103「かわいい。」
ノイレンがキニロサに移ってきてから三ヵ月が過ぎ、その間にノイレンは十八歳になっていた。相変わらず自分の誕生日はスルーしている。
木々の碧さが空の蒼さと濃く競演している夏。早朝はまだ涼しさもあるが、日が高くなるにつれ黙っていても暑さを感じる。
カーツォ商会キニロサ支部。ここには会長室もあるのだが、なぜかサフィアは支部長室内に新たに机を設置してそこで執務していた。応接卓を挟んで姉のナディアと向かい合う形に座っている。
支部長と会長代理の間にある応接卓のソファに座って、東方の緑色のお茶をのんびり啜っているノイレンにサフィアはしつこく同じことを尋ねていた。
「旅の準備はできてるの? 出発は二週間後よね?」
カーツォ姉妹に左右からその視線を浴びているノイレンはのほほんと答えた。
「何度もしつこいな。終わってるって前にも言ったじゃん。」
緑色のお茶にもすっかり慣れたノイレンは湯呑みを持つ仕種も板についてきた。
「あのね、今度の旅は監査のときのように数日で着くような簡単なものじゃないの。東方の拠点都市カンタラまで四ヵ月かかるんだからね。そこで半月から一ヵ月くらい滞在するんだから、キニロサに戻ってくるのは早くても九ヵ月先なのよ。つまり来年の三月か四月になるわけ。暑いところもあれば寒いところもある。その間の荷物なんだからそんな簡単に準備できるわけないじゃないの。だから口を酸っぱくして言ってるのよ。」
サフィアは老婆心からしつこく訊いているのだが、当のノイレンは全然気にしていない。
「じゃあ訊くけど、行くのがもしサフィアだったら何をどれだけ持っていくってんだ?」
ノイレンは何度も確認されて辟易していた。
「まず着替えでしょ。往復だけで八ヵ月もあるんだから、夏物、冬物合わせても最低十着くらい持ってかないと心配よ。」
「何すんだそんなに。服なんて一着あればいいじゃん。寒けりゃマントを羽織りゃいいこった。」
「何言ってるの。それが汚れたらどうするの? 洗濯してる間裸でいる気?」
「そんなら着替えで一着持ってけば十分じゃん。」
ノイレンはいたって真顔だ。
「あのね、あなたも年頃なんだからもう少しオシャレに気を使いなさい。」
「へっ、用心棒が着飾ってどうすんだよ。」
「そういう意味じゃないわよ。」
二人が不毛な言い合いを繰り返しているとナディアが口を挟んできた。
「サフィア、黒髪にそんなこと言っても無駄だぞ。コイツは駄洒落は言えても、洒落っ気はまるっきりだからな。よくこんなにガサツに育ったものだ。」
ノイレンはぷうと頬をリスのように膨らませてナディアに視線を向けた。
「ほら見ろ。なにかと言えばすぐフグになる。」
ナディアは面白そうにうっすらと笑みを浮かべてノイレンを眺めた。
「誰がフグだ。中庭に出ろ。またこてんぱんにしてやる。」
「それは丁度いい。私も体を動かしたいと思っていたところだ。出発したら帰ってくるまでお預けを喰らうからな、今のうちに仕留めてやる。」
ナディアは立ち上がって、うしろにあるハンガーに掛けてあった二本の剣に手をかけた。
「ちょっと二人ともやめなさい。」
サフィアが両手でバンと机を叩いて立ち上がった。
「止めんなよサフィア。」
「そうだサフィア。黒髪を仕留めるのは私が自分に課した命題だ。たとえお前の相棒といえどやめたりせん。」
「そんなこと言って、姉さん全然勝てないじゃない。何ヵ月同じこと繰り返す気?」
サフィアは腕組みをすると半目で二人を睨んだ。
「サフィアお前、いくら姉妹だからといって、言っていいことといけないことの区別くらい付けろ。」
さすがにナディアもふくれた。
「あはは、ナディアもフグになってんじゃんか!」
二人に挟まれているノイレンは他人事のように笑った。
「黒髪貴様、今すぐぶった斬ってやる。」
ナディアはダガーを抜くとノイレンを追いかけ始めた。ノイレンはひらりひらりと軽やかなステップで支部長室の中を逃げ回った。
「いい加減にしなさい! この剣術バカコンビ!」
とうとうサフィアが怒鳴った。
「誰がコンビだ!」「ナディアは相棒じゃねえ!」
ナディアとノイレンは即サフィアの言を否定した。サフィアは呆れて首をガクンと折った。
二週間後。ノイレンがアミラン隊について東方へ旅立つ日が来た。
隊商の集合場所へカーツォ姉妹が揃って見送りに来た。
「気を付けてねノイレン。あなた知らない場所へ行くとすごいはしゃぐから心配だわ。」
「大丈夫だって。わたしだっていつまでも子供じゃないんだから。」
「そんなこと言って、珍しいもの見たらキョロキョロしまくるくせに。」
「あはは・・・」
図星のノイレンは笑ってごまかした。
「ところでその袋何?」
ノイレンの馬さんの鞍に大きな袋が一つ括り付けてある。
「ああこれ? ダンス衣装だよ。やっぱダンス衣装は三着くらいないとさ。」
ノイレンはさも当然とばかりに笑顔で答えた。
「普段着には全く気を使わないくせに、なんでダンス衣装だけは気にすんのよ。」
「当たり前だろ。ダンスはお客さんに見せるもんなんだから、汚いの着るわけにいかないじゃん。」
「あなたねえ、何でそれが自分のお洒落に向けられないのよ。」
サフィアが呆れて口をとがらせるとナディアが声をかけてきた。
「黒髪、無事に戻ってこい。お前を倒すのは私だからな。ライラはもちろん、ほかの誰にもやられるんじゃないぞ。」
「へっ、わたしがいない間にもっと腕を磨いておくんだな。楽しみにしてるぜ。」
ナディアとノイレンは互いに相手の目をまっすぐに見据えて口角を上げた。なんだかんだと二人は剣士として通じるものがあるらしい。そこに名前を呼ばれて気になったライラがやってきた。
「私のこと呼んだ?」
「ライラ、道中ノイレンを頼んだ。しっかり指導してやってくれ。」
ナディアの口ぶりはまるでノイレンの保護者みたいだ。
「任せて。私ノイレンよりお姉さんなんだから。」
ライラはドヤ顔でにっこり微笑んだ。その言葉にノイレンは驚いた。
「まじ? わたしより年上なの? 全然そう見えないじゃん。」
「こう見えてもライラは私よりも”上”だ。」
ナディアは自分が年下だというところをさりげなく強調して教えた。
「ふふん、実は私は二十六歳なの。ナディアより一つ、ノイレンより六つもお姉さんなの。」
ライラは鼻を鳴らし両手を腰に当てて自慢した。するとノイレンは申し訳なさそうにボソっと呟いた。
「ごめん、わたしこないだ十八になったばっかだ。八つも違う。」
「えっ?!」「ウソ!?」「え?」
意外過ぎる告白にナディア、サフィア、ライラの三人は声を揃えてしまった。
「黒髪お前ウソは良くないぞ。どう見たって二十歳は過ぎてるだろう。まだ十代だなんてサバ読みすぎだ。」
「私もてっきり同い年だと思ってた。」
「私、人を見る目には自信あったのに・・・」
三人は口々にノイレンがサバを読んでいると決めつけた発言を重ねた。
「わ、悪かったな、どうせ老けてるよ。」
ノイレンはぷうと頬をリスのように膨らませた。
「それ老けてるじゃなくて、大人びてるっていうの。」
ライラがさりげなくフォローしたがノイレンは半目になるだけだった。
「それ前にも言われた。なんか知らんけどすげー腹立つ。」
ノイレンの頬がさらに膨らんだ。
「そうやってすぐフグになるところはまだ十八のガキだな。」
すかさずナディアがフォローにならないことをわざと口にした。
「なんだと、やるか?!」
ノイレンは剣に手を伸ばし、膝と腰を軽く曲げて身構えた。その彼女の肩にサフィアがその薬指の長い手をぽんと置いた。
「よっく分かったわ。あなた本当に私より年下だったのね。」
「どういう意味だよ?」
ノイレンはまた頬を膨らませてサフィアに視線を移した。
「ま、いいわ。相棒に年齢は関係ないもの。しっかり務めを果たしてくるのよ。」
「言われなくてもちゃんとやるさ。ガキ扱いすんな。」
ノイレンが反論するとライラは手を伸ばしてノイレンの頭を撫でた。
「よしよし、お姉さんが面倒見てあげるの。」
「なでなですんな!」
ノイレンは頭を振ってライラの手を振りほどくと半目で彼女を睨んだ。
「かわいい。」
ライラは小声でぼそっと呟いた。
かくしてノイレンは旅に出た。初めてこの国を出て外国に行く。国内でさえ物珍しくて多くの人に覚えられるほど"お上りさん"になるやつが、外国で一体どれだけの醜態を晒すのか、目の前で見てきたサフィアは気掛かりでならなかった。
何台も連なるラバ車の列の中ほどにノイレンはいる。相棒の馬さんは足取りも軽くポクポクと歩みを進めた。その周りで三匹のわんこたちが尻尾を振っている。
「わんこたちかわいいの。」
足元をちょろちょろしているノイレンのわんこたちが微笑ましくて、並んで馬を歩ませているライラはにこにこしていた。
「だろ。それにこいつらけっこう頭いいんだぜ。わたしらの役に立ってくれるよ。」
「それは嬉しい。護衛が増えたの。」
ライラがわんこたちに微笑むと、わんこたちは揃って吠えた。
「わおんっ!」
四ヵ月後、アミラン隊一行は無事に東方の交易拠点都市カンタラに着いた。定間隔で塔が聳えている、見上げるほど背の高い城壁にぐるりと囲まれた大都市だ。
ノイレンのビギナーズラックのおかげだろうか、往きは何事もなく四千キロの道のりを順調に過ごすことができた。あまりにも順調すぎてアミランは「帰りが怖い」と漏らしたとか。
道中ノイレンはあまりにも平穏すぎて退屈していた。もちろん途中隊商が足を寄せた街や村でダンスを披露してはお小遣いを稼いだし、珍しいお菓子も腹いっぱい食べることができた。が、やることと言えばそれだけで、剣士としての腕の見せ所は一度もなかったのが不満だった。
「もっとこう、ちょくちょく盗賊とかに襲われんのかと思ってた。だって”いいもの”いっぱい積んでんだろ。」
ノイレンは野営しているときライラに訊いたことがある。狙われて当然の高価な積み荷だらけのラバ車が何台も連なって旅をしているのだ、よからぬ奴らが目をつけてきてもおかしくはない。
「そうなの。時々襲われる。だから今回は珍しい。私もこんなの初めてなの。」
ノイレンと並んで焚火の前に座っているライラは、何事も起こらずに済んでいることを素直に喜び、にこやかな笑顔で答えた。
「一度くらい襲ってこないかな。これじゃ腕がなまるぜ。」
「ノイレン! そんなこと冗談でも言っちゃいけないの。無事が一番なの。謝んなさい。」
ノイレンは冗談のつもりだったが、普段は温厚でのほほんとしているライラが珍しく眉を吊り上げて怒った。
「ごめん。わたしが悪かった。」
「わかればよし。ノイレン素直なの。いい子いい子。」
ライラは手を伸ばすとノイレンのあたまをなでなでした。
「なでなですんな!」
ノイレンはライラの手を振りほどいて立ち上がり、頬をぷうとリスのように膨らませた。
「かわいい。」
ライラはまた小声で呟いた。
カンタラの城門の前でアミランは門番と何やら親しげに話をしている。
「おうアミラン、今年も来おったな。ガハハ。」
「おう、来てやったぞ。わしがおらんで寂しかったかタイラスよ。」
「ほざけ、貴様がおらんおかげで穏やかに過ごせたわい。」
「そうか、ならばせいぜい引っ掻き回してやるとするか。」
「やれるもんならやってみろ。捕縛してやる。」
隊長のアミランと門番長のタイラスのやりとりを聞いてノイレンはライラにこそっと尋ねた。
「ね、ライラ。アミランていつもああなの?」
ライラは無言でうんうんと頷いた。
「ところでタイラスよ、うしろにいるあの青年は誰だ? 若い頃の貴様に似ておるな。」
「おお、あいつか、」
タイラスはそう言うと、その青年に声をかけ呼び寄せた。
「コイツはわしの倅だ。この九月からここで働いておる。」
タイラスは倅と紹介した青年の背中をバンバンと叩いた。
「私はタイラスの息子のタイロスと申します。まだ不慣れですが、よろしくお願いします。」
タイロスと名乗った青年は礼儀正しく挨拶した。
「タイロス、お前は門番なのだから、訪問者に対してあまりへりくだるな。舐められるぞ。」
タイラスは相手がアミランだということもあって、本人が目の前にいるにも関わらず息子のタイロスを戒めた。
「親父さんの言うとおりだ。中にはよからぬ連中もおるからな。毅然とした態度は崩さぬほうが良い。しかし心配するでないぞタイロス。幸いわしは男を舐め回す趣味はないのでな。」
アミランは若きタイロスに忠告する振りをして冗談をかました。
「えっ?!」
タイロスは背筋におぞましいものを感じて寒くなった。アミランに手篭めにされるシーンを想像してしまったらしい。
「あっははは。なかなか純情な倅だの。」
アミランは笑い飛ばした。
「ふ〜ん。面白そうな兄ちゃんだなアイツ。」
うしろでそれらのやりとりを見ていたノイレンはタイロスが気に入ったらしい。ライラもそう思ったのか隣でうんうんと頷いた。
「こちらも新人がいるんだ。紹介しておこう。」
アミランはノイレンを手招きした。ノイレンがそれに応じると三匹のわんこたちもしっぽを振りながらついて行った。
「ノイレンだ。隊商の新しい護衛としてカーツォ商会が派遣してくれた。」
「ノイレンです。」
「ほほお、こりゃまたえらい別嬪さんだな。二十歳、いや二十一歳? あ、いや、女子に年を訊くもんじゃねえな。失礼した。」
タイラスはノイレンの容姿にすっかりご機嫌になり、うっかり推定した年齢を口にして慌てて言葉をひっこめた。にこやかにあいさつしたノイレンも歳を言われ半目になった。
「うふふ~。こう見えてもノイレンて実はまだ十八歳なの。私よりずっと妹なんだから。」
ライラは間をとりなすつもりでノイレンの年齢を暴露した。
「なに!? まだ十代なのか。いやあとてもそうは見えん。」
タイラスはうっかりまた失言してしまった。言ってから急いで自分の口にふたをした。
「もういい!」
ノイレンはぷうと頬をリスのように膨らませると回れ右して馬さんのところへ戻っていった。わんこたちは怪訝そうな顔をしてノイレンを見上げ、あとを追った。
「タイラスよ、貴様の仕事柄相手の年齢や素性を推し量るのは分かるが、レディに向かってぽんぽんと口にするでないぞ。」
アミランは苦笑いしながらチクリと刺した。刺されたタイラスは話題を逸らそうと息子に門番として先輩風を吹かせた。
「タイロスよ、アミラン一行の顔をよく覚えておけ。一度見た顔は忘れんのが一流の門番というものだ。」
「はいっ。」
純情なタイロスは大きな声で返事をした。
アミラン一行はカンタラの街にいつもより長く、ひと月半滞在した。西方から持ってきた品々をすべて売りさばき、代わりに東方の品をあれこれと仕入れた。それまでと違って、ナディアたちから頼まれた庶民が喜びそうな小間物も捜し歩いた。今まで見向きもしなかった品を多種大量に仕入れるのに時間がかかった。
また一行は、ナディアたちから『試しにこれらを向こうで売ってみてくれ。価格は自由にしていい。どの程度売れるか需要が知りたい』と押し付けられた、東方の庶民が喜びそうな安価な西方の小間物を売るのに苦労した。それまでは上流や金持ちしか相手にしていなかったから、中流以下を相手に売る術を持っていなかった。
『そこでノイレンの出番よ。存分に活用して頂戴。』
出発前アミランはサフィアからそう聞かされていた。
「と、いうことでよろしく頼んだぞノイレン。」
アミランはノイレンの目を見て頷いた。
「ちょっと待って、頼んだぞって何?」
「ナディアとサフィアの二人からノイレンに任せておけと聞いておる。」
アミランはニヤリと口角を上げた。それを見たノイレンは察した。
「あいつらハメやがったな。チップのもらえない客寄せパンダはやらねえって言ったじゃねえか。」
心の中で二人に怒鳴ってもあとの祭り。彼女たちは遥か四千キロの西の彼方にいる。西の空にしてやったりとドヤ顔の二人の笑顔が浮かんで見えた。
「しかたねえな、やってやるよ。」
ノイレンはダンス衣装に着替えると、一行が店を構えた庶民向けの市場で踊り始めた。ナディアとの商売対決の時広場で大道芸のように踊った経験があるから、行き交う人々の注目を集めて足を止めさせるのに何の苦労もしなかった。
しなやかに踊るノイレンの周りを三匹のわんこたちが彼女と戯れるようにぐるぐると動き回る。時折ノイレンと動きを絡めて観衆を驚かせる。あっという間に黒山の人だかりができた。やんややんやと囃し立てる観衆の目を楽しませたら投げ銭の代わりに露店へと人々の視線を誘導する。そこからは隊商の商人たちの出番。
「ご覧いただきありがとうございます。こちらにあるのは世にも珍しい西方の品々。皆様のお手に取りやすい価格にてご奉仕させていただきます。ぜひご覧になり、(値段を)尋ねてくださいませんか!」
商人たちはすかさず観衆にアピールして逃がさなかった。
「ノイレンのおかげで順調に売れておる。剣とダンスの二刀流、お前さんほどの使い手は滅多にはおらんぞ。」
アミランは”客寄せパンダ”に大満足した。カンタラに滞在していたひと月半の間ノイレンはほぼ毎日のように日中は”タダ働き”する羽目になった。
「ノイレンすごいの。よくあれだけ注目集められるの。」
店の護衛としてそばに控えているライラはその様子を毎日眺めては同じことを呟いていた。
「その代わりに夜は私の自由にさせてもらうからな。」
ノイレンはアミランにそう断ると馬さんに跨り、三匹のわんこを連れて夜な夜なあちこちの酒場へ出かけて行った。
「おやっさん今夜も頼むぜ。」
酒場に着くとオーナーや店主にまずそう声をかける。そう、ノイレンは客として飲みに来ていたのではない。三着持ってきていたダンス衣装をとっかえひっかえ着ては店の酔客相手にダンスを披露して”お小遣い”を稼いだ。そんな日々が数日も続くと、逆におやっさんたちがノイレンを心待ちにするようになった。
「おうノイレン、今夜あたり来てくれると思ってたよ。お前さんが踊ると客の酒が進むから大助かりだ。」
おやっさんたちはほくほく顔でノイレンを迎えてくれた。
「おやっさん今夜も頼むぜ。」
「おう、好きなだけ踊ってくれ。なんならうちの専属にならねえか?」
「ごめん。ずっとはいられないんだ。近いうちにまた西方に戻るからさ。」
「隊商の用心棒なんてやめてこの街にいてくれよ。」
「ごめん、用心棒をやめる気はないよ。」
「そいつは残念だ。仕方ねえな。その代わりこの街にいるときゃ必ず来てくれな。いつでも歓迎するぜ。」
「ありがとう。必ず来るよ。」
次回予告
初心者の幸運で無事東方にたどり着いたノイレン。昼間は客寄せパンダ、夜は酒場で踊り子と忙しくも楽しい毎日を送りカンタラの街を満喫した。ひと月半が過ぎキニロサへ帰る一行。往きと違ってさっそく盗賊の洗礼を浴び、ノイレンはライラ、馬さん、わんこたちとともに戦う。そしてキニロサに帰ってきたノイレンにサフィアが涙目でその身に降りかかったことを話して聞かせるのであった。
君は彼女の生き様を見届けられるか。
次回第百四話「この子本当に護衛なのか?」




