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磐守姫と銀色の神獣 〜自然を守るために、祓師、神獣、妖と共に悪妖を祓う〜  作者: ハルモニア


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10話 チームプレイ!?

 晴真は蜂比礼(はちのひれ)の布で、大蛇が放った強大な赤黒い火球を祓った。


「ほぉ、人間のくせにやるな。だが、避け続けられるかな?」


 大蛇は人間の頭程の大きさの赤黒い火球を晴真に向かって連続して放った。「チッ」と晴真は連続で放たれた火球を蜂比礼(はちのひれ)の布で祓う。


「キリがないな」


「ほら、ほら、どうした? 」


 突然、「アォーン! 」と激しいおたけびが辺り一帯に鳴り響いた。


「これ以上木々を燃やすな。僕も相手だ」と碧威(あおい)は大蛇に飛びかかった。


挿絵(By みてみん)


「狼のくせにこしゃくな。お前から消し炭にしてくれるわ」と言って、大蛇は連続して再び火球を放つ。


 碧威(あおい)は難なく火球をかわしていき、爪で大蛇の胴体に切りかかった。

 しかし、思ったより大蛇の鱗は硬く、ちょっとした引っ掛き傷ができたくらいだった。そこへ大蛇が息を吸い込み、喉を膨らませ、巨大な火球を碧威(あおい)に向けて放つ。


 碧威(あおい)は素早く横に跳躍し火球を避けようとしたが、避けきれず銀色の尻尾の先っぽに当たってしまった。


「ギャン! 」と尻尾を地面に何度も打ちつけ、慌てて火を消す碧威(あおい)


 火は消えたが、尻尾の先っぽが黒く縮れて焼け焦げてしまってた。

 碧威(あおい)はひるまず大蛇に飛びかかり鋭い爪で攻撃を仕掛けたが、大蛇の硬い鱗に阻まれ大したダメージを与えられないでいる。


 碧威(あおい)と大蛇の攻防を見守りながら、晴真は刀身がない柄を取り出し手に構えた。次第に柄から透明に近い薄水色の神氣(しんき)が放出され短刀の形になった。


『この八握剣(やつかのつるぎ)で、今の俺の力量で大蛇を祓えるだろうか』と晴真は自問自答した。晴真は祓師としては中級レベルで、これまでに上級の悪妖(あくよう)を単独で祓ったことはない。ちなみに、八握剣(やつかのつるぎ)十種神宝(とくさのかんだから)の一つで祓師(はらいし)悪妖(あくよう)を祓う神具の一つである。


碧威(あおい)も戦っているんだ。依芙姫(いぶき)を守るためにもダメもとでもやるしかない』と晴真は腹をくくり、大祓詞(おおはらいことば)を唱え出した。


「させるか! 」と大蛇は叫び、空に向かって火球を吐き出した。

 火球が弾け、火の雨が辺りを降り注いだ。晴真はとっさに蜂比礼(はちのひれ)の布を頭にかぶったことで、火の雨からは難を逃れたが、大祓詞(おおはらいことば)を最後まで唱えられなかった。


 火の雨で碧威(あおい)の銀色の毛並みが数か所焼け焦げてしまっている。碧威(あおい)は火傷の痛みをこらえながら跳躍し大蛇の胴体に噛みついた。

 噛み付かれた胴体から血が滴り落ちた。ゴフッと血を吐きながらも、大蛇は長い胴体で碧威(あおい)に絡みついた。大蛇の胴体が碧威(あおい)を締め上げ、メキメキと骨が軋む音と碧威(あおい)の叫び声が響く。


 晴真と碧威(あおい)が傷付きながらも戦っている様子を見ていた依芙姫(いぶき)は、いても立ってもいられず、大蛇の目にめがけて石を投げつけたが、当たらなかった。


「他にもいるのか?」と再び空に向かって火球を放ち、火球が分裂して火の雨が降り注いだ。


 蜂比礼(はちのひれ)の布で防いだことで火の雨のダメージはなかった依芙姫(いぶき)だが、『違う。分け与えなさい』と突然、脳裏に女性の声が微かに響いた。


『えっ? 分け与えるって……』


依芙姫(いぶき)ちゃん! 晴真に触れて! 」と碧威(あおい)は叫び、大蛇に締め上げられながらも、再び胴体に噛みついた。


「ぐっ……妖気を吸われる……。こしゃくな。まずはお前を喰うてくれるわ」


 大蛇は碧威(あおい)をひと飲みしようと大きく口を開く。


 その隙に依芙姫(いぶき)は晴真の元に走り、手を握った。

 手を通して依芙姫(いぶき)神氣(しんき)が晴真に流れ込み、八握剣(やつかのつるぎ)の刀身が短刀くらいの大きさから三回りほど大きくなり光を放った。


「かしこみかしこみ申す。瀬織津姫(せおりつひめ)速開都姫(はやあきつひめ)氣吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)速佐須良姫(はやさすらひめ)祓戸の大神(はらえどのおおかみ)、あの大蛇を祓い給え清め給え」と晴真は唱えた。晴真は両手で八握剣(やつかのつるぎ)を構えた。


 一方、碧威(あおい)は大蛇が一飲みをしようとしているのを寸前で避けた。

 

 ドゴッ!


 碧威(あおい)は大蛇に思いっきり頭突きを喰らわした。その隙に、晴真は八握剣(やつかのつるぎ)の刀身を大蛇の左こめかみに突き刺した。


 徐々に大蛇の体が黒い塵が舞うように霧散していく。

「人間と狼風情に祓われるとは無念……」と完全に大蛇は消失した。


 大蛇に締め上げられ、あちこち火傷をしている碧威(あおい)は立っていられず、どさっと地面に倒れこんだ。


碧威(あおい)君!! 」と心配そうに駆け寄る依芙姫(いぶき)碧威(あおい)の琥珀色の瞳の中に赤黒いシミが滲んでいた。銀色の尻尾は垂れ下がっている。


「大丈夫? 」


「なんとか」


碧威(あおい)、少し体を浮かせろ」


 碧威(あおい)は何とか胴体を浮かせ、晴真は品々物之比礼(くさぐさもののひれ)の布をサッと敷き、碧威(あおい)を布の上に横たわらせた。

 そして、晴真は死返玉(まかるかへしのたま)を取り出し、ゆらゆらと揺らしながら、「ひふみよいむなやこと ふるべ ゆらゆらと ふるべ」と唱えた。


「どうだ。火傷や骨の痛みは? 」


「引いたけど、まだ……」と言って起き上がった碧威(あおい)は、依芙姫(いぶき)の顔をベロベロと舐め始めた。


「ちょっと……」と依芙姫(いぶき)碧威(あおい)の顔を手で押しやる。


「うん。これで神氣(しんき)も回復したしもう大丈夫だよ」


 碧威(あおい)の瞳に滲んでいた赤黒いシミが消えた。垂れていた銀色の尻尾もブンブン振っている。 顔を真っ赤にした晴真が「神氣(しんき)の回復っていっても顔を舐める必要はあるのか!? 」と言った。


「えっ、だってまた神社まで二人を運ばないといけないし」

と言い合う碧威(あおい)と晴真に対し、

「そんなことより誰かが来る前に早く立ち去った方がいいんじゃない?」と依芙姫(いぶき)は2人を仲裁した。


 依芙姫(いぶき)と晴真は蜂比礼(はちのひれ)の布を被り、碧威(あおい)の背に蜂比礼(はちのひれ)の布を被せ、晴真は「ひふみよ、いむなやこと、我々の姿を隠し給え」と唱え、2人と1匹の姿は消えた。


 碧威(あおい)の背に乗り、岩焼寺(がんしょうじ)がある山を通り過ぎると、だいぶ火は鎮火されているようだった。先ほどまで大蛇と戦った林の車道にも、すぐに消防車は向かい火も沈下されるだろう。


碧威(あおい)君、なんで晴真に触れてと言ったの? 」


「大蛇のところまで二人を乗せて走っても疲れなかったのは、依芙姫(いぶき)ちゃんの神氣のお陰だと思ったんだ。依芙姫(いぶき)ちゃんに触れることで晴真の神氣(しんき)も高まり、心置きなく大蛇を祓えるかと思ったんだよ。何かモタモタしている感じだったから……」


「別にモタモタしてたわけじゃ……、確かに神氣(しんき)で練り上げた八握剣(やつかのつるぎ)の刀身が大きくなったな」と不満げに晴真は言った。


依芙姫(いぶき)ちゃんの力は触れることで、生物を元氣(げんき)にするだけでなく、生物が持っている神力を倍増する力があるんだと思う」


 磐守神社に着いてすぐに、晴真は靖晴に大蛇のことを報告し、自分の家へ帰った。


 碧威(あおい)は着替えを持ってきてもらった後、人型に戻り着替えた。「夕食までゆっくり休ませて」と言って碧威(あおい)は用意された部屋で休んだ。 依芙姫(いぶき)も自分の部屋に戻り、ベッドに寝転がりながら

「今日は大変な1 日だったなぁ……」と呟いた。


『もふもふした狼姿の碧威(あおい)君、もっと撫でたかったなぁ』


 犬好きの依芙姫(いぶき)だが、磐守(いわもり)家では犬を飼えないので、外出時にすれ違う犬を遠くから眺めるだけだった。


「今日は大蛇との戦いで疲れているから、次、碧威(あおい)君が狼に変身した時に撫でさせてもらおう」と依芙姫(いぶき)は呟いた。


「それにしても、祓師(はらいし)の娘なのに祓いの力は使えなくて歯がゆかったけど、私なりに役に立てることがあったのは嬉しかったな……」と肉体的な疲れを感じながらも、晴れ晴れした気持ちになる依芙姫(いぶき)だった。

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