16.5 確かな感情
自覚してしまった。
そんな筈が無いと、こんな奴なんて有り得ないと。そう思っても、何時もコイツはそんな俺の感情を確かにして行く。其れも、多分コイツは無意識にだ。其れにまた腹が立つ。
でも、其れでも俺は…もう自分の気持ちに気付かない振りは出来ない。
認めるしか無いんだ。
俺は……
「どうなさったのですか? ルデルト様」
「……」
「黙って居ては、流石の私でも分かりませんよ?」
「……」
「ルデルト様?」
「……別に」
こんなメイドが好きなんだと――
こんなにも、コイツは小さかったのか。小さいとはずっと思って居たが、抱き締めて其れが更に分かった。小さくて、細くて、でもどこか柔らかくて、そして温かい。
「私は、此処に居りますよ」
「……」
「何処にも行ったり等、致しませんよ?」
「……」
コイツは何を勘違いしたのか、俺が不安がって居ると思ったらしい。ほんとに馬鹿だ。何処をどう解釈すれば、そんな結論に達するって言うんだ? 馬鹿過ぎるコイツに呆れる一方で、俺に言い聞かせる様に紡がれる言葉は、声色は、今まで聞いた事も無い様に優しくて、どうしようも無く泣きたくなった。
どんな女も、俺にこんな風には話さなかった。何時も媚びる様な、反吐が出そうな程甘ったるい声で俺にしな垂れて来て、俺の心配をする様な言葉も、口ぶりも、本当に俺を心配して居る言葉等何一つ無かった。
でもコイツの言葉は媚何て物まるで無くて、本当に、純粋に、俺の心配をして居る様な、安心させる様な物ばかりだ。馬鹿みたいに優しいコイツに、俺はどうしようも無く安心してしまう。
女に対して、こんな気持ちになった事等生まれて此の方一度だって無い。其れも、出会ってまだそんなに経って居ない相手にだ。一目惚れという物が有る位だ、俺の此の状況等よく有る事なのかもしれない。其れでも、俺は此の気持ちを自覚しても自分が信じられない。
どうしてコイツだったのかと。特別可愛い訳でも、綺麗な訳でも無いコイツをどうして好きになったのか。其れこそコイツなんかより良い女なんて幾らでも居たのに、だ。
そんな奴等の中で、どうして俺は敢えて此のコイツだったのか…。多分、見た目では無かったのかもしれない。俺にとっては、見た目等関係無くて、中身が重要だったのかもな。自分の事なのに、俺にもよく分からない…。
コイツの肩に顔を埋めたまま、俺は思わず苦笑した。その間にも、コイツは俺を安心させ様とまだ何か言って居たが、俺にはそんな言葉関係無かった。コイツが話す言葉は、今の俺には重要では無い。内容なんて何でも良い。只、コイツの声を聞いて居たいと思った。
記憶の奥深くに眠った、忘れ去られた思い出が、コイツの声を聞いて居ると思い出されて行く様な気がした。俺は昔コイツと同じ様に、安心する様な、温かい様な、泣きたくなる様な優しく語り掛ける様な、そんな事を誰かにされた様な気がする。
顔すら思い出せ無く、声も殆ど覚えて無い。けれど、無性に懐かしくなる此の思い出は、一体なんなんだろうか? コイツの此の声をずっと聞いて居れば、何時か思い出すのだろうか?
此の温かくて懐かしい、手放したく無いと思ってしまう感情を…。
でも、今はそんな事どうでも良い。今は、今だけは……
「ルデルト様」
コイツの声だけで、体中を一杯にして居たいんだ。
別に、良いだろう? コイツを、エリッタだけを考えて居たって。
でも、そうか…。
此れが――恋なのか。
読んで下さりありがとうございました!
そしてお気に入り登録感謝です^^ノ
因みにルデルト王子は此れが初恋です(笑)




