不老不死
三人は検査結果が出るまでの間、診察室から出た待合室で待たされていた。
待合室の椅子が並ぶところで三人が並んで座る。
「どうします? とんでもない能力をナシが持っていたら」
冗談混じりに烏丸は言った。すると、それを聞いたDが言う。
「ハハハ、どんな能力だろうね? うちの仕事で役に立つ能力がいいな。例えばそう…」
Dは人差し指に顎を乗せて考える。
「不老不死とか。歳取らないし労働時間も過労死なんのその! 働かせ放題。一人で何人分でも働くことができるよ」
烏丸はため息を吐く。
「だから、うちはブラック企業なんですよ。人手不足に低賃金…」
「あー、翼君? そんなこと言っていいのかな? 僕は社長だよ。君の命を握ってると言っていい」
「わかりましたよ! すいません…」
「ってか、翼君も検査してみればいいのに。無能力者だけど検査したことないんでしょ? 何か大きな力が秘められてるかもしれないヨ」
「いや…俺はいいですよ」
そうこうしているうちに一時間が経過した。診察室から小鳥遊がマスクをつけてやってきた。
「検査結果がわかりましたよ」
「「で! 結果は!」」
Dと烏丸、二人が声を揃えて言うと、小鳥遊は目を見開いて言った。
「不老不死の能力です」
「……」
「……」
「……」
ナシまで唖然としていた。
「どうしよう…予想が当たっちゃったよ」
小鳥遊は興奮気味にして言った。
「私も驚きましたよ。不老不死は初めて確認しました」
「ってか、どうやって検査したの? それ」
「血中のKTS細胞を抽出し、様々な方法で細胞にダメージを与えます。その時に細胞独自の防衛本能が現れます。それがそのKTS細胞に宿った能力ということになります。が…」
小鳥遊は途中まで言いかけてから、ナシに視線を移した。
「ナシさんのKTS細胞はダメージを与えると与えた箇所が自己修復しますし、細胞のテロメアと呼ばれる部分が分裂を繰り返すたびに短くなって老化するはずですが、細胞が分裂してもテロメアの長さも変わらなかったことを確認しました」
烏丸は小鳥遊にナシを遺跡発掘の時に発見した時のことを伝えた。
「やはり不老不死の能力を持っていると考えていいでしょう。棺の状況や着ている衣服から察するに長い間、眠りについていたかのような状況ですね」
小鳥遊は続けて言った。
「ナシさんは何か埋められる前のことは覚えていたりはしないんでしょうか?」
ナシは首を横に振った。
「何も覚えてないんです。どうしてあんな場所にいたんでしょうか…」
しばらく沈黙があって小鳥遊が言った。
「しばらくうちに通院してみてはどうでしょうか? ここは特殊正体研究科です。有能力者の研究をしていますから、少しでも自分のことを知るきっかけを作ることができるかもしれません」
「うん、いいんじゃないかなナシ君。しばらく通ってみよう。医療費は会社で負担するよ」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだ。その代わり…」
Dはナシの手を大事そうに握った。
「たくさん働いてもらうよ⭐︎」
ナシは晴れ上がるような笑顔を見せた。
「はい! 僕、Dさんのためだったら何でもやります」
「あのなぁナシ、簡単にそういうこと言わない方がいいぞ。教育係の俺から忠告しておく」
「あー、社長命令! 社長命令! 翼君、直ちに今の発言を撤回しなさい。今ならまだ間に合うよ」
「わかりましたよ。すいませんでした!」
「あ、あの、では、ナシさんは通うということでよろしいでしょうか?」
Dと烏丸の間で行われる会話のラリーに恐る恐る小鳥遊が割って入った。
「あー、はいはい。とりあえず、しばらくナシ君は通うということで決まりで」
三人はそれを伝えて、病院を後にした。
そして、病院の帰り道だった。病院から出てオフィス街を歩いてる時だった。
「ってか、いい加減、ナシの服変えましょうよDさん。このボロ雑巾みたいな服流石に可哀想ですよ」
ナシの服はいまだに烏丸が発見した当時と同じで、今にも切れそうな布のような素材でできてている服を着ていて、風化したのかところどころ服に穴が空いている。元々は白色の服を着ていたのか服は茶色に変色している。
「確かに、仕事中に服が切れて裸になられても困るしなぁ」
そんな話をしていると三人が歩く道沿いに有名なスーツ屋が建っていた。
「どうだろう弊社も制服をスーツにしてみるというのは…」
「別にいいんじゃないですか。俺は賛成しますよ」
「スーツってなんですか?」
Dはナシの疑問に「うーむ」と考える。
「みんなで同じ服を着ることで仲間意識を高めるっていうのがスーツかな」
ナシはまたぱあっとにこやかな表情になる。
「スーツ! すごくいいです。僕、着たいですスーツ」
「じゃあ、買って行こうか」
Dは烏丸とナシの分のスーツを購入した。そして、株式会社Dでスーツが制服となった。




