狼男の襲撃
遅れました、申し訳ありませんm(_ _)m
「・・・つけられてる」
先程の喧騒があった場所を後にしてから一定距離を保ちながら俺をストーカーしている奴がいる。帰り道が同じ、なんてことも考えたが俺の動きに付随して行動している事から可能性は低い。明らかに俺に対して何かを持った人物というのは確定だ
さて、つけられている事が分かっているがどうしようか。相手に害意があるかが判明していない今動くのは危険か・・・?
「このまま宿に戻るのもなぁ、少し遠回りするか」
宿の看板が小さくだが見える所まで来てるのだが宿を特定されて問題があっても困る。妙案も浮かばないので時間稼ぎだけはしておこう。早速歩を逸らして先程とはまた別のマーケットが見える宿とは反対方向へと進む。人が結構多いため紛れて撒くことも出来そうなのだがやめておく。一応小型地図を常に発動しストーカーにマーキングを付けた状態で視界の端に表示しながら歩いていく
「おっ、美味そうな料理」
マーケットを入って少し歩いた所、右手側に何かの食べ物の出店がありそこを覗く。店はカウンターと調理場が一体化した簡素なもので調理場に置かれた鉄板で肉を焼いており香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる、非常に食欲の湧く匂いだ。更にその肉をパンに挟んでソースを掛けて完成らしく見た目からしたらホットドッグのようなハンバーガーのような食べ物だ。お金に余裕もあるから早速購入し口に入れる。うん、美味しい。何故だか非常に口に馴染むような不思議な味付けだ
「おっちゃん、追加で4つ」
「あいよ!」
屋台の店主にリア達の分も頼み購入する。ついでにこの食べ物の名前も聞いてみるとドッガというらしい、結構気に入ったのでこれからも定期的に食べたいなと思った。ドッガを食べ終えてストーカーの様子を伺うが特に動きは無い、今すぐに何かしようという訳では無いのか・・・?
(ちょうどいい所に路地裏に入れそうな道があるな。よし行こう)
適当に歩いていたら人気の無さそうな路地裏に繋がる道を小型地図で発見したのでそこへ早足で向かう。ストーカーも突然走り出した俺を見て急いで付いてくる。俺は細道を進み路地裏に入った瞬間に気配遮断を発動しながら建物の屋根に捕まりぶら下がり身を潜める。やがて細道を抜けたストーカーが姿を現すがこちらに気付かず周りを探している。ストーカーは見た限りでは人にしか見えないが鑑定を掛けてみるとこれまた面白い結果となった。そのストーカーの正体は人ではなく、狼人だった、つまり獣人だ。なぜ獣人がこの王都に居るのかは分からないが少なからず俺に好意的ではないのは分かる
(拘束して目的だけ吐き出させるか?)
剣を構え隙を伺う。こちらを捉えられないため奥へと進もうとし足を踏み出したタイミングを狙い、瞬動で背後から奇襲する。しかし寸止めだが首を狙った剣を掴み、宙へと投げられた。不安定な姿勢を空中で体を捻ることで安定させ着地する。こちらに鋭い視線を向ける相手にあくまで敵対心の無いように振る舞う
「よう、俺に何か用か?狼男さん」
「お前、どこに潜んでいた」
「ネタをばらす気は無いよ、俺は何で尾行しているのかが聞きたいだからな」
「人間なぞに話す気は———無いッ!」
(戦わないとダメか・・・)
剣を構え、距離を詰め振るわれた相手の腕を斬り落とそうと剣を振るう。しかし腕は落ちることなく鈍い音と重い手応えと共に俺と獣人の間に静止していた。しかし微小にも揺れ動いてる事から互いに押し切ろうと力を加えていることが分かる。相手の腕を見てみると腕が獣のそれとなっており相手が人間では無いことが証明された、事前に知ってはいたけど。一度剣を引かせて横一文字に一閃、相手はそれを屈んで躱し回し蹴りを繰り出す。この距離で回避は出来ず右手の籠手で直撃を防ぐが衝撃で飛ばされる。気付いた時にはすぐそこに居た相手が腕や脚を使い絶え間なく攻撃をしてくる。あまりの連撃の速さに視認することを止めて感覚だけで攻撃を躱し続ける
(この戦い方格闘術か、今まで戦った事が無いから油断出来ないな)
防戦一方から脱却するべく大きく振るわれた手刀を手首を掴むことで止め、ヤクザキックのような蹴りで距離を離す。自分の番とばかりに今度はこちらから仕掛ける。魔法で氷の刃を縦横交互に放ち、それに付随するように踏み込み斬り下ろす。それに連なって蹴りと同時に氷の杭を一歩先の地面から放つ。一連の攻勢を凌がれ氷の杭を相手は肘打ちで砕きそのまま振るわれたそれを俺は右腕の籠手で受け止めた
「あんた強いな、そんな獣人から狙われる理由が尚の事分からないな」
「お前が生きてる事が既に理由となっている」
相手の力量を測りながら目的を問うがどうも俺の首が欲しいらしい。しかしこの獣人の目には俺とは違う何かを見据えてるようにも見えた
(あぁ、なるほどな)
そこでこの人物が獣人だという事を思い出しようやく答えが導けた気がする。この獣人は狼というだけあって鼻が効くのだろう、おそらくリアとファニの臭いに感づいた。人間が獣人をそばに置いている理由はほとんど限られている。こいつは隷属した獣人の解放を狙っている、そしてついさっき起きていた強盗事件と結びつき犯人が目の前の相手だと察する
「次の標的は俺って事か、匂いから探知されてるなら撒け無さそうだしやるしかないか」
「お前もあの商人と同じように殺してやる」
「そう易々と殺されるつもりはないよ」
両手から魔力の塊を生み出しそこへ力を込め発射する、フリをする。相手の狼男はそれに警戒し間合いを詰めて魔法発動を阻止しようと先制とばかりに突撃してくるが、その行動にニヤリと笑い本来の目的である魔法を発動する
「その行動は悪手だったな、ダイヤモンドダスト」
小さな、細かい氷を辺り一面にばら撒く。さらにそれに風魔法で動きを調整し大気中に浮かせランダム性を持たせながら周囲に漂わせる。別段これだけではただ小さな氷がゆっくりと漂ってるだけなのだがこれには仕組みがある
「おっと、近付いたら只では済まないぜ。触れたら爆発するオプション付きだ」
「ちっ、面倒な」
「なら面倒なもの追加でくれてやるよ、コールドランス」
俺の説明に舌打ちをしながら距離を取る狼男に追い打ちとばかりに魔法を放つ。氷魔法で氷の槍を複数作りそれを狼男に照準して打ち込む。嫌らしく更にコールドランスの1部に途中から風魔法で加速する仕掛けをする
「なっ・・・!?」
突如加速する氷の槍に反応し切れずにダメージを与える事に成功した。このまま押し切りたい所ではあるが
「投影発動」
投影で相手の格闘術を得ようとする。しかしそこで猛烈な頭痛に苛まれた
(なんだこの痛み・・・投影した瞬間、あいつがなにかしたのか?)
原因が相手にあると推測した所で、それが正解で間違いでもあると気付く
(こいつ、格闘術だけじゃなく他の戦闘術を幾多も持ち合わせてやがる。なるほどな、頭痛の原因はこれか)
先程から頭に流れてくる様々な戦闘術、これらの容量が多すぎて頭がパンクしそうになっているため頭痛がしたのだ。流石にこれは想定外で一気にコンディションが崩れた。優位に立った状況が一転してしまった。周りに展開していたダイヤモンドダストも解除されている。完全な失敗である
「予想外のダメージは受けたが、何やらツキはこちらにあるようだな、死んでもらう」
離した間合いをすぐに詰めて目の前に狼男の爪が迫り来る。ゆっくりと近付いてくるそれを眺めることしか出来ない。こんな半端な所で死んでしまうなんて・・・、おぉ勇者よ情けない。なんてフレーズが思い浮かぶ辺りまだ余裕はあるのではないか、そもそも俺は勇者じゃないけどな
(せめて、この一撃を避けられれば・・・)
一瞬だけ、体に力を込めて相手の攻撃から身を逸らそうとする。流石に遅かったせいか攻撃は受けてしまうだろうが死は免れるはず、そう思った時
「っ!!」
どこからか魔法の砲撃が俺と狼男の間に撃ち込まれた。着弾時の衝撃に吹き飛ばされてしまうが危機は免れたようだ。一体誰が?
「ちっ・・・、今回は見逃してやる。次は無いぞ」
晴れぬ砂煙の向こう側から狼男がそう吐き捨ててどこかへ消えてしまった。気配察知をしてももう索敵範囲外に居るようで探知出来なかった
状況がまだ理解はしてないが、とりあえず
「助かったみたいだな」




