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男女比偏極社会  作者: 綾汰


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第14話 猫カフェデート

「ふむ…」


家に帰ってから、小百合さんの配信者としての活動をネットでチェックする。

彼女は現在、「ユリ」という名前で、配信活動やゲーム、町ブラ企画など、

様々なエンターテインメントをファンの方々に提供しているようだ。


彼女の登録者数は80万人で、配信業界では有名だった。

隣にそんな有名人が住んでいるとは思わなかった。


この世界では配信活動を行っているのはほとんどが女性であり、

男性は指で数えるくらいしかいなかった。


そのような男性がアップしている動画は、

誰かほかの人が彼らを撮ったものであり、

男性自身が撮ったものではなかった。


加えて、男性の「動き」は極めて少なく、

お世辞にも面白いなどとは言えなかった。

しかしながら、それらのチャンネルの登録者は群を抜いて多かった。


「これなら、女性配信者を見たほうがおもしろいな…」


女性配信者たちは男装をしているものが多かった。

配信や動画の内容は前の世界と類似している。


男の声が出せる人の人気は凄まじい。

特に男性の見た目をしたVチューバーは人気だった。


この世界で私のアカウントはないので、作ってみた。

そして、小百合さんのことをチャンネル登録しておいた。


「もうすぐ野々花さんとのデートか…」


動画サイトで数々の投稿者の動画を見ていたら、

野々花さんとのデートまであと二時間ほどになっていた。


支度をして、野々花さんとの待ち合わせ場所に向かった。


彼女との待ち合わせ場所に着くと、

彼女はもうすでにそこにいた。


「こんにちは、野々花さん」


「はい! こんにちは!」


彼女と待ち合わせ場所で会った瞬間、思わず目を引かれた。


ボディラインにやさしく沿うリブニットのロングワンピースが、

彼女の立ち姿をすっと縦に引き伸ばして見せている。


裾に向かってわずかに広がるシルエットが歩くたびに揺れて、

どこか上品で落ち着いた雰囲気をまとっていた。


羽織っているのはコンパクトなショート丈のアウター。

ウエストの位置が自然と高く見えて、全体がすっきりとまとまっている。


シンプルなのに、妙に印象に残る。

そんな“ちゃんとおしゃれ”な一枚だった。


「おしゃれな服ですね。野々花さんによく似合ってます」


「ほんとですか? 嬉しいです…」


彼女は照れて、顔を赤くした。

きれいな女性をきれいと褒めるのは当然だ。たぶん。


「ではいきましょうか!」


「はい」


彼女についていくと、かわいい看板がついたカフェの前に着いた。


「楽しみですね」


「はい」


彼女とともに入る。


「いらっしゃいませー…っ!」


男が来るのは珍しいのだろう。

店員は私を見て固まっている。


「二名で…」


「は、はい! わかりました!」


店内は落ち着いた雰囲気で、

猫と遊ぶためのおもちゃや、猫用のおやつが置いてあった。


キャットタワーやふかふかなカーペットの上でくつろいでいる猫がたくさんいる。


「こちらへどうぞ」


案内されたテーブルに向かい、彼女とともに椅子に座る。


「猫ちゃんかわいいですね!」


「そうですね。かわいいです」


野々花さんは近くにあるソファに向かい、

猫じゃらしを使って猫たちと遊ぼうとする。


「ニャーニャー。ねこさんこっちですよ!」


「にゃー」


「にゃー」


彼女のもとへ猫たちが集い、遊んでいる。

そのような光景に癒され、自然と笑顔になる。


「霧崎さん! こっちきてください!」


彼女のもとに行く。

私も猫と同じで彼女のもとに吸い寄せられる。


彼女から別の猫じゃらしをもらい、猫と遊ぶ。

猫たちが私のもとに集まってきて、猫じゃらしに釘付けになる。


「にゃー」


「にゃっ」


「ニャー」


ものすごくかわいい。

ここが複数ある天国のうちの一つだろう。


野々花さんの膝の上に一匹の猫が乗る。

彼女はその猫を見て、頬を緩ませながら、なでなでする。


「ニャー」


「にゃー」


かわいらしい様子に目が奪われる。


「霧崎さんも撫でますか?」


彼女がこちらを見て尋ねてくる。


「もちろんです」


彼女の膝の上にいる猫をなでる。

愛らしい。


途中、彼女の手が当たったが、あまり気にしないことにした。


店員さんがこちらにやってきた。


「ご注文はお決まりですか?」


「私はドライカレーとコーヒーで」


「わ、私は日替わりパンで」


「かしこまりました」


野々花さんの横顔は赤かった。


猫と遊んでいると注文したものが運ばれてきた。

椅子に座って、野々花さんと食べる。


「どうですか?」


「とてもおいしいです」


「それはよかったです!」


そのまま食べ進めていると――


「このパン食べてみますか?」


野々花さんがおいしそうなパンを見せてくる。


「いいんですか?」


「はい!」


彼女からパンを受け取り、一口もらう。


全部食べようと思ったが、

彼女も食べたそうにしていたので、彼女に渡した。


「どうぞ」


「え?! いいんですか?」


「もちろんです」


「……」


彼女はおいしそうにそのパンを食べていた。


カレーを食べ終えたら、また猫のもとに向かった。


ソファに座り、そばにいる猫と遊ぶ。

おやつをあげるととてもおいしそうに食いついてくれる。


キャットタワーでは野々花さんが

ふてぶてしい様子の猫と遊んでいる。

そんな猫もまんざらではなさそうだ。

そこがまた良い。


猫のかわいらしい様子も、

野々花さんの素敵な表情も楽しんで、会計を済ませた。


「楽しかったですね!」


「はい!」


「また“ 一緒に ”来ましょうね!」


「はい。また」


彼女とは店の前で別れるつもりだったが、

彼女は私を家まで送っていくつもりらしい。


「ねこちゃんたちかわいかったですね!」


「はい。また会いたいですね」


「霧崎さんは明日の休み何をされるんですか?」


「焼肉屋に行く予定です」


「そうなんですね! 私も、焼肉大好きです!」


「そうなんですね。私もです」


「だ、だれかと一緒に行くんですか?」


彼女の雰囲気が少し変わった。

嘘をつくほうがまずいだろう。


「知り合いと行きます」


「じょ、女性だったり?」


「はい…」


ガーンという声が彼女から聞こえてきそうだった。


「そうなんですね…霧崎さんモテそうですもんね」


「そうですか?」


「そうですよ!!」


「そうですか…」


そんなこんなで私が住んでいるアパートの前に着く。


「今日の霧崎さんとのデート、とても楽しかったです!」


「そうですね。とても楽しかったです」


「またどこかで会いませんか?」


「……」


彼女に上目遣いで尋ねられて、ドキッとした。


「もちろんです。またいつでも」


彼女と別れ、彼女に手を振る。

彼女もこちらを見て、手を振ってくれる。

また会いたい。


アパートのエレベーターを上がると、小百合さんがいた。

また街並みを眺めている。


「こんにちは」


「こ、こんにちは」


彼女は緊張しているようだった。


「さ、さっきの人は彼女さんですか?」


「いえ、知り合いです」


「そうなんですね…」


彼女はほっとしている。


「そういえば、小百合さんの動画見ましたよ」


「ほんとですか!」


「はい。とても面白かったですよ」


「うれしいです! ありがとうございます!」


「いえいえ」


彼女は喜びを抑えきれないような表情をしている。


「では…」


「はい…」


扉を開けて部屋に入る。

今日はとてもいい一日になった。


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