31 人の上に立つという事2
「つーかさぁ、人の上に立つという事って、一体何を勉強する事が有るんだよ? 上に立つ奴は立つし、立たない奴は立たないだけだろ」
「いえいえっ。そういう事では御座いません。人の上に立つ事が出来る方は、共通してある三つの事を分かっていらっしゃる、或いは無意識の内に行って居られるのです」
「三つの事…?」
指を三本立てたエリッタに、ルデルト王子は首を傾げ眉を寄せた。上に立つだけで、そんな物がわざわざ有る物なのかと疑問に思う。
「とても、大事な事で御座います。人の上に立つ方は、最初誰しもが持って居られるのですよ? ですが、其れも時が経つに連れて、権力や財力や傲りによって皆様無くされてしまうのです。そうなってしまった方は、滅びの道を辿ってしまわれるので御座います」
「だから、其れは一体何なんだよ!」
まるで物語の様に語って行くエリッタに、ルデルト王子は結論を急ぐ。
ルデルト王子は、エリッタが何を言って居るのか分かって居たのだ。
滅びの道を辿るとは、謂わば王で在った者が自滅したか、何者かの手によって玉座から引き摺り落とされたかのどちらかだと。
そして其れに、己の祖父も含まれて居る事も。だからだろう、ルデルト王子はその話を其れ以上聞かない為に、エリッタを急かした。
「大事な事は、三つ有ります。其れは――慈悲深さと教養。そして、力を抜く事です!」
「……」
「……」
「……はあ!?」
エリッタの自信満々の言葉に、沈黙する事数秒。ルデルト王子は、何とも予想外のエリッタの言葉に、数秒後驚きの声を上げた。
「お前、マジで言ってるのか!?」
「勿論で御座います! マジもマジ、大マジです」
「そんな事が大事な事なのかよ!? 簡単過ぎだろ!」
エリッタの自信満々な言葉に、まさかそんな事だったとは予想もして居なかったルデルト王子は、有り得ないと鼻で笑った。
しかしエリッタはルデルト王子に、簡単では無いと首を振る。
「簡単な事では御座いません。簡単な事の様に見えて、実はとても難しい事なので御座います」
「ふーん…。何がどう難しい事何だよ」
「人は誰しも間違いを起こしてしまう物です。一つの考えに突っ走ってしまい、人の意見を聞かなくなってしまったり等。トラブルという物は付き物御座います」
机に頬杖を付き、ルデルト王子は黙ってエリッタの話に耳を傾ける。
「その様な時、常に組織の一人一人の事を優しく思いやる慈悲深さをトップの人間が持っていらっしゃらないと、その組織はとても崩れやすくなってしまいます」
「……」
「生きて居れば失敗はしてしまう。失敗を為さらない者等居る筈が御座いません」
「……」
「例え誰かが失敗しても、其れを責めるのでは無く優しく受け止め、その責任は全て自分が取ると仰って下さる懐の深さ」
「……」
「責任感の強さや仲間を思いやる、そんな慈悲深さがとても大切なのです」
「……」
ルデルト王子は、エリッタの話に一切口出しをしなかった。何時もならば口を挟む筈のルデルト王子なのだが、今回は違う様だ。
ルデルト王子はエリッタの言葉に、エリッタの話す事柄に、ある人物が頭に浮かんだ。
一人一人の事を思いやり、手違いやわざとでは無く罪を犯してしまった者を、責めるのでは無く大丈夫だと受け止め、そしてその責任を自らが取ると朗らかに笑い告げる人物。
其れに当てはまる人物は、ルデルト王子が知る限りでは一人しか居ない。
その人物を思い浮かべてしまう自分に、ルデルト王子はエリッタにバレない様、自嘲気味に笑った。
しかしルデルト王子の変化に気付いて居ないエリッタは、更にどんどん話を続ける。




