暗雲
ファニがリアを介抱している間、俺は街中の市場を物色していた。リアが好みそうな魚串などあったため、その度にリアとファニの分を買っては無限収納に入れるということを繰り返していた
「にしても王都だけあって賑やかだな」
今まで少ないながらも見てきた中で1番の喧騒だ。街に住む皆が活き活きと生きている感じが雰囲気から感じられる。それに当てられ自分も活き活きとするのが不思議だ、やはりこういう場所は良い
「さて、食糧は調達したし宿に戻るとするか」
「そこの旅の方ちょっといいかな」
「はい?」
帰ろうとした矢先、突如声を掛けられ振り向くとそこには灰色のフードで顔を隠しローブを着た人がいた。人、とは言ったが獣人や亜人かもしれないが、中性的な声のため性別も分からない。見るからに怪しいな
「何か用ですか?」
「少しお聞きしたいことがありまして、ここら辺で魔女のような格好をした者を見ませんでしたか?」
魔女の格好だと先程別れたセリューさんのことだろうか。しかし今日来たばかりの人物を探すだろうか。そもそも別れてからの行先も分からないから教えようもないのだが
「人物には1人心当たりはある、だけどどこにいるかは分からない」
「居る、というだけでも十分です。ありがとうございます、こちらお礼として受け取ってください」
そう言って渡されたのは白い絹のハンカチ。装飾の刺繍もあり結構高価なものに見える。流石にそんなのを受け取れないので返そうとすると
「いいんです、私には必要ないので。では私はこれにて」
そのままなし崩し的にハンカチを受け取ってしまった・・・、これどうすればいいんだろうか。とりあえず無限収納に入れては置くが
「さて、早く戻るらな・・・なんだあれ?」
またしても帰ろうとする矢先、視界の片隅で何か野次馬が出来上がっており、喧騒からそこで何か起こってるようだが・・・
何故か気になる、ちょっと寄ってみようかな、いやしかしリアのとこへ行かなければいけないし・・・。迷っている中突然頭の中に聞き覚えのある声が響いた
(ータ、ケータ。聞こえるか)
「この声はファニか?」
(そうじゃ、今お主に念話で話しかけておるんじゃよ)
「こいつ、脳内に直接!?いや、すまん。気にしないでくれ」
念話と聞いて思い付いたネタを言ってしまったがファニの困惑した雰囲気を感じたためすぐに冷静になり一応謝っておく。こういう時ネタが通じないのは寂しく感じるなぁ
(話すときは頭の中で言葉を発するようにすれば念話の返答は出来るぞ。さて、儂が念話したのはリアが寝てしまっての、しばらくは起きそうにないからすぐに帰る必要は無いと伝えたかったのじゃ)
(そうか、分かった。こっちもちょうど気になることがあったから連絡してくれて助かる、ありがとう)
となれば、あの喧騒の正体を確認することが出来るみたいだ。早速人混みの中に割り込み様子を伺うと、どうやらこの野次馬の視線は路地裏へと続く建物と建物の隙間、そんな細い道に倒れている死体に向けられていた
「あれは・・・人か?」
「たぶん強盗か何かだろうな」
そこで隣にいた野次馬の一部の男が俺の呟いた疑問に答えてくれた。話を聞くとちょうど30分前にこの死体が見つかりこうして野次馬が出来たらしい。警備への連絡は既にしているため来るのを待つだけなのだがどうにもこの死体が、いつもの強盗とは違う点があって皆が興味津々に各々の推測を言い合っている。その気になる点というのが
「首輪に短剣?」
「それだな、強盗がこんなメッセージじみた事を残すなんて普通は無いだろ?だからこれは何かの警告なんじゃないか、って皆が口々にそう言っているのさ。更に死体を見れば分かるが身元が見ただけで分からないぐらい損傷が激しいから勘ぐっちまうもんだ」
「なるほどなぁ」
確かに奴隷を象徴とする首輪にこれ見よがしに短剣を、しかも死体の傍に刺してあるのを見ると意味ありげに見えてしまう、というかそうにしか見えない
(そうなるとここで誰かを殺害したのは奴隷を解放したかった誰かか)
問題の犯人についての特定はこれだけの情報では詳しく分からずこの騒ぎは次第に忘れ去られていくような話になってしまうのだろう
だが何故か、俺は妙にこの出来事が頭の片隅で引っかかっていた
「気の所為、だと良いんだけどな」
そんな小さな願い地味た事を呟くが、後にそれは叶うことは無かった。着実と騒動の種は撒かれつつあるのを俺はまだ知ることは無くその場所を後にした




