王城からの脱出、そして情報収集
今回は少し長めになりました
執事に運ばれて数分が経った、今は執事しかいなく付いてきていたメイド数人は途中で別行動することになっていた
俺が今いる場所は王族の館と客の館の連絡通路のちょうど真ん中辺りだ
俺は運ばれている間に一つのスキルを取得していた
何もせずに運ばれていた訳ではない
スキル 小型地図Lv.1
これは自分の視界にマップを表示するという優れものであり気配察知、鑑定を組み合わせると、どんなやつがどこにいるのか分かる。
そのミニマップを使用した所によると、今客の館には1体の魔物と1人の人間がいる
更に執事はそこに向かってるらしく徐々に近づいてきている
(なんで王城に魔物が......)
考えられるのは魔物を俺にけしかけて事故死したとでも言うつもりだろうか
毒で気絶している俺なんてすぐに殺されるだろうな、気絶していればだが
俺は執事に気付かれないようにポケットに右手を入れた。そして中にあるカッターを手に取る
元の世界では、カッターを使う機会が多かった。だからこうしてポケットに常備してたんだが
(俺自身こんなことに使うとは思ってなかったんだがな)
これからカッターを使ってやろうとしていることを考え苦笑する
すぐに気を引き締め、深呼吸する
(忍び足と不意打ち発動)
MPが消費されると共にスキルが発動された感覚を得る、なんかこうオーラを纏った感じだ
(攻撃系に使用するスキルは発動するとこんな感じがするのか、何か変な感じだな)
俺はカッターを握る手に力を入れ、執事の首に振り下ろす
ドスッ……ドサッ
首に刃物が刺さる音がし、数秒遅れて執事が倒れる。担がれた状態から器用に着地した俺はすかさず執事に鑑定を使う
「よし、ちゃんとHPは0になってるな」
死体となっていることを確認した俺はその場から離れるため
連絡通路の窓から外へ出る
ミニマップ、気配察知、鑑定を使用して王城周辺の地図と使用人や兵士やらの所在を視界に表示する
そこから王城から街に脱出出来る最短ルートを導き出し駆け出す
これからのことに期待を膨らませた心とともに一つの感情を抑え俺は王城からの脱出に成功した。
ちなみにこのあと王城で魔物と死体が出たと騒ぎになったのは余談だろう
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王城から少し離れた所には市街地がある。そこは昼間や夜間問わず賑やかであり活気の良さが分かる
そんな場所に俺は来たわけだが、石畳で出来た道の脇にあるベンチで一息付いている
今はもう夜間に突入する間際で空は暗くなっている、道行く人達はこれから帰宅するものや夕食を取るものなど様々でありその景色が意外にも新鮮だった
だけど俺はその景色を見ても先ほどから頭に浮かんでくるもののせいでいい気分にはなれなかった
込み上げてくる吐き気を抑えながら自分の手を見る
(俺は……人を殺したんだな)
先ほどの執事の死体、そしてカッターで刺した時の肉の感触が今でもこびりついたように離れない
さっきまでは人を殺したことによる嫌悪感を抑えられたが、一息付くとそれは抑えられなくなり吐き気を催してくる
ベンチから立ち近くの路地裏に入り、胃の中の物をすべて吐き出す
しばらく気分の悪さを解消するため地面に座り込み涼しい夜風に当たっていると、不意に誰かに話し掛けられた
「おいおい、俺の店裏で吐かないで貰いたいんだがな」
「……あんた、だれだ」
そこには筋肉質のガタイのいいおっさんがいた
おっさんは俺の吐瀉物を見てしかめっ面をし文句を言ってくる
仕方ないだろう、気持ち悪かったんだから
「俺はここの店の店主でガゼルだ、でお前さんはここで何してんだ。珍しい服を着てるし何者だ?」
「とりあえず吐いたことについては謝罪する、すまなかったな。俺は加賀美圭太、最近遠い国からこの国に来た旅人だ」
一応素直に不快なことをしたことに謝罪をし、色々と誤魔化しを含めた自己紹介をする
「ケータか、随分言いづらい名前をしてるな。そんな名前は珍しいから遠い国から来たってのも頷けるな。それでなんでこんな所に手ぶらでいるんだ?」
「あー、ここに居るのは人混みに酔ってしまってな。荷物は特にないだけだ」
「なるほどな、確かにここらへんは人の勢いも凄いもんなぁ。荷物がないってのはお前さん無限収納持ちか?」
無限収納か、やっぱりこの世界にはあるんだな
なぁ、システムさんよ。俺はこの無限収納って取得出来るのか?
〈解 可能です。インベントリと念じるだけです〉
この世界って本当にイージーモードじゃないかと思ってきた
まぁ、とりあえずインベントリと念じてみる
〈スキル 無限収納を取得しました〉
無事取得出来たみたいだな、詳細は後で見るとして今はおっさんの質問に答えないと
「あぁその通りだ」
「ほぉ、無限収納持ちってことは魔法適正がさぞかし高いんだろうな」
「そうなのか?」
「なんだ、お前さん知らないのか?無限収納なんて持ってるやつは上級魔法使いぐらいだぞ」
それは初耳だな。良いことを聞いた
「俺は結構常識に疎いんでな、良ければそういったのをもっと教えてくれないか?」
「こんな常識にも疎いなんて、そんなに閉鎖的な国だったのか?まぁこれも何かの縁だ、店に入りな。聞きたいこと教えてやるよ」
ガゼルに付いていく形で店の裏口から中に入る、一応お邪魔しますと言ってみたがガゼルに不思議な顔をされたので故郷の挨拶だと説明しておく
やがて事務所らしき場所に案内され椅子を勧められたため好意に甘え座らせてもらう
ガゼルもテーブルを挟んで向かいの椅子に腰掛けた
「それで聞きたいことはなんだ?」
「そうだなぁ……この国と周辺諸国の情勢や特徴、それと金銭知識をまず教えてくれ」
「分かった、まずはこの国や周辺諸国についてだな。この国はテラークと言い、大迷宮から発展した国だ。この世界には迷宮っていうのがあるんだが、これはごく稀に自然発生するもので魔物が頻繁に出現するのが特徴だな。迷宮は魔力が蓄積することで発生すると言われてるが真偽は不明だ。迷宮には魔物の他に宝箱があり中には色々と珍しい物があったりするんだ。だから迷宮には多くの冒険者とかが訪れる、それで発展したのがここって訳だな」
「迷宮のある国って他にもあるのか?」
「おう、テラークの西に位置するテルムルにあるな。テルムルはここほどじゃないが結構大きめの迷宮があるぞ。このまま周辺諸国について説明するか。テラークの周りには3つの国がある。さっき言ったテルムルの他に、南西にラタル、南にタイランがあって東は海しかないな。テルムルとラタルとは良好な関係だがタイランとは最近折り合いが悪いらしく良い話を聞かないな。ここまでで何か質問はあるか?」
「この国の北には何もないのか?」
「お前さん本当に何も知らないんだな、北には魔物が蔓延る魔族領域があるぞ。そして最近は魔族と戦争をしているらしくてな、おかげで商売に支障が出ている」
なるほどな、どうやら戦争しているのは本当のようだった。だが見た感じだとさほど追い詰められてる様子が見られないな、追い詰められていたならこんなに賑やかなはすがない
「そういえばおっさんは何の店をしてるんだ?」
「おっさん呼びはやめてくれないか、意外と心に来るものがある……。うちは武器屋をやってるぜ」
ほぅ、武器屋か
俺は今カッターしか武器っぽいのを持ってないからここで調達するのが良いかもしれないな
あ、でも金持ってないや
「そうだ、さっき言ったとおり金銭知識を教えてくれないか?今無一文だから何か売りたいんだが相場を知りたい」
「お前さんどうやってこの国に来たんだと疑問に思うが、聞かないでおいた方が良さそうだな」
「すまんな、そうしてくれると助かる」
「それで金銭知識だな。まず金には銅貨、銀貨、金貨、白銀貨の4種類ある。銅貨100で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨は10枚で白銀貨1枚になる。相場はそうだな……3食の食事と宿の宿泊で大体銅貨50枚だな」
聞いた感じだと銅貨十円、銀貨千円、金貨一万円、白銀貨十万円といったところだろうか
でも1日過ごすのに五百円でいいのか、物価に関してはやはり元の世界とは大きく違うようだ
「説明はこんな所か、後は何かあるか?」
「いや充分だ、教えてくれてありがとう。助かったよ」
「気にすんな、好きでやったことだからな」
正直これだけでも有益な情報だ、まだ知らないことはあるだろうが最低限のことは聞けただろう
そういえばおっさんは武器屋だったか、となると買取りとかはしてるのだろうか
「ここでは買取りとかってやってるのか?」
「やってるぜ。武器以外でも受け付けているが何か売れるものがあるのか?」
「あぁ、このカッターを売りたい」
ポケットからカッターを出し、テーブルに置く
それを手に取りおっさんは物珍しい物を見るように観察する
やがて見終わったのかカッターをテーブルに置いて俺のほうを向く
「見たことない武器だな、刃物だから武器なんだろうがこれはどういうものなんだ?」
「これは故郷でカッターと言われる刃物で、雑務とかに適した道具なんだ。だから武器ではないな」
簡単な説明を聞いておっさんはしばらく目をつぶり考えこむ
数秒後目を開け口を開く
「正直見たことないやつで相場がわからんから買い取りは難しい、だが俺はこれを買いたい。お前さんいくらで売ってくれる?」
「いや聞かれても金銭知識をさっき知ったばかりの俺じゃ決められないよ。むしろいくらなら出せるんだ?」
「そうだな、金貨5枚は出せるな」
金貨5枚!?こんな百均でも売ってるようなカッターが5万円に化けるとは……
「ならそれでいい、今はしばらく行動出来る資金が欲しいだけだったから充分だ」
「分かった。今金を持って来るから少し待っていてくれ」
おっさんはお金を取りにどこかへ消えてしまう
俺はこれからの予定を考えながら帰ってくるのを待つことにした
あっさり王城から脱出出来ましたね、警備ザルすぎるだろ……
そして出会ったおっさんは意外と良い人物だった、見た目に反しておっさん呼びに堪える繊細な心の持ち主でもある




