰かの心に届く配信がしたい」
「うんうん、ユリちゃんはできるよ。
だって、もう届いてるもん」
《届いてるよ!》《いつも元気もらってます》《ユリさん大好き》
コメント欄が一気に温かい言葉で満たされる。
ユリさんは照れたように笑い、
グラスを軽く揺らした。
「……でもね。
ほんとは、もっと近くで……
誰かに見てほしいんです」
その言葉に、胸が強く締めつけられた。
(誰か……?)
ユリさんは、ほんの一瞬だけカメラから視線を外し、
横を向いた。
その横顔が、なぜか寂しそうに見えた。
「……まあ、酔ってるだけです!
はい次〜! ロラムちゃん、なんか話して!」
「え〜? じゃあさ〜……
ユリちゃん、最近隣の人と仲良くしてるって話、もっと聞きたい!」
「ちょ、ちょっとロラムちゃん!?
それは言わないって言ったじゃん!」
《隣の人!?》《やっぱり恋!?》《続けて!》
コメント欄が爆発する。
ユリさんは顔を真っ赤にして、
両手で顔を覆った。
「ち、違うの! ほんとに違うの!
でも……うん……優しい人、なんです」
その瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。
(……私のこと、なのか?)
答えはわからない。
でも、心臓がうるさく鳴っていた。
「はぁ……もう、今日はここまで!
みんな、来てくれてありがとう!
また次の配信で会おうね〜!」
「ばいば〜い!」
画面が暗転し、配信が終了した。
部屋の静けさが戻ってくる。
さっきまでの賑やかさが嘘のようだった。
(……ユリさん)
胸の奥に残った熱が、なかなか消えなかった。
配信が終わって、私は小百合さんにメッセージを送った。
「今夜の配信とても見ていて楽しかったです」
少し経ってから返信が送られてきた。
「ありがとうございます! 見てもらえてとってもうれしいです!」
「私もネットで自分のコンテンツを発信したいと思いました」
「それは最高ですね!」
「どのようなものが必要なのかまた相談させてください」
「はい! 喜んで!!」
小百合さんとのメッセージを終えて、
心地よい酔いの中眠りについた。




