湧き上がる不安
ラミアも思う所があったのだろう。国家直属の迷宮探索部隊のメンバー、言わばベテランでありながら迷宮初心者の俺達に守られ続け、あげく自分は何も出来ない状況ではどんな人間でもプライドが傷付くだろう
「ならラミアも戦ってみるか」
「いいんですか?」
「あぁ、危ない時は俺が援護すればいいだけだからな。ラミアは好きに戦ってもいいぞ、っと、ちょうどいい所に魔物が来たな」
タイミング良く魔物が近づいてきたので応戦する。今回はビーストウルフという狼が人型に、簡単に言えば狼男のような魔物が8体、互いに一定距離を開けながらジリジリと近づいてきている
「作戦変更だ、リアは全員のサポート、ファニは護衛から魔法での遊撃、俺とラミアが共に切り込みをする。」
「「了解」」
「指示の通りだ、行くぞラミア」
「はい!」
大声で指示を出しリアとファニから了解と返ってきたので早速ラミアと一緒に1番近くにいるビーストウルフに斬り掛かるが仕留めることは出来なかった。ラミアは俺とは別な相手に短剣で攻撃を仕掛けていた
グルァァァ!!
「ワンワンうるさいよ犬っころが」
犬じゃなくて狼だとか、ワンワン吠えてないというツッコミは受け付けない
奇襲に怒ったビーストウルフが鋭く尖った爪を数度振るうが全て
紙一重で避けていき攻撃が止んだ一瞬の隙を逃さず今度は首目掛けて一閃、首の落ちたビーストウルフは生命活動を維持出来なくなり絶命した
「まずは1匹、ラミアのほうは……流石にまだ倒した無いか」
ラミアの方を向くと1本の短剣、しかも護身に使うようなものでビーストウルフ相手に善戦している
こちらに襲いかかるもう一体のビーストウルフの攻撃を避けながらその姿を眺めていると違和感に気付く
「ラミアに向かう攻撃が当たっていない?」
先程からラミアの攻撃は浅いながらもビーストウルフに何十もの傷を付けているのだがビーストウルフの攻撃は一切ラミアに当たっていない。ラミアが単に避けているだけなのかもしれないがビーストウルフが攻撃する度それが逸れているようにも見えるのだ
俺がもう一体のビーストウルフを撃破した時、遂にラミアは短剣をビーストウルフの心臓に突き刺し撃破した
「おっ、良くやったなラミア。1人でも戦えるじゃないか」
「はぁ、はぁ、いえ、そんな事ありません…よ」
他のビーストウルフをリア達が既に片付けていたのでラミアに声を掛けるが返ってきたのは息も絶え絶えな返事だった
流石に無理をさせただろうか
「大丈夫か」
「はい、ちょっと、私の……戦い方はMPを多く消費するので……」
「さっきの戦闘、ラミアの攻撃が終始当たって相手の攻撃が外れるってことがあったけどどういう仕組みなんだ?」
マナポーションを取り出しラミアに渡して先ほどの戦闘での違和感を聞いてみる
仕組みは空間操作だった。自分の攻撃が当たるのは自分と相手との間の空間を縮小、相手の攻撃が外れるのは相手と自分との間の空間を拡大させているからだそうだ
それによりこちらの攻撃も空間を縮小することで距離が縮まり当たる、相手の攻撃は空間を拡大することで空を切る、という訳だ
ただしこれはカウンターに弱く、自分の攻撃に合わせて攻撃をされると空間を縮小しているのでこちらにも当たってしまう。更に空間操作は他に比べて多くのMPを消費するので乱用は出来ない
つまり今みたいな一対一では戦えても二対一のような状況では不利を背負うことになる
「なるほどな、それなら戦わない方がいいんじゃないか?」
「えぇっと、はい、ごめんなさい」
「気にするな」
いくら何でもラミアを戦わせるのはリスクが大きすぎる。確かに俺が援護をすれば大丈夫だろうがこの先迷宮を封印することも考えれば魔力を無駄に使わせるのは良くない
「すいません、また頼り切りになってしまって」
「だから気にするなよ、ラミアはやれることをやってくれればそれでいい。それじゃあ作戦は前と変わらずに、だな」
ラミアの戦闘が終わり今後の方針を再度確認して迷宮の探索を再開する
そして俺達は19階層まで辿り着いた
「ようやく19階層か、この迷宮どこまで深いんだ………」
俺が終わりが見えなそうな現状に不満をボヤくとラミアからもうそろそろ最深部のはずと言われる。何故そんなことが分かるのかと聞くと迷宮のコアには膨大な魔力があるため近づくと少しだが魔力を感じられるそうだ
17階層辺りから徐々に反応が近くなってきたのでもう少しで最深部と分かったようだ
「それにしても魔物がいないな」
「はい、しかも…」
「前の階層から今まで1度も魔物と遭遇しておらんのが気になるのう」
リアとファニも同じ疑問を持っていたらしく少し警戒している
果たしてこの状況が何を表すのか、それは分からないが何か嫌な予感がする
自然と全員が早足になり急いでこの階層を進んでいく、すると
「うっ、これは……」
「魔物の、死骸ですね……」
開けた空間に出た所猛烈な死臭が鼻を刺激し思わず顔を顰めてしまった
俺達の視線の先には山になった、魔物の死骸。しかし魔物というのしか分からないほどバラバラにされているため肉塊の山にも見える
そこへリアが鼻を抑えつつ近づいて死骸を調べる
「ご主人様、この魔物達、他の魔物にやられた訳ではないようです。切り口が余りにも綺麗で、しかも刀で斬った跡ととても似通っています」
「人為的なものだと?」
「そんな!この迷宮は封鎖してるんですよ、まさか先に誰かが入ってるなんてことは……」
「今は先を急ごう、とりあえずこの先に階段があるから降りるぞ」




