第2話 いつもどおりの通勤
「あの……」
男性専用車両を見つめていると、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、背の低い美少女がこちらを上目遣いで見つめていた。
「なにか?」
私が問い返すと、彼女は困ったように目を泳がせた。
「男性車両、乗らないんですか?」
「……今日はやめときます」
「え?」
一瞬迷ったが、目の前の多くの人を待たせてしまっている以上、
女性ばかりがこちらを見つめている車両に乗り込むことに決めた。
乗り込んだ途端、車両の中に緊張が走った気がした。
「え?」
「……男?」
「なんでこっちに?」
「嘘でしょ……」
「…………」
近くにいた女性は、自分の目に映るものが信じられないような雰囲気を出している。
寸分たがわず後続の女性たちがなだれ込んでくる。
車内の動揺と喧騒が収まらない。
「なんで?」
「どこどこ?」
「ほんとにいる!」
なんとなく居心地が悪い。
まるで仲間外れにされた気分だ。
「静かにしなさい。驚かせてしまうわ」
一人の女性が声を上げることで、少し静かになった。
彼女は私と同じくらいの身長の、黒髪ショートカットでスーツを着た美人だった。
おそらく私と同じ、通勤中の会社員だろう。
「あの……ありがとうございます」
「!! いいのよ」
彼女のおかげでパニックが少し落ち着いたので、当然ながら礼を言ったが、びっくりさせてしまったようだ。
童貞だから距離感を間違えてしまったか……と不安に思った。
目的の駅に着き、降りる。
人が多いので視線も多く集まる。
さっきの女性は私と同じ方向に向かうらしい。
いつもと同じ風景のはずが、今日は違った。
どうやら一人で歩いている男性は私だけらしい。
遠くのほうに見える男たちは、まるで重要人物を守るかのように、
黒いスーツを着た女性たちに囲まれ、一緒に歩いている。
その分、私に集まる視線は相変わらず多いままだ。
ぬぐい切れない不安を抱きながら、高層ビル内にある会社に向かう。
私の会社に着いたが、さっきの女性がすぐ前にいる。
おそらく私と同じ会社に勤めているのだろう。
また声をかけてみる。
「おはようございます。さっきぶりですね」
「! あなたさっきの……なにしにきたの?」
「? 出社ですが」
「出社!?」
その瞬間、周囲の社員たちの視線が一斉にこちらへ向いた。
なにもおかしいことは言ってないはずだが、その反応に私は恐怖を覚えた。
仕事どうしよう……。




