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磐守姫と銀色の神獣 〜世界を守るために、祓師、神獣、妖と共に悪妖を祓う〜  作者: ハルモニア


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2話 依芙姫と晴真の出会い

 磐守(いわもり)神社から自宅までの帰り道、晴真ははじめて依芙姫(いぶき)と出会った6年前の出来事を思い出していた。

 小学校5年生になった頃、晴真はまん丸と太っていた。


「ぽんぽこタヌキのタヌマー」


「葉っぱをお菓子に変えてみろよー」


「なんだよ、できないのかよ。出来損ないのタヌキのタヌマー」


 当時の晴真の容姿は太めの体形に小麦色の肌、黒縁の眼鏡をかけていたため、タヌキに似ていた。晴真は3人の級友から“タヌキ”と晴真の“ま”をからめて「タヌマ」と不名誉なあだ名をつけられ揶揄われていた。


「こぉらー、あんた達やめなさいよ」


 小学校5年生にしては背が高い少女、磐守 依芙姫がやって来た。高身長で強くてかっこいいとクラスの女子達の間で騒がれているので、別のクラスの晴真でも依芙姫の存在を知っていた。


「あんた達、3人で寄ってたかって1人をいじめるなんて卑怯よ」


「うわっ、男姫がやって来た」


「なんですって!? 私が男姫(おとこひめ)なら、つるんでしか行動できないあんた達は女々(めめ)しーズよ」


「なんだと!? 」と級友は殴り掛ろうとしたが、依芙姫はささっと避ける。


「今度はこっちの番よ。さぁて、新しく習った技でも試させてもらおうかな……」と依芙姫が自分の手をバキバキと鳴らし始めるのを見て、3人の級友は恐れをなしたのか逃げていった。


「福竹君、大丈夫? 」


「俺のこと知っているの? 」と驚く晴真。


「うん。福竹君のお父さんは福竹神社の宮司さんでしょ。私のお父さんも神社の宮司をやっているんだ。私のお父さんと福竹君のお父さんは大学のお友達みたいで、この前、福竹君のお父さんと会ったんだよ」


 晴真の苗字は福竹であり、晴真の父は金運・豊かさで有名な福竹神社を経営している。


「えっ!? そうなの」


「その時、福竹君のお父さんに私と同い年の息子がいて、うちの息子も私みたいに強くなって欲しいと言われたんだ」


 失礼なことを言った自分の父に晴真は絶句した。


「福竹君にも、私にも失礼だよね……。私は一応、女子なのに……」と文句を言いつつケラケラと笑う依芙姫。


「それより、なんで言い返さないの? 」と依芙姫は真剣な表情で聞いてきた。


「馬鹿な奴らは相手にしたくないんだ」


「でも、あんな風に言われて悔しくないの? 」


「タヌキに似ているのは本当のことだし……」


 タヌマと呼ばれるのは正直不愉快で悔しいけど、ダイエットができないから仕方ないと晴真は諦めていた。それに、この先、馬鹿な連中とずっと一緒にいるわけでないので、我慢できる。


 にかっと笑いながら依芙姫は「ねぇねぇ、それじゃ痩せてあいつら見返さない? 」と聞いた。


「無理だよ。お菓子を食べるの止められないし、運動も苦手だし……」


「厳しい運動しなくても大丈夫だよ。ウチの裏山を上り下りするだけで、ちょっとした運動になるよ」


「え……山登り……なおさら無理だよ……」


「山といっても低いから大丈夫だよ。それと、私のお母さんが作ったお菓子美味しんだよ。太りにくい美味しいお菓子を作ってもらうようお願いをするから一緒に山登りしようよ」


 晴真は『山登りなんてデブには無理なんだ』と言おうとすると、


「痩せたら福竹君はかっこいいと思うよ」と依芙姫は突然、眩しいほどの爽やかな笑顔で言ってきた。


「とりあえず、一回だけでも挑戦してみようよ! 」


 依芙姫のしつこさに根負けした晴真は「仕方ないな、1回だけだよ」と思いながら、「うん」と返事をしてしまった。


 磐守(いわもり)神社の裏山の上り下りは、低山といえど、太った子供にはとてもきつかった。

 ぜーぜーと息を切らし汗だくの晴真を依芙姫は後ろから優しく背中を押しながら「頑張れー頑張れー」と励まし続けた。


 何とか頂上付近まで上ると、複数の大きな丸びを帯びた巨石が立ち並んでいるのが見えてきた。


「すごい、こんな巨石始めて見た」


 巨石群を間近で見るために、なけなしの気力を振り絞って頂上まで上がると、巨石群以外に田園風景や森、遠くには海も見える。風が吹き、汗ばんだ体には心地が良い。


「すごい、登れたじゃん! 」と嬉しそうに拍手をする依芙姫。


「うん」


「この景色を見ると疲れも吹っ飛ぶでしょ! 」とキラキラした表情で力説する依芙姫。


「そうだね。……僕、登れた」


 依芙姫と違い晴真は汗だくだが、太っている自分が何とか登れたことがとても嬉しかった。


 2人は巨石群近くまで移動した。

『大きな巨石は自然にできたものなのか? それとも誰かが3個の巨石をここまで運んだのか? 』と晴真は興味津々に巨石群を見つめた。


「この巨石の傍にいると、元氣をもらえると言われているんだ」


「え~まさかぁ」と言いながらも、晴真は巨石群から温かなエネルギーを感じた。そういえば、傍にいると依芙姫からも同じようなエネルギーを感じる気がすると晴真は思った。


「少し休憩してから降りてお菓子食べよ」


 山登りをして心臓がドキドキするのか、かっこいいんだけど可愛く見える依芙姫の笑顔にドキドキしているのか、この時の晴真にはわからなかった。


 山から降りた後、依芙姫の母・里子が作った甘さ控えめのあんみつを食べた。運動後のお菓子はとても美味しいこと、運動すると気持ちが良いことを晴真は初めて知った。

 この日から晴真が痩せるまで、学校帰りに山登りをするのが2人の日課となった。

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