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磐守姫と銀色の神獣 〜世界を守るために、祓師、神獣、妖と共に悪妖を祓う〜  作者: ハルモニア


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7話 許嫁と祓師になった経緯

 晴真が碧威(あおい)と初めて出会ったのは、晴真が痩せて標準体重になった頃だった。


  磐守神社本殿裏と裏山の間の場所で、「この子は 碧威君。今日から一緒に山登りの仲間に入れてあげて! 」と晴真は依芙姫(いぶき)から小柄できれいな少年、 碧威を紹介された。


 依芙姫から裏山で置き去りにされた病弱な男の子をご両親が見つかるまで 磐守家で面倒を見ることになったと晴真は聞かされていた。


 はじめ 碧威は山を登る体力もなかったらしいが、最近、だいぶ元氣(げんき)になってきたようだ。体を鍛えるために、依芙姫と晴真2人の山登りに参加したいとのことだった。


「僕は 碧威。よろしくね」と一見穏やかそうな自己紹介だったが、晴真は 碧威から鋭い敵意を感じた。


『ひょっとして、俺が 碧威から依芙姫を取るとでも思っているのだろうか』と晴真は考えた。


 晴真は「俺は晴真。よろしくな」と友好的に自己紹介をした。


 3人で10分ほど山を登った頃、

「ぜーぜー。依芙姫ちゃん……ぜーぜー。もうダメ! 」と 碧威が音を上げたようだ。 心配そうにしながら、依芙姫は「大丈夫? 」と 碧威の前にしゃがみ込んだ。


「 碧威君、私の背に乗って! おんぶしてあげるよ」


「えっ! いいの!? 」とパッと輝く表情の 碧威。


「私は頑丈だし、体力も余っているから大丈夫だよ。ほら、乗って」


「待て待て! 危ないだろう」と晴真は依芙姫の肩に手を置き止めに入った。「平気平気、残り半分くらいだし。念のため、晴真、私の後ろを見守っててよ」


「危なかったら後ろから支えるけど……。って、 碧威、体力が戻ったら自分で登れよな」と晴真は 碧威に釘を指した。


 結局、 碧威は体力が戻らなかったのか、依芙姫は 碧威を背負ったまま頂上まで登った。  碧威は至福の表情で依芙姫に背負われたままである。

 晴真は 碧威に無性に腹が立ち、「 碧威、お前、体力回復したんだろう。いい加減、降りろよな。デブの俺だって疲れても登っているんだぞ」と切れ気味に言い放った。


「デブ? 」とキョトンとすた顔で 碧威は晴真を見る。


「晴真はちょっと前までは太っていてタヌキに似ているから、タヌマと呼ばれていたんだよ」


「依芙姫、余計なこと言うなよ」


「晴真は山登りを頑張って痩せたんだよ。 碧威君も山登りを継続したら体力つくと思うよ」


「頑張る。でも手は繋いでほしい」


「いいけど……」


「お前いちいち甘えるんじゃねぇ! 」と 碧威にツッコミを入れた。

  碧威の依芙姫への甘える態度に何故かイライラしてしまう晴真だった。


「晴真はなんで怒ってるの? 」と尋ねる依芙姫。


「怒ってねぇよ」と言いつつも『俺だって手を繋いでほしいのに』と晴真は心の中で呟いた。


「 碧威君、手をつないだり、背負うのは体力がつくまでだからね」と 碧威に優しく諭す依芙姫。


「わかったよ」


 夏の暫くの間、3人で 磐守神社の裏山を山登りをする日が続いた。山登り以外にも3人で過ごした思い出がある。それは夏の縁日だ。

 夏祭りの間だけ、 磐守神社も賑やかになる。提灯の橙色の灯りのもと、依芙姫、晴真、 碧威は屋台や金魚掬いを巡ったりした。

 金魚をはじめて見た 碧威は「これ捕まえて食べるの? 」と聞いたりした。


「食べないよ。水槽で育てるんだよ」と依芙姫が説明して、 碧威は驚いていた。


 太鼓の音が鳴り響き、3人の笑い声が夜の闇に溶けていった。

 しかし、夏の楽しい思い出もやがて暗い思い出に変わった。 天満月(あまみつき)の夕方に依芙姫の前から 碧威は服を残したまま行方が分からなくなったからだ。

 依芙姫はかなり落ち込んでいて、「私が手を繋いでいたら、 碧威君は消えなかったかもしれない」と自分を責めていた。


 名字も戸籍もわからず、神社で神隠しのように消えてしまった子供のことなど警察は真剣に捜索をしてくれなかった。


「私をお嫁さんとしてずっと一緒にいてほしいと約束したすぐ後に、突然消えてしまったの……。こんな悲しい思いをするなら、もう親しい人を作りたくない」と依芙姫は泣いた。


 気丈な依芙姫をなんとかして慰めたくて、「俺がずっと傍にいるから、俺が守るから、泣かないでくれ」と晴真は言った。


 晴真は依芙姫の両肩をガシッと掴んで、

「裏山登って、おばさんのお菓子を食べたら、元氣(げんき)が出るんだろ? 」


「そうだね」と言って、少し元氣(げんき)を取り戻したのか明るい表情を見せる依芙姫。


 帰宅後、晴真は自分と似た小麦色の肌の父に「俺、依芙姫ちゃんとずっと一緒にいて守ってあげたい」と言った。

 急な息子の申出に驚く父だったが、

「そういえば、康晴が中々、息子を授からないから、養子か2人の娘さんのどちらかの許嫁を探していたな」と呟いた。


『福竹神社の跡継ぎは、3人の兄のいずれかがなるから、自分が 磐守神社の宮司の婿養子になるのは問題ないだろう』と晴真は思った。


「父さん、俺、 祓師になる。父さん、おじさんの友達なんだろ。うまく話をつけてきてよ」


「 祓師は危険を伴う仕事だぞ。わかってるのか? 」と父は凄んだ表情で晴真に問うた。


「わかってる。お願い」と晴真はなおも父に頼み込んだ。


「わかった。ただ期待はするなよ」


 晴真の父は「期待するな」と言ったが、有名でもない神社の宮司の婿養子になるだけでなく、 祓師を目指すと言った晴真の申し出を聞いて目を輝かせ康晴は喜んだ。

 康晴は晴真の手を握りながら、「晴真君、ありがとうありがとう」と感謝した。


 性格も良く高身長で端正な顔立ちの康晴であっても、無名の神社の宮司の嫁として嫁いでくれる女性は中々見つからず、婚活に苦労をしたという。康晴が34歳になってようやく里子と結婚でき、その翌年に依芙姫を授かったという。


 康晴は娘のどちらかが自分以上に婚活で苦労させることになるのがわかっていたので、晴真の申し出は親としては涙を流してしまう程嬉しいようだった。

 しかも、依芙姫と仲が良い晴真が婿に来てくれるのだからと一際嬉しいようだった。


 一方の依芙姫は、晴真が許嫁になったことについては、康晴が無理にお願いしたことと解釈したようだ。


 依芙姫は 碧威がいなくなったショックで、「ずっと一緒にいる、守る」と晴真に言われたことは、覚えていないようだった。いずれにしろ、晴真は依芙姫が覚えてなくても、依芙姫を守っていくことを誓った。


 しかし、6年後、依芙姫と晴真の前に、再び 碧威が現れ、晴真を悩ませイライラさせることになろうとは小学5年生の晴真はつゆも思わなかった。

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