98「姉さんとノイレンが行動派なら私は頭脳派よ。」
淹れたての熱いお茶。寒いこの時期にはありがたい。東方のお茶を淹れた急須と湯呑をお盆に載せてヤァヤがナディアの執務室へ運んできた。
中に入るとまず部屋の主の元へ。次いでサフィアとノイレンに注いだ。
「みなさんどうぞ、温かいうちに飲んでください。」
ヤァヤはにっこり微笑むと軽く頭を下げて部屋を出て行った。ナディアは執務席に座したまま彼女が出ていくのを見送ってから口を開いた。
「で、お前ら何の用があってここにいる?」
サフィアとノイレンは執務机の前にある応接卓のソファに腰掛けている。ナディアの声音は普通だが表情は険しい。見たこともない緑色のお茶におっかなびっくりしているノイレンをジロリと見たあとサフィアにその目を向けた。サフィアは返事もせず両手で湯呑みを持ち上げて音を立てないようにお茶を啜っていた。
「お茶を飲みたいだけなら他所で飲め。」
サフィアは聞こえていないふりをしてゆっくりと東方のお茶を楽しみ、静かに湯呑みを卓に置いた。
「姉さんに話があるの。」
サフィアはおもむろに話しだした。
「黒髪との勝負ならお前の言うとおり引き分けで構わんと言ったろう、納得はしてないがな。これ以上話すことなどない。分かったらさっさとシェヒルへ帰れ。」
「いいえ、帰らないわ。ここで帰ったら私の計画が御破算になっちゃうもの。」
「計画だと?」
ナディアは眉をひそめた。
「そうよ。今回父さんを言いくるめて私一人で来たのはそれが目的だもの。」
「なるほどな。父さんがいれば私を庇うからな。それでは私をここから追い出せない。シャリーの入れ知恵か、あの女の考えそうなことだ。」
「いいえ母さんは関係ないし、私は姉さんを追い出すつもりもない。むしろ私の計画に協力してもらいたいの。だって私の計画を実行すれば間違いなく父さんを激怒させるから。」
「それで私の弱みを握ろうとしたってわけか。しかしお前のやることなら父さんは怒りはしないだろう。」
サフィアとナディアが問答を繰り返しているところにノイレンが口を挟んだ。
「サフィアさあ、前にもそんなこと言ってたけど、いったい何を計画してんだ?」
「あらあなたにはアデナに向かう途中で話したじゃない。」
ノイレンはまったく見当が付かないという顔をしている。
「そうだっけ?」
「まさか覚えてないの? 寒空の下、野宿でハイになった私が寝る間も惜しんであれだけ語ったのに。」
「あは、あはは・・・」
ノイレンは冷や汗が吹き出してきた。
「酷い、ノイレン。」
サフィアはタツノオトシゴのように口を尖らせた。
「サフィア、お前が何を考えているか知らんが、私は乗っ取りを諦めん。父さんには悪いが、シャリーに一泡吹かせないと気が済まないんでな。」
「それなら任せて。私の計画を実行すれば母さんだって驚いて腰を抜かすわよ。」
「お前が驚かせるのを見ててもつまらん、興味はない。この話は終わりだ。出ていけ。」
ナディアは少し冷めてしまったお茶を一気に飲み干した。ノイレンはどうとりなしたものかと、二人の顔を交互に見つめているだけでうまい言葉が見つからない。
「とりあえず最後まで聞いて頂戴。きっと姉さんも気に入るから。ノイレン、あなたも聞くのよ。この計画にはノイレンも必要なんだから。」
「へっ? なんでわたしが?」
「私の相棒だからよ。」
「サフィア、時間の無駄だ。これ以上居座るなら私がこの部屋を出ていく。」
ナディアはどうでもいいというような態度でハンガーにかけてあったマントを手に取り、部屋を出ていこうとした。
「商会で隊商を抱えるの! それも三隊!」
ナディアは突拍子もないサフィアの言に言葉を失った。目が点になるどころではない。驚きすぎて手に持ったマントを落としそうになった。
唖然とした表情でサフィアを見つめるナディアに代わってノイレンが尋ねた。
「隊商て何?」
「隊商てのは東方などの遠方と交易を行う大行商隊のことよ。商会で扱っている外国の品々はそこから仕入れてるの。でもねその隊商を自前で運営できたら、今よりも安く仕入れられるようになって、その分利益が上がるってわけ。」
「はあ、なるほど。」
商売っ気のないノイレンはそこまで聞いても、どこが魅力的なのかよくわからない。そこにようやく気を取り直したナディアが横槍を入れた。
「何を馬鹿なことを言っているんだ。隊商を抱えるだと? それも三隊も。お前それにかかる費用がどれだけになるか分かってて言ってるのか?!」
「分かってるわよ。だから抱えるといっても丸ごとじゃないわ。隊商の維持に必要な費用の五割から多くても六割五分を商会が出資するの。その代わり隊商からは仕入れた品を今よりも安く卸してもらうってわけ。それでね、」
そこまで言いかけてナディアに遮られた。
「維持費の五割以上を出す? もう一度聞くぞ、お前隊商の維持にどれだけかかるか分かっているのか。そんなのは普通ギルドがやることなんだぞ。いくら商会が大きいとはいえ、ヘタすれば他の支部も共倒れになりかねん。」
「もちろん。何の下調べもなしにこんなこと言わないわ。ギルドを通さなければその分商会の取り分が増えるでしょ。そこが狙いよ。」
ナディアは執務机を回り込んでサフィアの目の前までやって来た。
「どういう調べ方をしたんだ? いやどう調べればそんな突拍子もない考えに行きつく?」
「失礼ね。いくら姉さんでも今の言葉取り消してもらいたいわ。姉さんとノイレンが行動派なら私は頭脳派よ。東洋ではなんと言ったかしら。絵に描いた餅?」
「その中途半端な東方かぶれはやめろ。」
「あ~、姉さんも酷いんだ。」
サフィアはまた口を尖らせた。
「父さんが怒るというのも納得だし、シャリーが腰を抜かすってのも頷ける。まさかお前がそんなふざけたことをするために来たとはな。」
ナディアは世話が焼けるという目を妹に向けた。
「ふふっ、姉さんも甘いわね。ここからが私の計画の大事なところ。」
「もういい、これ以上聞くと頭がおかしくなりそうだ。」
「そりゃあ、ここまでなら私だって頭がおかしいと思うわよ。でもねそこに姉さんとノイレンが絡むと実現可能なの!」
サフィアは興奮してきたのか少し頬が上気している。さっぱり話についていけないノイレンは素朴な目をサフィアに向けた。
「どゆこと?」
サフィアは鼻を膨らませて断言した。
「この計画の要はあなたたちよ。」
ノイレンは首を傾げた。ナディアは苦虫を噛み潰したように眉をしかめて妹を見た。そんな二人に向かってサフィアは真剣なまなざしで語りだした。
「最初にこれを考えた時は私もさすがに無理だと思ったわ。商会がギルドと同じ事をしようなんてどうかしてる。でもどうしても諦められなかった。だってゆくゆくは私と姉さんが商会の代表として運営していかなければならないんだもの。そのためには商会をもっと繁盛させる必要がある。それには父さんたちと同じことをやっているだけではダメ。新しいことを始めないと。だからどうすれば利益が出せるか何度も考えたわ。そこで行き着いたのが姉さんともう一人、私が相棒と認められる人物と3人で協力し合うこと。それができればこの計画は上手くいく。」
「その最後の一人がこの黒髪だというのか?」
ナディアは首を傾げているノイレンを一瞥した。
「そう。ノイレンに会うまで何人に会ったかしら。でも全然ピンと来なくて。それでだいぶ時間が経っちゃったけど、ようやく見つけたの。だから父さんに反対されないよう言いくるめて出てきたってわけ。」
ナディアはため息のように短くふっと息を吐くと妹の目を見据えた。
「たしかに、この商会を今より大きくしようとしたら新しいことを始めなければならん。だがお前のその計画で、どうやって利益を出すというのだ?」
サフィアはにまっと笑んだ。
「聞いて。維持費を半分以上出す代わりに卸値を安くさせるだけじゃ商会の儲けはないも同然。むしろ赤字。」
「そのとおりだ。だからどうするつもりなんだ?」
「そこでまず姉さんの出番なのよ。姉さんにはその人脈と信用、口の巧さで交渉してもらう。」
サフィアは姉の目を見て反応を窺った。
「交渉だと?」
「そう。各地の上流階級相手の商人には今までより安く卸すけど、顧客への販売価格は維持してもらう。そうすれば利ざやが出るでしょ。それを商会にキックバックしてもらうのよ。もちろん全額とは言わないわ。それじゃ商人たちにとって旨味がないものね。何割戻させるかは姉さんの交渉次第。」
「そんな手間のかかることをするくらいなら商会からの卸値を下げなければいいだろう。どうせ商人たちには分からんのだから。」
「いいえ姉さん。利ざやの一部をキックバック制にすれば商人たちは今より儲かるようになる。それを”売り”にすれば取引先を増やせるわよ。今は他者と取引してる人たちが商会に鞍替えしたくなるよう仕向けるの。今より儲けられるとなれば必ず話に乗ってくるわ。そうすれば商会の儲けも増えるってわけ。」
サフィアはどうだと言わんばかりに自慢げな笑顔で姉を見た。
「なるほど、取引先を増やせばその分利益は上がるな。だがしかし、それでも隊商にかけた経費を全額回収するのは難しいぞ。足が出る分はどうするんだ?」
ナディアは少し興味が湧いてきたらしい。今まで磨いてきた商才で妹の計画による収支を計算し始めた。
「次に姉さんの人脈を使って中・下流(階級)への販路開拓よ。今まで高価で手が出せなかった中流以下の人たちには、安く仕入れた分価格を抑えて提供する。自分でも奮発すれば買えると思わせられればこっちのもの。そういう人たちは貯金や金策をして買ってくれる。まあ、こちらは計上できるまで多少時間がかかるけどしかたないわ。」
「ふむ。損して得取れというからな。仕入れから販売まで多少時間がかかっても売れれば問題はない。」
先代の支部長から商売人としてのイロハを叩き込まれているナディアは自分でも気づかぬうちにその気になっていた。
「そして最後はノイレンの出番。ノイレンには客寄せパンダをやってもらう。」
「パン? なんだそれ?」
「よくわからないけど東方ではお客さんの注目を集める人のことをそう言うんですって。ノイレンは大勢の注目を集めるのが得意なんだから、市場とか庶民相手の店頭でダンスしてとにかくお客を集めて頂戴。大勢集まったら私が叩き売りするわ。もちろんそれに合わせた安い小物なんかを隊商には大量に仕入れてもらってね。それらも合わせれば維持費は回収できるわ。」
サフィアは一気にここまで話して鼻高々になった。実に満足そうな笑みを浮かべている。
「なかなか考えたな。そこまで含めればなんとかなりそうな感じもするが、いかんせん隊商の往復に9ヵ月はかかる。しかも一度に運べる荷量には限りがある。どうみても庶民相手に利益を出すほどの量を用意するのは難しい。それでは計画倒れだ。さてどうするか。」
ナディアはいつの間にか妹のアイデアの欠点を補完すべく考えを巡らし始めていた。
「大丈夫! そこで隊商を三隊抱えるってとこに行きつくのよ。一隊ずつ四ヵ月毎に出発させるの。そうすると一番隊が戻ってきてからは品物が定期的に届くようになる。しかもそれって、こちらが欲しい品物が年に三回届くだけじゃなくて、現地の人々が欲しい物も年に三回届けられるってわけ。それがどういうことか姉さんならわかるでしょ。」
「ああもちろんだ。それは互いにとって魅力的だな。今までは隊商頼みでいつ届くか分からなかった。複数の隊商から仕入れようにも、よそに取られるリスクもある。それが確実に且つ定期的にやり取りできるとなれば市場の独占も見えてくるな。」
ナディアの中で具体的なイメージが描かれた。
「そうすればますます商会から購入したいってなるでしょ。どう? 気に入ってくれた姉さん?」
サフィアはナディアの顔を覗き込んだ。
「ああ、実に面白い。だがリスクも非常に高い。堅実的な父さんとシャリーにはできない判断だな。」
ナディアはすっかり乗り気になった。父親のカーツォはともかく、シャリーにはできないことをやってのけることで臍を噛ませられると思うと面白くてたまらない。そこに首を傾げたままのノイレンが口を挟んだ。
「ちょっといい? 客集めのためにダンスするのはいいんだけど、そんとき貰ったチップは半分サフィアに渡すのか?」
「なに言ってるの、チップは貰いません! 大道芸じゃないんだから。」
「ええーっ?! そんならわたしやらない。つまんねえもん。」
「あなたねえ、集まったお客さんたちには商会の商品を買ってもらうのよ。ただでさえ予算の少ない庶民が相手なんだからチップなんかより商品に少しでも多くお金を落としてもらわなくてどうするの。それにあなたにはお給金を出すんだからそれでいいじゃない。」
「やだね、ダンスを見てくれた人たちから直接貰えないんじゃ面白くねえ。そんなことするくらいなら隊商てやつの用心棒してるほうが面白そうだ。」
それを聞いてナディアがフっと口角を上げた。
「それもいいかもしれんな。隊商に付いて東方まで行けば、道中と現地、どこでも客寄せパンダをやらせられる。儲けたチップを隊商の経費に充てればその分商会の懐は痛みも和らぐ。」
「なんだそれ!?」
ノイレンは目を剥いた。逆にサフィアはノイレンのようにニカっと笑った。
「あらそれはいいわね。姉さんいいこと言う。任せたわよノイレン。」
「任せたじゃねえよ!」
ノイレンは余計な藪をつついてしまったようで納得がいかない。反対にサフィアはにっこり笑顔になった。ナディアもその側で微笑んでいる。ノイレンはぷうと頬をリスのように膨らませた。
「そうと決まれば早速商会と契約してくれる隊商に当たりをつけないとな。」
ナディアは顎に手を当てて心当たりを探るように目を伏せた。
「姉さん誰か知らない?」
「一つはアテがある。いつも商会と取引してくれているアミラン隊だ。彼は信用できる。商会が費用の半分以上を出資するといえば喜んで引き受けてくれるだろう。残るは二隊だな。よし、ツテを当たってみよう。」
「任せたわ姉さん。よろしくね。」
「ああ、任せろ。お前は父さんを納得させる方法を考えていろ。」
ナディアはマントを掴み直すと部屋から出ていった。
「ふう。これでようやく計画を実行に移せるわ。やった!」
サフィアはソファに腰を下ろすと、すっかり冷めてしまったお茶で喉を潤した。その様子をノイレンは頬を膨らませたまま見下ろしている。
「なあに? さっきからフグになったままで。言いたいことがあるなら言ってごらんなさい。」
立ったままのノイレンをサフィアは腰掛けたまま頭だけ動かして見上げた。
「サフィアはこのままキニロサにいるつもりなのか?」
「そうよ。これからは私もここを拠点に活動するわ。ま、本部のあるシェヒルには時々行くことになるだろうけど。それがなにか?」
「わたしが請け負った仕事はあんたの旅の護衛だ。だからあんたを無事シェヒルへ送り届けるまでが仕事だ。それを途中で放り出すことはできない。ロンチャウに怒られちまう。」
「それなら大丈夫安心して。依頼主の私からロンチャウにはちゃんと言っておくから。あなたに不利になるようなことはしないわ。それにこれからは私の相棒としてこの商会を一緒に盛り立てていくんだから、あなたもこの街に引越しするのよ。」
「は? 何言ってんだ。悪いけどサフィア、わたしは商人じゃねえし、パンダでもねえ。そりゃあんたの力にはなりたいとは思うけど。」
サフィアはすくっと立ち上がってノイレンに鼻がくっつくほど顔を近づけた。
「あなたは私の相棒で、友達よ。あなたは違うの?」
サフィアはノイレンの目を穴が開くほどにじっと見つめてきた。
「違くない。サフィアはわたしの初めての友達だ。」
ノイレンもサフィアの目をしっかりと見つめ返して答えた。
「だったら私に力を貸して。あなたが必要なの。さっき言ったように隊商の用心棒するといいわ。ここから東方の拠点都市カンタラまで4千キロよ。途中にはそりゃもうたくさんの町や村があるんだから。これからはそれらのところで好きなだけ踊れるわよ。」
4千キロメートルというのがどのくらい遠いのかノイレンにはピンとこなかったが、「あなたが必要なの」という言葉に心を鷲掴みにされた。心臓がどくどくと脈打つのを感じた。それに加えて目的地までたくさんの町や村があると聞いて心が揺らいだ。どこの町にも教会があるように酒場も広場も必ずある。つまり飽きるほど踊れるってわけだ。隊商に出資してどうのという話には魅力を感じないけれど、この二つにはめちゃくちゃ魅かれた。
「なあにその顔。うふふ、あなた本当すぐに顔に出るわね。」
サフィアはノイレンの顔を覗き込んでにんまりした。ノイレンはそれを否定するかのようにまたぷうと頬をリスのように膨らませてごまかした。
「とにかく一度シェヒルに帰ろう。あんたの首に縄を付けてでも引っ張っていくぜ。」
ノイレンは上から押しこむようにサフィアの顔にずいっと顔を近づけてそう宣言した。サフィアはそそそっとあとずさりしてノイレンと距離を取ってから反論した。
「いやよ。私は帰らない。今帰ったら怒った父さんに軟禁されてしまうもの。それだけこの計画は父さんたちにとっては青天の霹靂と寝耳に水が同時に襲ってくるようなものなの。」
「青天、寝耳? なんだそれ。よくわかんないけど、そんなの知るか。」
ノイレンはサフィアにずずずっと迫って凄んだ。サフィアはまたまたそそそっと距離をとった。
「わかったわ。父さんとロンチャウには手紙を書くから、ノイレンはそれを持って行って頂戴。それなら私の使いとしての使命があるからロンチャウの仕事をおろそかにせずに済むでしょ。」
ノイレンはしばし考えた。頬を少し膨らませて目線を左下に向けている。サフィアはその様子をじぃっと見つめてノイレンの反応を窺った。
「わかったよ。ちゃんと筋が通せるならそれでもいい。わたしにとってサフィアは初めての友達ってやつだけど、師匠やロンチャウとの約束を破るわけにはいかない。」
サフィアは口をお椀型に丸めてにっこり微笑んだ。
「あなたを見てると飽きないわ。まっすぐなのか頑固なのか、純真なのかスレてるのか、白黒綯い交ぜで、ほんと面白い相棒よ。」
「なんだそれ?」
「うふふ、自分じゃよくわからないわよね。手紙はすぐに書くから。少し時間を頂戴。」
次回予告
「あなたが必要なの」という言葉に心を揺り動かされたノイレン。サフィアの使いとして姉妹からの手紙と監査の書類を届けにシェヒルに戻ってきた。各所に手紙を渡したあとノイレンは彼女にとって心のよりどころであるあの場所へ足を向けた。今回の帰郷でノイレンはそれまで自分を育んでくれた全てのものに別れを告げるのだった。ただ一人シャルキーを除いて。
君は彼女の生き様を見届けられるか。
次回第九十九話「ただいま、」




