ギルドマスターとの邂逅
「はい、そこまでです」
刀が振り下ろされる所で俺の刀を消した人物が割り込んで来る。突然獲物が無くなったことに困惑し正気に戻る。いつの間にか正気じゃなくなるぐらいキレてたようだ
割り込んだ人物は赤髪のポニーテールを垂らした女性だ、刀を消したトリックが分からないし敵対していないかも分からないため警戒は解かない。
「あんた誰だ?」
「マリー・リリマイア、ギルドマスターの秘書です」
ギルドマスター、名前通りのこのギルドで一番偉い人の関係者ってことか。下手に出るとまずいだろうか、それに気配察知に全く反応が無かった。この感じは以前の魔物大量発生での戦闘中にアルフレッドが現れた時と似ている
「お騒がせして申し訳ございません。正当防衛とは言え少々やりすぎてしまいました」
「素直に謝罪出来ることは評価出来ますね。確かに今回はあなたに非があるわけではないので不問としましょう。ではこちらをお返ししますね」
俺の手元に消えた刀が戻ってくる。自分の刀ということを感触から確認し鞘に納める
「これ、どんなトリックなんだ?いきなり刀が消えたり出たり」
「あれご存知ないのですか?ラタルでは結構有名なんですが……転送スキルって聞いたことありませんか?」
「聞いたことないな」
名前からして指定した物を何処かに移動させる、テレポートみたいなものとは予想できるが……待てよ転送か、なるほど、俺の予想が当たってるなら気配察知に反応しないのも頷ける。別な所にいた人物が突然出現すれば気配察知なんかに引っかかる訳が無いよな。アルフレッドの時も恐らくこのマリー・リリマイアという人物に転送してもらったのだろう、ん、リリマイア……それにアルフレッドと同じ赤髪……まさか
「もしかしてあなたはアルフレッドの身内さんですか」
「はい、アルフレッドは私の兄ですが」
やはり血縁者だったか、アルフレッドが何の用があるのかは知らないが一応早く消化しておきたい。この妹の秘書さんに聞けば分かるだろうか
「俺はケータ・カガミ、ケータでいいです。実はアルフレッドにギルドに来るように言われたんだがアルフレッドはいますか?」
「兄さんは今外出中ですね。もうすぐ帰ってくるとは思いますが……」
外出中か、アルフレッドをこのまま待つのもいいがどうしようか。また後日訪問することにして依頼を受けるか、それともアルフレッドが帰るのを待つか
正直どちらでもいいのだが……、しかし別段急ぐ用事もないから待つ事にしようか
「うーん、それなら帰ってくるまで待っていよう。リアもそれでいいか?」
「仰せのままに」
リアも異論はないようだから決まりだな。マリーさんの方を向き意向を伝える。すると騒動を起こしてここでは待ちづらいだろうという事で客室に案内すると言われ好意に甘える。確かにここにいるのは嫌だな、他の冒険者の視線で針のむしろだ。
「それでは転送を使います。ケータさんとそちらの獣人の方でよろしかったですか?」
転送する人員を確認するマリーさんに肯定すると目の前の景色が一瞬で切り替わった。ここは、客室だろうか
「そこのソファに掛けといてください、今お茶をお持ちします」
「ありがとうございます」
進められるがままにソファに座る、お、これ低反発みたいに体沈む。力抜けるなぁ
座ったまま顔を後ろに向けるとリアは立ったままだった。マリーさんはもう退室しているようだ
「リアは座らないの?」
「奴隷ですので、私は後ろで控えさせてもらいます」
確かにメイドで奴隷の娘が主人の隣で座るのも違和感があるか、俺は気にしないがリアがそれを許さないなら強要するつもりもない
しばらくソファに力を預けているといい匂いが鼻腔をくすぐった
「お待たせしました、こちらハーブティーです」
マリーさんがティーセットを持って来てハーブティーを出してくれる。見た目は日本にもあるハーブティーのまんまだ、試しに1口飲んでみる
「うん、香りも見た目も俺の知るハーブティーだな。味も特に問題ない。というかこれ美味しいな」
「一応高級品ですよ、1杯銀貨8枚はします」
日本円で8000円ぐらいか、お茶1杯でそれは高すぎるな。これは味わって飲まないとバチが当たるだろうか、そう思いながらも飲む手が止まらず飲み干してしまった
「高級品と教えたのに一気に飲み干せるあなたは変わり者ですね」
何故かジト目で睨まれる。俺悪いことしたか?呆れられてるのは間違いないだろうが
「まぁそれはいいです。それよりもギルドマスターがあなたと話がしたいそうです」
「ギルドマスターが?なんでまた……」
素朴な疑問だった。何故会ったこともないのに、しかも話題となるのも先程の騒動ぐらいしか無いのに暇なのかと思ってしまう
「そりゃあ魔物大量発生をほぼ1人で解決したケータ殿に用が無いというのもおかしいだろう?」
「「……っ!?」」
突然横から掛けられた声に驚き、その場から離れいつでも抜刀出来るよう構える。リアも反応し俺を守るよう双剣を構え前に出る
「そう構えないでくれ、こちらに敵意はないさ」
「あんた、誰だ、いつからそこにいた」
視線の先にいる男は黒スーツをビシリと着ており足を組んで余裕を見せている。更にハーブティーも飲んでいるなんてどれだけ肝が座ってるんだこの男
「自己紹介が遅れたな、私はデューク。デューク・アルテインだ、ここの冒険者ギルドでギルドマスターをしている」
「何故俺のことを知っている」
「うちの優秀なSS冒険者アルフレッドから聞いてたんだ、あの魔物大量発生を1人で解決したっていう常識外れな旅人がいるってな」
デュークはこちらに視線を向け不敵に笑みを浮かべた




