煌びやかな王都
「ふむ、ならば儂が良い所へ連れて行ってやろう。ちょうど良いタイミングじゃしの」
「どういう事だ?」
「お主の会いたいであろう方と会わせてやる、という事じゃよ」
俺が会いたい人物、って誰だろうか。この世界で会いたいと思ったことがある人物なんて・・・
いや、一人いた。ファニと関係があり、尚且つ俺とも関係を持つ人物。それは
「万能神オルティか」
「その通りじゃ、オルティ様のお住みになられている所へ行けば、お主の悩みを解決する糸口があるじゃろう」
「そこへ今から行くと?」
「うーむ、オルティ様に一言入れておきたいからのう。王城へはいつ行くのじゃ?」
「そうだな、まず今日は宿を見つけてそのまま王都の視察、後は冒険者ギルドへの顔出しもしなきゃな。その翌日に観光がてら休日にしてその後に行こうと思っていたが」
「そんな悠長で良いのかえ?」
予定として明後日に王城へ行こうという事をファニに伝えると驚いた顔をしてそんな疑問を口にする。しかし招待状には期日は書いていなかったんだ。ならいつ来ても良いという事だからそれに甘えて少しは王都を満喫するのも悪くないだろう。しかし王都に入ればおそらく俺達の情報は王子の元へと行くだろうからそんなに悠長に出来ないのもまた事実。だから良い塩梅となるように予定していたのだ
「ふむ、まぁちょうどいいと言えばちょうどいい感じなのかのう。どうせ儂らが入国したのはすぐに知られるのじゃからな。あっちも直ぐに来るとは思っていないだろうしのう」
「そういう事、だからファニもリアも明日は自由にしてていいよ。お金も渡すから欲しい物もこの機会に買うと良い」
隣で瞑想していたリアにも向けてそう言うと、目は開けないが耳がぴょこぴょこと左右に揺れているのを見るに嬉しそうである。ファニも何をして過ごそうかのう、と楽しげに考えている。しかしファニとの話はまだ終わっていないので再開はする
「さて、とりあえずは招待状についての事を先に済ませてからにしたいんだがそれでもいいか?」
「了解じゃ、ならそれを終えた後にオルティ様の元へ案内しよう」
「すまない、助かるよ」
「何、気にするでない。もとよりお主をオルティ様と会わせるつもりはあったからの、ちょうどよかったのじゃ」
今後のとりあえずの予定を確認し終えると、ファニとリアは俺を挟むように所謂女の子座りをしながらいつの間にか両肩に頭をもたれかけていた。定期的に動く馬車の振動が二人の眠気を誘い寝てしまったようだ。釣られて俺も眠くなり瞼を落とし浅い眠りに着く
検問の順番が来た時に起こしに来たミミとリンはそんな俺達の姿を見て微笑ましい光景だったと、後に言われ恥ずかしくなったのは余談だろう
眠気眼になりながらも起きて門番の検査に応じる。銀色の鎧を着たいかにもな門番は手に持った書類に何かを記載しながら検査を行う。銀狼の皆とセリューさんは既に終わっていたようだ
「銀狼様と同じく商人の護衛のためにここへ訪れたのですよね。まず身分を証明できる冒険者カードをご提示願っても?」
「ほい」
リアとファニも俺に続いて冒険者カードを門番に渡す。門番はそのカードに記載された情報を書類に書きながら質問を続ける
「護衛依頼が終わった後のご予定をお聞きしてもいいですか?」
「とりあえず王都の観光ですかね」
「そうですか、宿はもう取っていますか?」
「まだですけど」
「そうですか、ならこちらをお渡ししますので是非参考にしてください」
宿は決まっているのか聞かれたのでまだと答えると、門番は腰に下げた筒から丸められた紙を取り出して俺にくれた。紙を広げ中身を見ると宿や食事処について詳しく書かれたパンフレットのようだった。それぞれに値段や品質、場所や特徴などが書いており、至れり尽くせりであった。これなら宿を捜し歩くことも無さそうでとても助かる
「ありがとうございます。とても助かります」
「いえいえ、これも我々の務めですからお気になさらず」
うわぁ、とても良い人だ、いや良い国だと言ったほうが良いのかな。とにかくそんな印象、好印象を持った。ここまで親切にされると来て良かったと思えるな、観光するのも楽しみになってくる
「ではこれにて検査を終わります。こちらお返ししますね。お時間お掛けしました、ようこそラタル王都へ」
門番からカードを返却されそれを受け取り馬車が再度動き出し大きい門を潜り馬車の中に影が差した。すぐに陽は差し込み入国したという事が分かると窓から広がる王都の街並みを見てみる
「へぇ、王都って感じがするな。キラキラしてる」
「わぁ・・・とても綺麗ですね」
「ほう、なかなかの物じゃのう」
リアとファニも王都の街並みを見て感嘆の声を上げる。王都は漫画で見たような王国に似たようなものでとにかくキラキラしていて綺麗だ、という感想が最初に出てくる。街歩く人皆が活気に満ち溢れておりそれが集まって王都を盛り上げている、そんな印象だ。西洋風の建物が並ぶ中、時折隙間から見えるお城が王城なのだろうか。馬車が坂を上りここら辺では高い所に着くとそこから王都を一望できた。王都は真ん中の王城を中心に円形に広がっており城の向こう側にも街並みは広がっている
「広いなぁ、さっきの門番の人にパンフ貰えて本当に良かったよ」
「ふふ、ですね」
こんな広い所で何のヒントもなしに宿屋を探そうものなら日が暮れそうで考えるだけでも思わず苦笑してしまうレベルだ。先ほどの門番に心の中でお礼をしながらしばらく流れる街並みを見ながら商人の目的地に到着する。ここで依頼は終了、依頼の終了報告は商人と銀狼がしてくれるようなので俺達は馬車を降りて後は解散である
「銀狼の皆ありがとう、今回の依頼で色々と冒険者のノウハウを教えてもらって助かったよ」
「いえいえこちらこそ、教えるのも先輩の務めでもありますから。僕たちもビジターの皆さんから学ぶこともありましたのでお相子です」
「また今度会ったらよろしくな、セリューさんもここでお別れかな?」
「うん、私も目的地があるからここでお別れだね。ここまで連れてきてくれてありがとうね皆」
「そっか、じゃあセリューもまたどこかで会えたらよろしくな。さて俺達はもう行くよ」
「はい、終了報告は任せてください。ではまたお会いしましょう」
「ばいばーい」
銀狼の皆とセリューさんとも最後は握手をし、俺達はその場から去っていく。俺達ビジターは次なる出来事に向けて歩き出したのであった
ーーー
銀狼ともビジターとも別れた一人の魔女は屋根の高い建物の上に登り、風で髪を揺らされながら帽子だけを押さえながら歩を進めているビジターを眺めていた
「また会ったら・・・か、その時はたぶん私たちは敵同士だろうね。っと念話だ。あっ、ノーラ?こっちはもう王都に潜入出来たよ。これから次の行動に移ろうと思ってたの、うん、大丈夫だよ。ノーラも気を付けてね、それと皆に話したいことがあるから出来るだけ早く集合してって伝えておいて欲しいの。うん、ありがと。じゃあね」
まるで独り言のように魔女は呟いていたがそれを聞いていた者は誰一人としていなく、魔女はそのままそこを後にした。去り際に魔女は呟いた
「嘘つきの魔女はお終いっと、やっぱ一人って楽だなぁ」
その呟きですら街の喧騒に飲まれて消えていった
4/17 一部内容、セリューが最後に会話に参加せずにいつの間にかいなくなっていたのを加筆修正しました




