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18 朝食と気まずさ

 ルデルト王子に言い負かされたエリッタは、その後暫く落ち込んで居たのだが、不意に見た時計の時刻に瞬時に何時ものエリッタへと覚醒した。時刻は朝の八時前。其れ所では無かったエリッタは、時刻と共に部屋へと微かに聞こえて来る下の賑わった声に、ルデルト王子へと勢い良く顔を向けた。


「ルデルト様! 朝食の時間です! 時刻がすっかり過ぎて居りますっ」

「あ? 別に急ぐ事無いだろ」

「いいえ! 時間厳守です!」


 ピッと背筋を伸ばし、胸を張って言い切ったエリッタ。きっと今エリッタが眼鏡を掛けて居れば、眼鏡のブリッチをくいっと指で上げて居た事だろう。


「其れより、何で俺はお前と同じベッドで寝てたのか教え――」

「さあ! ルデルト様っ、朝食を食べに参りましょう!」

「は? あ、おい、ちょっ、ま……!!」


 ルデルト王子の言い掛けた言葉等聞こえて居ないかの様に、エリッタはルデルト王子の手を取りソファから立ち上がらせると、その手を引っ張り部屋から出て一階へと向かう。ルデルト王子はこの前の様に、又もや腕を引かれる形でエリッタへと連行された。





****






 一階へと強制連行されたルデルト王子は、朝の筈が既に沢山の人で賑わいを見せて居る其処に顔を引き攣らせ、そんなルデルト王子を丁度空いて居た二人用の席へと座らせると、エリッタはルデルト王子をその場に一人残し自分はカウンターに居るランジェの元へと向かった。

 勿論一人此の騒がしい場所に置き去りにされたルデルト王子は、例の如く怒鳴ったのだが、此の騒がしく人々の会話が飛び交って居ては、その声もエリッタには届かなかった。


「おはようございますランジェ様っ。朝食セット二つ、お願い致します!」


 今日も相変わらず忙しく料理を作って居るランジェの元へと行ったエリッタは、昨日の事も忘れたかの様ににこりと微笑み、ピースした。ピースと言っても、只ポーズを取る訳では無く、二つと言う意味でランジェへと向けた。

 しかし向けられたランジェは、思いっ切り昨日の事を引き摺って居た様で、ひくりと口元を引き攣らせ微笑むエリッタを見下ろす。そしてそんなランジェの目の下には、何とも立派な隈が出来上がっており、昨日はエリッタの言葉にかなり悩まされ殆ど寝れなかったのだろう。

 だが勿論その言った張本人は、何ともぐっすり眠って居たのだからランジェが可哀想で在る。


「ランジェ様? どうか致しましたでしょうか?」


 反応の無いランジェに、エリッタは不思議そうにランジェを見上げており、そのエリッタと目が合った瞬間ランジェはハッと我に返り、「お、おうっ、おはようさん。朝食セット二つな! パンは柔らかいタイプとバケットタイプ、どっちにするんだ?」っと、慌てて他の客と同じ様に対応した。

 どんなに意味深な事を言ったエリッタでも、今は此の店のれっきとした客なのだ。其れもルデルト王子のメイドとして、城へと仕えて居る。自分はもう()の酒場の主人に過ぎ無いのだから、余計な事は考えるなと、頭の中から邪念を振り払った。


「そうで御座いますねぇ。ルデルト様は何時も柔らかいパンを好んで食されて居る様で御座いますし…。其れでは、柔らかいタイプとバケットタイプを一つずつ、お願い出来ますでしょうか?」

「はいよっ、了解だ。出来るまで暫く掛かるから、座って待っててくれ」

「分かりました。(わたくし)達はあの真ん中の方の席で座っていますので、よろしくお願い致します」


 エリッタは、真ん中辺りに有る現在ルデルト王子が座って居る席を指差した。ルデルト王子はその席で一人で座っており、その両隣の席では何とも屈強で大柄な男達が騒がしく朝食を食べて居て、その作法も何も有ったもんじゃ無い男達の食べ方と、騒々しさにルデルト王子は此の距離でランジェが見ても、機嫌がすこぶる悪いのが確認出来る。

 ぶすっとした顔で頬杖を付き、時折隣の席の男達をギロリと睨んだりして居るルデルト王子に、ランジェは苦笑いを浮かべた。そしてそんなルデルト王子の機嫌の悪さも、一緒に見て居る筈のエリッタには通じて居ないのか、何故か嬉しそうに「ルデルト様も随分楽しまれておりますねっ」等と言って居る。

 ランジェは咄嗟にそんな的外れな事を言うエリッタに突っ込んでしまいそうになったが、其処は聞かなかった事にして気にせず調理に取り掛かるのだった。

 その後ルデルト王子の待つ席に向かったエリッタは、機嫌がマックスに悪いルデルト王子に、怒りの出迎えを受けたのだが、何故自分が怒鳴られて居るのかも、どうしてルデルト王子がこんなに怒って居るのかすら、エリッタはよく分かっておらず、ルデルト王子の前に座って朝食が来るまで暫くの間、エリッタはルデルト王子に説教をされて居た。


「んで、結局何であんな状況になったんだ」

「其れはで御座いますねぇ。ルデルト王子が私を抱き締められて居た内に、何時の間にか眠ってしまわれたのです」

「デカイ声で言うな!」

「す、すみませんっ」


 柔らかいタイプのパンをちぎって口に運んで居たルデルト王子は、抱き締める(・・・・・)と言う単語に過剰に反応し、ギロリとエリッタを睨み付けた後、誰にも聞かれなかったかと周りをちらりと見て確認して居た。理不尽に怒られたエリッタは、バケットをちぎりながら、しゅんっと落ち込みパクリと食べて居る。


「其れで?」

「ルデルト様をベッドへとお運びしたのですが……」

「は? 誰がだ」

「え、私で、御座いますが?」


 エリッタが自分を運んだという事実に少なからず、ルデルト王子はショックを受けた。自分は女のエリッタにも運ばれる程、体重的にも軟弱だったのかと。しかし本当は、持ち上げる事等到底出来る筈が無く、エリッタは仕方なくルデルト王子をずるずると引き摺ってベッドまで運んだのだったが、其れを聞かれた訳でも無いエリッタは勿論言って居ない。

 誤解して居るルデルト王子にも、エリッタは全く気付かず更に話を進めた。


「ベッドまでお運びしたのは良いのですが、ルデルト様が私の服を掴んだお手をお放しになって下さらず、其れならば仕方ないと私もルデルト様と共に寝る事に至った訳で御座います」

「そ、そうか……」


 あれだけ動揺するシチュエーションを作ったのが自分だった事に、ルデルト王子はもうエリッタを怒る事も出来なかった。当たり前だ、自分が蒔いた種なのだから。

 気まずくなったルデルト王子は、こんがり焼けて居るベーコンやチーズ等を口に放り込んで、もくもくと食べる事にした。エリッタは何も質問して来なくなったルデルト王子に、もう朝の事は良いのかと不思議に思ったのだが、今は取り敢えず此の目の前に有る出来立ての朝食を食べ様と、半熟の目玉焼きをパクッと食べ、口の中でとろりと広がった黄身に顔を綻ばせて居たのだった。

お気に入り登録等ありがとうございます!

余り話が進まなくてやきもき状態です(汗)

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