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30 人の上に立つという事1

「と、いうのは冗談で御座います」

「……は?」


 エリッタの言葉にルデルト王子は一瞬呆け、その後素っ頓狂な声を漏らした。先程まで何の感情も、表情も無かった筈のエリッタが、今は何時もの様に笑みを浮かべて居る。にっこりと微笑みそんな事を口にしたエリッタに、ルデルト王子は目を瞬かせた。


「申し訳有りません、ルデルト様。余りもルデルト様がムキになって居られましたので、(わたくし)、少々からかってしまいたくなりまして」

「な、んだと…?」


 くすくすと笑ってそう言うエリッタに、何が起きたのか分かって居なかったルデルト王子が漸く此の事態を理解出来たのか、ひくひくと口元を引き攣らせ居た。


「からかいたくなっただあ?」

「はい。ルデルト様には本当に失礼な事をしてしまったと思って居ります。ですが、ルデルト様が余りにも本気になさるので、私も調子に乗ってしまいました」

「おっ前は……っ」


 笑いを堪えつつ頭を下げるエリッタに、ルデルト王子は頬が徐々に赤く染まり、体をプルプル震わせ始める。又してもエリッタの嘘に踊らされたルデルト王子は、先程のエリッタに少しでも恐怖してしまった自分が恥ずかしく、そして未だに笑って居るエリッタに怒りで体が震える。


「此の馬鹿野郎があああ!!!」


 顔を真っ赤にして怒鳴るルデルト王子に、エリッタは楽しそうに笑ったままだ。ルデルト王子は本気で怒って居るにも関わらず、エリッタには其れが全く通じで居ないのだろう。又してもエリッタに振り回れてしまったルデルト王子は、もう振り回されないと誓った筈なのに何をやってるんだと自分自身にも苛々して居た。

 だが、其れと同時に良かったとも思った。

 先程のエリッタは嘘なんだと。先程のエリッタはエリッタの冗談で、何時ものエリッタがエリッタで良いのだと。メイドのくせに王子である自分をこうしてからかう様な、たまに見せる年相応な姿もエリッタなのだと。

 あの感情も、表情も分からない様な、そんな姿はエリッタでは無かったのだとルデルト王子は内心ほっとした。冗談で良かったと、嘘で良かったと、本当にそう思った。

 今も目の前でくすくす笑って居るエリッタが、自分が好きになったエリッタで良いのだと。ルデルト王子は本気で安堵したのだった。


「もう、こんな事二度とするなよ!! 次したら今度はマジで許さないからな!?」

「はいっ。もう致しません」

「本当だろうな!?」

「勿論で御座います! ですが……」


 顔を真っ赤にしたまま、そう捲し立てるルデルト王子にエリッタはにこりと笑いコクリと頷く。其れにまだ信用出来て居ないルデルト王子だったが、其れでも何時も通りの様子に戻ったエリッタを満足げに見たが、エリッタは其処でふと言葉を切った。

 其れにどうしたのかと問うルデルト王子にエリッタは、


「余り私等に、幻想はお持ちになら無い方が宜しいですよ」


 スーッと一瞬で何とも冷ややかな表情を浮かべ、安堵して居たルデルト王子に最後に爆弾を落とした。だがルデルト王子が驚く間も無くエリッタの表情は直ぐに元に戻っており、ルデルト王子には言い知れぬ不安感だけが残された。


「其れではルデルト様! そろそろお勉強の時間で御座いますよっ。ふざけ過ぎてしまい、無駄な時間を過ごしてしまいましたし!」

「そ、れは……お前が悪いんだろ!?」


 パンッと手を叩き微笑するエリッタに、ルデルト王子は未だに残る不安感というか、疑心感を拭わぬまま、其れでもエリッタに怒鳴った後大人しく机の上に置かれて居る資料に目を移した。

 次々に落とされるエリッタからの爆弾に、ルデルト王子は処理し切れない。理解出来そうになった所で、また新たな爆弾が頭上から降って来る。その爆弾が落とされる度に、エリッタという存在が分からなくなる。

 何処までもメイドらしいメイド。そうかと思えば主人を茶化して見たり、振り回してみたり。変に頭が堅くて、融通が利かない。そうかと思えば柔軟な考えを持ち、こっちが思いもよらない事を言って来る。

 様々な顔を見せるエリッタに、ルデルト王子は一体本当のエリッタという人物はどれなのかと疑問に思ってしまう。

 資料を見つめて居た目をちらりと横に居るエリッタへと向ける。エリッタは何が楽しいのかニコニコしながら、ルデルト王子の目の前に有る資料と同じ物を眺めており、其れを見ながらふむふむと頷き何やら考え込んで居る。


「さあルデルト様! 今日は、人の上に立つという事についてのお勉強で御座いますよ! 早速参りましょうっ」

「へいへい。お前は何一人で盛り上がってるんだよ…」


 エリッタを眺めて居たルデルト王子は、急に資料を見つめて居たエリッタが顔を上げた事で瞬時に自分の資料へと目を向けた。如何やらエリッタはルデルト王子が自分を見て居た事等気付いて居なかった様で、ルデルト王子はほっと息を吐き出す。

 そして資料片手に一人張り切り出すエリッタに、またかよと言う様に呆れつつ、其れでも取り敢えず今日のお勉強がスタートしたので在った。

お気に入り登録等ありがとうございます。

暫くお勉強が続くと思いますので、お付き合い下されば有り難いです><!

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