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磐守姫と銀色の神獣 〜世界を守るために、祓師、神獣、妖と共に悪妖を祓う〜  作者: ハルモニア


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5話 150年前と6年前の真実

 晴真は気を失っている銀髪の少年を背負って 磐守(いわもり)神社本殿の一室まで運んだ。そして、 品々物之比礼(くさぐさもののひれ)死返玉(まかるかへしのたま)で銀髪の少年に噛まれた依芙姫(いぶき)の左腕を治療した。


「ありがとう。出血も止まったし、痛みも引いたよ」と依芙姫は晴真にお礼を言った。


「おぅ」


「じゃあ、社務所に行くね。お父さんが帰ってきたら、この部屋に連れてくるから。気を付けてね」と心配そうに言った。


蜂比礼(はちのひれ)の布でグルグルに巻いているから大丈夫だ」


「そう? じゃあ、またね」と言って、依芙姫は出て行った。


 晴真は大きな 蜂比礼の布でグルグルに包んだ銀髪の少年を見張っている。 蜂比礼の布は 悪妖(あくよう)や邪霊からの攻撃を祓うだけでなく、包んだり上に被せることで 悪妖や不浄なモノを封じることができるのだ。


「……うっ、ここは……? 」と銀髪の少年の意識が戻ったようだ。


「目が覚めたか……。なぜ、お前は依芙姫を襲った? 」


 銀髪の少年は晴真の問いには答えず、もぞもぞと身体を動かそうとする。


「無駄だ。 蜂比礼で包んでいるからお前の動きは封じている」


「僕は 悪妖ではないからこの布は効かないよ」と言って、銀髪の少年は 蜂比礼の布からスルッと抜け出した。


 驚愕しながら「馬鹿な…… 悪妖でないなら何故、依芙姫の命を狙う? 」と晴真は銀髪の少年に尋ねた。


 銀髪の少年は鼻をクンクンさせて

「君はタヌマかな? 大きくなったね……」


「なっ……なぜ、お前がその名前を知っている? 」

 

 晴真はタヌマと呼ばれていた忌まわしい過去を思い出し、銀髪の少年を睨みつけた。


「僕は碧威(あおい)。6年前にここに住んでいた」


「あ…… 碧威!? 髪や眼の色が違う。昔は茶髪だった……」


「覚醒して色が変わったんだ……」


「覚醒? じゃあ、お前が 碧威だとして、なぜ、すき……いや、世話になった依芙姫を殺そうとした? 」


「それは……記憶を封じられ洗脳されたから……」


「誰に? 」


「父に……」


「なんで、急に記憶が戻ったんだ? 」


「依芙姫ちゃんの血を飲んだ影響かな……あっ! 依芙姫ちゃんに会わせて! 謝らなきゃ……」と必死な表情で訴える 碧威。


「そんなことさせるわけねーだろ」と晴真は懐に入っている祓師(はらいし)の武器を取り出そうとする。


「さっきも言ったけど、僕は 悪妖じゃないから祓いは効かないよ」と言いながら、 碧威はすくっと立ち上がったが、晴真が腕を広げ戸を開けさせないようにする。


「どいて……」


「どかねーよっ」


  碧威は鼻をひくひくさせながら「向こうから来るみたいだ……」と呟いた。程なくして康晴と依芙姫が戸を開け部屋に入って来た。


 晴真は康晴と依芙姫に、 碧威との会話の内容を伝えた。

 依芙姫は記憶を消されていたとはいえ結婚の約束をした初恋の少年に2度も殺されかけたことにショックを受けた。


 腕を組みながら、「 碧威君、(あやかし)でないとして君は一体、何者なんだい? 」と康晴が 碧威に尋ねる。


「僕は……狼の神獣(しんじゅう)です」


「神獣、なるほど。どうりで結界も 蜂比礼も祓いも効かないわけだ……」


「狼の神獣なんてはじめて聞いた」と 碧威を睨みながら晴真。


「一通り説明します」

碧威は自分の先祖や依芙姫を殺そうとした経緯を語り出した。


「僕のご先祖様は約150年前まで普通の狼でした。その頃、時の権力者がご先祖様を駆除し始め、ご先祖様は絶滅寸前に追い込まれました」


「明治政府によるニホンオオカミの駆除か……」と康晴。


「ニホンオオカミは絶滅したはず……」と晴真。


「人間の前から姿を消したので、表向きは絶滅したのでしょう。ただ、まさに絶滅寸前のところを、ご先祖様は森林の神様である五十猛神(いそたけるのかみ)に救われたようです。

救う見返りとして、『森の命の循環を守る《森の守り人(もりびと)》となるならば力を与えよう』と五十猛神からご先祖様は言われました。

《森の守り人》となることを選んだ数匹の狼が人に近い姿となり、現世(うつしよ)隠世(かくりょ)の狭間に生きる《森の守り人》として神獣となりました」


 150年前に絶滅寸前となったニホンオオカミが生き残り、《森の守り人》として現れた 碧威が目の前にいることに、依芙姫達3人は驚きを隠せなかった。


  碧威は衝撃を受けている3人をよそに話を続けた。


「僕の話に移りますね。僕達、狼の神獣は6歳になると覚醒し巨大な狼の姿に変身することができるようになります。同時に、身の安全のために人間に擬態できるよう変化術も身につけます。何とか、僕は人間に化ける変化術を身につけられたのですが、生命エネルギーの源である神氣(しんき)が少ない僕は体が弱く8歳になっても狼に変身することはできませんでした。 神氣溢れる 磐守(いわもり)神社の巨石群にいれば、体内の 神氣の量が増大して狼に変化できるかもしれないということで、母にここの巨石群に置き去りにされたのです。


自分の情けなさと母に置いてかれた悲しさで泣いていたところを、依芙姫ちゃんに声をかけられました。皆さんのご存知の通り、その後、僕は|磐守家で過ごすことになりました。


巨石や依芙姫ちゃんから漂う 神氣のお陰で、僕は少しずつ元氣(げんき)になっていきました。


しかし、依芙姫ちゃんと最後に話した天満月(あまみつき)の夕方に、突然、狼に変身してしまったのです。氣が動転してしまった僕は思はず木の陰に隠れてしまいました。

その後、母が僕を迎えに来て、森の狭間で《森の守り人》となるべく修行を続けてきたのです」


 何か事情があったにせよ「帰る」と一言言ってくれれば良かったのにと思いつつも、依芙姫は、初めて出会った泣きはらした姿、少しずつ元氣になっていく様子、結婚の約束をした後、服を残して姿を消してしまった様々な 碧威の姿を思い出していた。

【読者の皆様へ】

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