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磐守姫と銀色の神獣 〜世界を守るために、祓師、神獣、妖と共に悪妖を祓う〜  作者: ハルモニア


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13話 高温の神楽市

「この尋常でない熱さは雪女でなくても、川や土も干上がりそうだな」とうんざりそうに手でパタパタと扇ぐ晴真。


「太陽の光はそんなに強くないのに、なんでこんなに熱いんだろう?」と依芙姫は太陽を見ながら2人に言った。


 熱さの疑問を抱く2人に碧威は「妖が原因じゃない? 」と言った。


「なぜそうだと言える? 」と晴真。


 狼の耳と尻尾をうなだれ、いかにも臭くてたまらないという表情をしながら碧威は「最近、汗臭い獣の臭いが漂っているから……」と言った。


「狼の嗅覚はすごいね。私は何にも臭わないよ。でも、その臭いは鳥、鹿や熊とかの臭いだったりしないの?」


「うん。晴真、熱さを操る妖とか知らない? 」


 腕組をしながら晴真は考えを巡らし、「(ひでりがみ)ぐらいしか思いつかない……」


「魃って? 」


「体内の熱を使って旱魃かんばつを引き起こす悪妖だ。魃に旱魃を引き起こされるのを恐れた昔の人間が法師に何とかしてほしいと頼み、魃に《ひでり神》として祀ると偽って誘い出し、法師によって封印された悪妖だ」


「大蛇と同じで封印された妖なの? 封印が破られたのかなぁ? 」


「その可能性はあるかもしれない……」


「なんで悪妖を祓わないで神として祀ったの? 」


「この前の大蛇と同じで、退治できなかったからと言われている。今みたいに祓師の神具のレプリカを量産はできないし、祓師が全国どこでもいるわけでないからな……」


「問題はどうやって見つけるかだよね」


「碧威、特定できそうか? 」と晴真は碧威に視線を向ける。


「うーん。1箇所に留まらず動き回っている感じがするから難しいかも……。鼻と耳をもっと鋭敏にできたらいいんだけど……。でも距離が離れ過ぎると難しいかも……」と碧威の狼の耳と尻尾が元氣なく垂れ下がる。


「そうだ! 」と突然叫ぶ晴真。


「何か良い方法があるの? 」


十種神宝(とくさのかんだから)沖津鏡(おきつかがみ)を使う! 」


「沖津鏡って? 」


「沖津鏡は遠くのものを映し出せる鏡だ」


「へ~すごいね! 」


「ただ、俺は沖津鏡は持っていないから、お義父さんに借りないといけない」


「じゃあ、お父さんが帰り次第、聞いてみようよ。で、どうやって倒すの? 」

「魃はとても素早い悪妖みたいだから、俺一人で祓うのは無理だ。他の祓師達に協力してもらうしかない」


「ねぇ、私も行くよ」


 2人の会話を黙って聞いていた碧威が狼の耳をピクッとさせた。


「ダメだ、危ないだろ」と晴真。


「それなりに強い悪妖なら多くの神氣が必要でしょ」


「そうだけど、行くのはお義父さんが許可を出してくれたらだな」


「わかったよ」


「依芙姫ちゃんが行くなら、僕も行くよ」


「えっ。本当? 」


「依芙姫ちゃんを守る必要があるから。後、この熱さで大地が干上がってしまったら、森の木々が枯れてしまう。そのことは《森の守り人》として看過できない」


「碧威君、ありがとう」と依芙姫は嬉しそうに言った。


「碧威が来るとなると、他の祓師には頼めないな……」


「でも、碧威君は大蛇との戦いでは人間には到底できない活躍をしてくれたし、ベテランの祓師が来てくれるわけでもないから碧威君の加勢は頼もしいと思うよ」


「依芙姫ちゃん」と嬉しそうに尻尾を振り振りさせながら依芙姫に抱きつく碧威。


「碧威、離れろっ! 」と怒りの形相をした晴真は碧威を依芙姫から引きはがした。


「ちぇっ」とふてくされる碧威。


『碧威君が狼の姿だったらワシャワシャできたのに……』と妄想する依芙姫。


 悪妖の話題には触れず、3人はそれぞれ別の想いを抱きながら康晴の帰宅を待つのだった。


 晴真は帰宅した康晴に神楽市を襲う異常な熱さの原因は悪妖の魃の可能性があることを説明した。


「なるほど、試しに沖津鏡で見てみるか」と康晴は棚から沖津鏡を取り出した。


「ひふみよいむなやこと 神楽市の熱さの原因となるものを映したまえ」と唱えた。


 すると、沖津鏡は手と足が1本しかない猿のような顔の毛むくじゃらの妖を映し出した。

 不気味な姿をした妖を見た一同は一瞬静まり返った。


 沈黙を破ったのは康晴で「確かに、これは(ひでりがみ)だな……」と言った。


「足が一本のくせに、動きが素早いね。今、どこら辺にいるんだろう? 」


 沖津鏡に映る魃の後方を見ながら康晴は「磐守神社の南15km先の果樹園にいるな」と言った。


「今から行くの? 」


「暗い中で獣の悪妖と戦うのは夜目がきく碧威君以外は危険だ。 夜が明ける早朝がいいだろう」


 4人は魃の討伐の作戦会議を行った。


「魃の弱点は……」


「令和の今、ありますかね? 」


「代用品を考えないと……」


 晴真が康晴にスマホの画面を見せながら、「これはどうですか? 」


「いけるかも……。知り合いの農園にお願いをしてみる」と言って、電話をしに康晴は部屋から出ていった。晴真は依芙姫と碧威の方を向き、「明日はよろしくな」と言って自分の家へ帰っていった。


 翌朝午前4時、昼間ほどの熱さではないが、空気は既にムッとしている。

 磐守神社の鳥居の前で、Tシャツとズボンを履き左耳にイヤホンをつけた依芙姫、狼姿の碧威、康晴が晴真を出迎えた。


 晴真はTシャツにハーフパンツの格好をしている。


「おはよう晴真君」


「おはようございます」と挨拶を交わす。


「さて、準備はいいかな? 」


「うん」


「はい」


 康晴は沖津鏡を手に持ち、「ひふみよいむなやこと 熱さの原因を作っている魃を映し給え」と唱えた。


「魃は昨晩からさほど移動していないようだ。今はここ磐守神社から南西20キロ地点のミカン畑にいる。私がここで沖津鏡で魃の位置情報を依芙姫に伝える。くれぐれも気を付けてくれ。3人ともよろしく頼むよ」と心配気に送り出す康晴。


「はい、行ってきます」と言って、蜂比礼(はちのひれ)の布で姿を消した依芙姫と晴真は碧威の背に乗り、魃の追跡のために走り出した。

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