17 翌朝の珍事件
よく朝、カーテンの隙間から覗く朝日でルデルト王子は目を覚ました。何時の間にかベッドに寝て居た自分に、何時寝たのかと疑問に思いながらも、何時も寝て居るベッドより堅いベッドだった為固まってしまった体を伸ばしつつ起き上がった。
欠伸をしつつ伸びをしたルデルト王子は、ちらりと時計を見た。時刻は六時ちょっと過ぎ。何時もより早く起きた事に驚き、其れならまだ寝れるなと思ったルデルト王子は、またベッドの中へともぐり込んだ。不意に横を見た瞬間、ルデルト王子はベッドから飛び起きた。
「な、ななななんでお前が!!」
自分の横には何故かエリッタが気持ち良さそうに眠っており、ルデルト王子の驚きの叫び声を聞いてもエリッタは目を覚ます気配は無い。余りの事に壁際まで後退ったルデルト王子は、同じベッドに寝て居たエリッタの姿に、咄嗟に自分の格好を確認する。
ルデルト王子はちゃんと服を着たままの自分の姿にほっとし、ルデルト王子が驚いて飛び起きた時にめくれ上がった掛布団から覗くエリッタの体にも、ちゃんとメイド服は纏ったままで在った。
その姿を確認したルデルト王子は、過ちは犯して居ないと胸を撫で下ろすのだが、どうしてこんな状況になって居るのか全く分からない。まず自分が何時寝たのか、ベッドには自分で寝たのか。そして何故エリッタが自分と一緒に同じベッドで寝る様な状況になったのか。
疑問は尽きないが、その疑問を解決させる為にはエリッタを起こさなければならない。しかし、其れも今のルデルト王子には非常に困難だ。少し前のルデルト王子ならば、直ぐ様寝て居るエリッタを怒鳴り付け叩き起こして居るのだが、昨日エリッタへの恋愛感情を自覚したばかりのルデルト王子には、こうして居る今も眠って居るエリッタの姿を見て居るの色々大変だ。
其れもエリッタは無防備な寝顔を晒しており、布団が乱れた為メイド服の余り短い共言えないスカートからは足が惜しげも無くルデルト王子に晒されて居る。
普段はスカートの下に隠れて居る太腿が、カーテンの隙間入り込む太陽の光でキラキラと輝いて居る。見ない様にと視線を逸らすルデルト王子だったが、やはり気になるのかちらりとその太腿に目が行ってしまう。
こんなに、白かったのか…。
「って、何考えてるんだ俺は!!」
太くも無く、だからと言って細過ぎでも無い、その丁度良い肉付きの太腿を眺め無意識にそんな事を考えて居た自分に、ルデルト王子はハッと我に返り頭を抱える。その姿はまるで思春期の少年の様な初々しさにも見えるが、此れでもルデルト王子は色々と経験豊富な筈で在った。
だがその今まで培って来た経験も、好きだと自覚してしまった相手には全く意味をなさない様で、何とも思春期の少年の様な反応をしてしまう。しかし、其れも仕方ない事だ。何をかくそう、此れはルデルト王子の初恋なのだから。好きでも無い女との反応の違い等、有ったとしても不思議では無い。
だが何時までも此のままという訳にも行く筈が無く、ルデルト王子は自分に喝を入れエリッタを叩き起こす事にした。
「おい! お前は何時まで寝てるつもりだ! 起きろ!!」
息を吸い腹から声を出したルデルト王子に、その声を耳元でもろに喰らってしまったエリッタは「へやぁぁあ!?」っと、何とも間抜けな叫び声と共に、ガバリと勢い良くベッドから起き上がった。エリッタは何が起きたのか分からないと言う様に、ベッドに座り込みえっえっと寝ぼけながら周りをキョロキョロする。
何時もは綺麗に結ばれて居る髪も、今ではぐっちゃりと乱れており、寝ぼけて居るエリッタのその何時もとは違う表情に、ルデルト王子は内心可愛くて仕方なかったのだが、其れを必死に表に出さない様に顔に力を入れて居た。
その為、今のルデルト王子の顔はかなり険しい仕上がりになって居る。周りを見渡して居たエリッタは、漸く自分の前に胡坐を掻いて座って居るルデルト王子の姿に気付く。其れも、現在のルデルト王子の表情は険しい。エリッタは其れを見て何を勘違いしたのか、サーッと顔を真っ青にして慌てた様に正座をした。
「す、すすすすみません! メイドで有る私がルデルト様よりも遅く起きてしまう等、メイドに有るまじき事で有ります!! 申し訳有りません!!」
如何やらエリッタは、ルデルト王子が自分に怒って居ると勘違いした様で、正座と共に其処から土下座をした。謝罪と共にいきなり土下座をしたエリッタに、ルデルト王子は何でこんな状況になったのか分からず、ぽかんとしてしまう。
只ルデルト王子は、自分が考えて居た事を表に出さない様にと顔に力を入れて居ただけで、自分がどんな表情を浮かべて居るのかは分かって居ない。その為、何故エリッタが突然謝り出したのか、ルデルト王子は不思議に思う。
「不覚で御座いますっ、私がこんな失態を晒してしまう等! 嗚呼! 私は一体此れからどうしたら良いのでしょう! ルデルト様、是非こんな不届き者の私等お切りになって下さいませ!」
「は、はあ!? お前急に何言い出してんだよ!?」
下げて居た頭を勢い良く上げ、目の前に有るルデルト王子の手を握りそう悲願し出したエリッタに、ルデルト王子は握られた手にドキリと胸を高鳴らせたが、次にエリッタの口から発せられた言葉に逆の意味で胸がドキッとする。
「もう私は自分自身が恥ずかしくて堪りません! まさか此処まで自分自身が不甲斐無いとは思いませんでした! こんな…嗚呼! もう恥ずかしさの余りおもて等歩けません!!」
「だから! 何で其処まで話がでかくなるんだ!!」
「嗚呼ルデルト様! 是非今直ぐ、この場で私をお切り下さいませ! さあ! 一思いにバッサリと!!」
「だから……。お前は一々大袈裟なんだよ――!!」
目に涙を貯めルデルト王子に迫って行くエリッタ。その近過ぎるエリッタとの距離と、何とも大袈裟でアホらしい事を次々と告げ、全くルデルト王子の話を聞かないエリッタにブチ切れたルデルト王子のその怒鳴り声は、部屋中に響き渡ったのだった。
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「申し訳有りません。私とした事が、余りの事に取り乱してしまいました」
「全くだな!」
漸く落ち着きを取り戻したエリッタは、身なりを簡単に整えた後、場所をベッドからソファへと移動したルデルト王子に頭を下げた。乱れて居た髪も綺麗に結び直され、皺の寄ってしまって居たメイド服も、殆ど皺が無くなっており、ルデルト王子の目の前で頭を下げて居るエリッタは、何時ものエリッタに戻ってしまった。
其れを、ルデルト王子は少し残念に思いながらも、逆に何時も通りのエリッタにほっとする。朝からあのエリッタの姿は、現在恋愛フィルター作動中のルデルト王子には少し刺激が強過ぎた様で在る。
人生で初めて作動された恋愛フィルターも、まだルデルト王子には制御出来て居ないのが現状だ。
「お前、絶対半分は寝ぼけてただろ」
「い、いえ! その様な事は決して御座いませんっ。朝も得意ですし、寝起きもとても良い方で御座います。寝ぼける等生まれて此の方有りません!」
「現に今寝ぼけてただろうが!」
「うぐっ」
ルデルト王子の厳しい言葉に、エリッタは返す言葉も無いのかガックリと項垂れてしまった。今日は如何やらルデルト王子の勝ちの様だ。何時もはエリッタの言葉に言い返せないルデルト王子だが、今日は其れがエリッタの方で、項垂れるエリッタにルデルト王子はちょっとした優越感を得る。
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ルデルト王子の恋愛フィルターが作動開始です。
ルデルト王子の場合、常時恋愛フィルターが作動されっぱなしだと思います(笑)




