アレックスの用件
何故か倍近く長くなってしまいました
「理由をお聞かせいただいてもいいですか」
自作のポーションが売れないと判断され、その理由を聞く。別段そう言われることに反感は感じないが理由は気になる。それを聞くことで次の対策に活かすことができる可能性があるからだ
「まず品質ですね。このポーションの状態が良すぎます。普通ポーションの品質は半日ほどから徐々に悪くなっていきますがこのポーションにはその劣化が見られない。作ったばかりと言われても納得してしまうレベルのものです」
「ポーションの品質って、普通ならポーションは長持ちするものでは?」
「そうですね、店売りしているものはどれも年単位で長持ちする物しかないですね。むしろポーションというのが保存性の高い物だと認識されているのが現状でしょうか。しかしそれが当たり前ではないのです。ポーションというのは元々すぐに駄目になってしまう物なんです。ですので通常ならどのポーションも劣化を防ぐための対策していて年単位の保存性を可能としているんです」
つまり、俺の作った物ではその劣化防止の対策をしていないから売れないということだろうか。ポーションというのは日持ちするのが普通だと、アニメやゲームの知識から先入観があり決めつけていたがそうではないらしい。当たり前という事にも先人の知恵と工夫があるという事か
しかし品質が良すぎると聞いた手前新たな疑問が生じる。劣化防止措置をしていないのに何故ユフィさんは劣化をしていないと言ったのか、それならなぜ売れないのか
「そのポーションには劣化の防止はしていませんよ、それなのに品質がいいのですか?」
「そこが不思議なんですよ。劣化防止をしていないのは液体の透明度を見れば分かるのですが状態までも良いなんて事は普通ではありえないです」
「だから売れないと?」
「いえ、売れない理由についてはもう一つあります。むしろこちらのほうが要因的には大きいかもしれません」
劣化をしていない原因がわからないから、という理由で売れないと予想したのだがそれも違うとなると一体何だろうか。見当もつかない・・・
疑問符を浮かべるもそれに構わずユフィさんは説明を続ける
「まぁ、単純に言えばですね。これは効果がありすぎるんです」
「というと?」
「これは中級ポーションで間違いないですね?」
その問いにイエスと答える。上級ポーションも作れるのだが初めは初級、次いで中級と徐々に調合に慣れていこうと思ったのである。何事も初心忘れずべからず、こういう経験が経験に繋がるのである。現に調合などのスキルにはレベルとは別に熟練度なるものがあることを確認している
「簡単に言ってしまうと、このポーションは効果だけで言えば上級と同じ、もしくはそれ以上の効果があるんですよね」
「そんなこと有り得ないのでは?」
作った本人の俺がユフィさんから告げられた効果に驚いていると、リアがそれに対し質問をする。リアは前に肺血病で上級ポーションを飲んだから気になっているのだろうか?
「猫さんの言う通りまず有り得ない事ですね。特級調合士なら出来るかもしれないけど」
「纏めると、俺のポーションは効果が高すぎて未知な部分が多いからお売りできないという事で?」
「それで間違いないです」
そうですか、と売れないという結果に少しばかりため息が出てしまう。いい金策になると思ったんだけどな・・・残念
ポーションを仕舞い席を立ちユフィさんに礼を言う
「すいません、お時間を取らせちゃったみたいで。助かりました」
「いえいえ、私にとっても有意義でしたので、中級ポーションぐらいの効果の物でしたら私が買い取りますのでその時はぜひいらしてください」
その時はよろしくお願いしますと言い、俺たちは道具屋を後にした。次はギルドに行くためそこへ進路を取り歩を進めた
そこでファニが俺と歩行速度を合わせ横に並ぶと含み笑いをしながら質問してきた
「ふふん、ケータよ、おぬしあの道具屋に隠していることがあったじゃろ?」
確かにあのポーションについて言っていない事があったが何故こいつに分かるんだろうか、御使いの力か?レベルも俺より上だしこの世界で生きている年数も違うのだから俺の知らない何かがあるのだろう、そういうことにしよう
「そうだな、ファニの言う通り隠したことはあるよ」
「なぜそれを言わなかったのじゃ?そう、ポーションの効果が高いのはスキルが原因じゃと」
「そこまで分かっていたのか。理由は話すことでのデメリットが大きかったからかな」
「ふむ、確かにそのスキルを取得していればあのような出鱈目なポーションが作れると知られれば厄介事になるのは目に見えておったろうな」
そういうことだ、とファニの考察に肯定する。それにしてもこの龍王様は寝てばかりいるぐうたらなトカゲ人間ではなかったんだなと、心の中で評価を上げる
「ご主人様、そのポーションはいかがなさるおつもりですか?」
「市場に流せないんだから今は個人で使うしかないな。金策についてはギルドの依頼でもやれば何とかなるだろう、と思いたい」
「しかし今はあの封書についてどうするかを決めるべきでは?」
「あー、あれな。どうしようかな、正直気乗りしないんだけど」
「同感です。しかし先方がそうはさせてはくれないでしょうね」
リアと話しているのは先日シノアさんから貰った封書についてである。あの封書については未だにどうするか決めていないのである。しかしリアの言う通り相手が相手なだけあって簡単に断れる内容でもないのも事実であるため対応に困っているのだ。ここは腹を括るべきなんだろうか
そんな風に悩んでいるといつの間にかギルドの門前に着いていた。考え事していたからかここまでワープしたんじゃないかと錯覚してしまう。この世界なら無意識にスキル発動して、とかありそうだが・・・
「とりあえずこれは予定通りデュークに相談するとしよう。その前にアレックスのほうが先になるかもしれないけど」
今回ギルドに来たのはデュークに会うためであったのだ。この件についての相談をギルドマスターからの意見を聞きたかったのである
ギルドに入るためドアを開け鈴を鳴らすと、いつも通りギルド内にいる冒険者からの視線が全てこちらに集中する。いつ来てもこれには慣れない、一瞬で視線が集中するのって怖いんだよな・・・
内心ビクビクしながらも何もなかったかのようにカウンターへと進んでいく。今日は混んでいる時間帯なのかカウンターには列ができており冒険者の数も多く賑やかだ
この様子だとデュークに会うのは後にしたほうがいいかな?そう判断し次の目的である、俺を呼んだアレックスの姿を探す。ギルドに居ると聞いていたからいるはずなのだが中々見つからない。あいつ小柄だからこの人混みに埋もれてるんじゃないだろうかと心配になってくる
「ご主人様見つけました」
「さすがリアは頼りになるな」
リアが耳をピコピコ揺らしながらアレックスを発見したと報告してくれたので早速そこへ向かう。どうやらアレックスがいたのは食堂スペースの奥の席だったようでアレックスの他に銀狼メンバーが勢揃いしていた。こっちまでは目が届かなかったな・・・
人混みをかき分けようやくアレックス達の所へ着くとアレックスもこちらに気づいたようで笑顔で迎えてくれる
「お待ちしていました。急なお呼び立てすいませんでした」
「おっす、別に気にするなよ。それで用件はなんだ?」
お互いメンバー同士で軽く手を挙げ挨拶をし、さっそく本題に入る。他愛ない雑談をしてからでも良かったのだが今回は先に聞くことにする。この後にデュークに会うのも控えてるためでもある
「はい、用件というのは端的に言うと私たちと合同で依頼を受けて欲しいんです」
「合同で?銀狼程のパーティーなら俺らより他のパーティーを誘ったほうがいいんじゃないのか」
「それもいいんですが今回はケータさん達と受けたいと思いまして。実力的にもあの炎獄の大剣使いと渡り合える人なら申し分ないですから」
合同の依頼か、依頼内容によるが悪くはないな。銀狼とは顔見知りぐらいの仲でもあるしここは先輩パーティーから学べることも多いのではないだろうか
そう考えるとこれを断るのは損が目立つような気がする。少し気になるとすれば何故俺たちに拘るかだが今は気にしなくてもいいか
今は先に依頼内容について聞くことにした
ーーー
ケータ達が道具屋を去った頃、彼らを見送った店主である私は一人店内で楽しそうに笑みを浮かべていた
「ふんふふーん、まさかこんな所で私が作るポーションと同じ物を作れる子と出会えるなんて嬉しいな。今回はあの子の力になれなかったのが残念」
今回相談に来てくれたのにあまり力になれなかったことを悔やみ、ため息を吐く。しかし今回のはさすがに私でも解決出来るものではなかった、個人的に買い占めることも出来たのだがそれで後からポンポン売られても金銭的にもこちらが困るのだ
「しかし巡り合わせというのも奇妙なものよねぇ。黒髪黒目であの顔立ちはどう見ても・・・」
近くにある戸棚の引き出しから手鏡を取り出し覗き込むと、そこには栗色の髪を腰まで伸ばしたこの世界の住人達と同じ顔立ちの少女、つまり今の自分が映っていた
「幻惑解除」
魔法の呪文を唱えると鏡に映っていた先ほどの顔が徐々に消えていき、今度は黒髪を長髪にしたある国の人間と同じ顔立ちの少女に変わっていた
「私と同郷の人に会えるなんて、喜んでいいのやら悪いのやら・・・。あの子が同郷なら召喚されたことになるよね、となるとテラークかしら」
召喚を行った国についての目星をつけ再度溜息を吐く。同郷の人に会えたのにこの素直に喜べない気持ちに若干イライラしながら、店の奥に置いてある額縁を見る。そこに魔力を送ると写真のような過去に記録した一枚の絵が浮かび上がる。そこには5人の少年少女が写っており皆が武器を持ちこちらを見、笑っている
懐かしい気持ちが沸き上がると同時に少し悲しいことも思い出す
「もう悲劇は繰り返さない、悲劇は私たちが全部背負う。次の子たちには必ず希望の道を示す」
何かの問いかけのように何度もその言葉を繰り返す。この言葉はとても大切なものであるから何度も繰り返し呟く
「あの時の誓い、出来れば無いことを願ったそれは叶わなかった。なら誓いを私は果たそう」
過去の5人の絵に向けて放った誓いの言葉は誰もいない店内に消えるように響いていった




