8 親子喧嘩勃発
其れは、とても天気の良い日の出来事だった。天気は正に晴天。洗濯日和、そして散歩日和だったのだ。そんな天気の良い日は、皆自然と機嫌も何だか良く、顔にも自然と笑みが浮かんで居た。話す内容も、何時もは仕事に対しての愚痴や、同じメイド仲間の陰口。しかし今日は、そんな話をして居る者は居なかった。今日のおやつはどんなだろうとか、今日は干した布団でぐっすり眠れる等。暗い話題は一つも出ず、皆気分の良いまま、今日という一日が終わると思って居た。
しかし、人生とはそう上手くは行かないらしい。
其れは正に、タイミングが悪かったとしか言い様が無い。此の城の者は、何時も皆気を付けて居たらしい。誰が言い出したのかは不明だが、何時の間にか其れが暗黙のルールになって居た。だが其れも、今日という日に限って暗黙のルールが破れてしまったのだ。
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カチャリカチャリと、その音は静かな部屋の中で響いて居た。その部屋へと居合わせてしまった者は、皆誰も話さずその場で立って其れが終わるのを待って居るしかない。だがそんな者達の中で、此の城での暗黙のルール等という物が存在して居る事等知りもしないあるメイドは、一人にこにことその二人の姿を見つめて居た。
「……」
「……」
現在の時刻、夜の八時頃。食堂には何とも言えない空気が漂って居る。その原因と言うのも、長いテーブルの端と端で黙々と目の前の用意された食事を食べて居る二人に有る。一人はアルンド王国の現国王でも在るソレイダ陛下。もう一人はそのソレイダ陛下の息子のルデルト王子。二人は一言も話さず、只々夜食を食べて居る。
本来ならば、二人が同じ時間に、共に食事等しない。しないのでは無い。しない様に周りが気を使って居るのが真実だ。二人は顔を合わせれば必ずと言って良い程、喧嘩になる。ソレイダ陛下の何気無い言葉一つで、ルデルト王子は突然キレ出し城から逃亡する。そして数日帰って来ない事が良く有る。いや、良く有ってはいけないのだが…。そんな事態を招かない為にと、メイドや執事達は二人の食事の時間がかち合わ無い様に、毎日毎回細心の注意を払って居るのだ。
そう、この城の暗黙のルールは――【ソレイダ陛下とルデルト王子の食事をかち合わせてはいけない】だ。新人メイドも執事も、此の城にやって来てその日の内に耳がタコになる位言い聞かせられるのだが、其れを聞かせられて居なかった者が若干一名存在する。其れが、
「お二方が食事を共にしていらっしゃる姿、私初めて拝見致しましたっ」
現在ルデルト王子の育成をして居る、メイドのエリッタなのだ。
一人暢気に二人が一緒に食事をして居る姿を見つめ、嬉しそうに笑みを溢して居るエリッタに、傍に並んで立って居る数人のメイドと執事達は内心頭を抱えて居た。ある者は暢気なエリッタを羨ましく思い。又ある者はそんなエリッタに怒りを感じ。またまたある者はどうしてこのメイドに暗黙のルールを教えなかったのかと顔を真っ青にして居る。
反応は様々だが、皆一様に、キリキリ痛み出す胃に悩まされて居るのであった。
そもそも何故此の二人が食事を共にしてしまったかと言うと、エリッタがやらかしてしまったのだ。暗黙のルール等知らないエリッタは、食事ギリギリまでルデルト王子の自室で共にお茶をして居た。そう、勉強では無くお茶をだ。其処でエリッタがそろそろ食事の時間だと思ったのだが、何時もは七時頃になれば他のメイドが食事の時間だと呼びに来るのだが、今日はその時間を過ぎても誰も来なく、そしてルデルト王子はお腹が空いたと言い出す始末。其処でエリッタは、自分で食事の用意をする事にしたのだ。其れがそもそもの間違いだったのだが。
エリッタには他のメイドから、食事の支度等は絶対にするなと言われて居たが、お腹を空かせて居るルデルト王子を放って置く訳にも行く筈が無く、コックに食事の用意をお願いし、食堂にて食事の支度を手早く済ませたのだ。全部の用意が終わった頃、丁度食堂に来たソレイダ陛下とルデルト王子が見事に鉢合わせしてしまい、だが暗黙のルールを知らないエリッタは、どうせなら一緒に食事をするのが良いと判断し、現在の事態に陥って居る。
だが其れならば、此の様な事態にならない様に他のメイドが何時もの様に自分達で用意をすれば良かったのに、と思うだろう。しかし此れまたタイミングが悪く、今日はソレイダ陛下への客人が多く来てしまい、その対応に皆追われ、尚且つその来た客人が何とも注文の多い客人だったのだ。
やれ此処の紅茶は渋くて嫌いだ、他の紅茶に変えろ。やれ此の菓子は嫌いだ、此の店の菓子が食べたい。等々…。言い出したらきりが無い位、何とも融通の利かない客がやって来た。だがその客は大事な隣人の国王だった為、ソレイダ陛下の顔に泥を塗る様な対応をする訳にも行かず、勿論邪険に扱う事も、適当に流す事も出来ない。その為、全て律儀に対応して居た結果が此れだ。無駄にその客人に時間を取られ、ルデルト王子の食事の準備にまで手が回らず、こうなってしまったのだから、文句も言えない。
「お二人は何時も、何故別々にお食事をなさって居るのですか?」
エリッタの何気ない疑問の言葉に、傍に立って居るメイドや執事達は皆一様に、ぎょっとした様な表情を浮かべエリッタに視線を向ける。その者達の心の声を代弁すれば、こんな所だろうか?
『何言っちゃってんだよ! 少しは空気読めよ! 此の部屋中に充満して居るブリザードがお前には分からないのか!?』
こんな所だろうか? 本当は皆、今すぐにでも此の空気の読めないエリッタに怒鳴り散らしてやりたいのだが、ソレイダ陛下とルデルト王子が居るのにそんな事口が裂けても言える筈が無い。その為、此の暢気なメイドの隣で皆必死に堪えて居るのだった。
「そうだなぁ…。時間が合わないから、だろうか?」
「陛下はお忙しいのだ。其れ位お前にも分かるだろう!」
エリッタの質問にも嫌な顔一つせず、少し考え苦笑いと共にそう告げたソレイダ陛下の後、傍に立って居たデルドアがギロリとエリッタを睨み付けた。だがそんなデルドアの睨みにエリッタが臆する筈が無く、「陛下は何時もお忙しくて有られますものね。お体には十分にお気を付け下さい」とソレイダ陛下を見つめそう告げた。そんなエリッタにソレイダ陛下は「ああ、気を付けるよ」と普通に返して居て、其れを聞いて居たルデルト王子は鼻で笑う。
「時間が合わないからな訳ねーだろ」
「え、そうなのですか?」
ルデルト王子のその吐き捨てる様な言葉に、エリッタは驚いた様に聞き返す。ルデルト王子は驚くエリッタに、当たり前だろと告げ水を流し込む。
「毎日毎日そんな仕事が山積みな筈が有るか? 大方、俺と食事がしたく無いから忙しいなんて尤もな理由を作ってるだけなんだよ」
そうだろう? と言う様に、ルデルト王子はソレイダ陛下を小馬鹿にする様な笑いと共に視線を向ける。だがソレイダ陛下はそんなあからさまな挑発には乗らず、何でも無い様な顔で「そんな事有る訳無いだろう」と視線は向けず冷静に返した。しかしそのソレイダ陛下の態度がイラつくのか、ルデルト王子は舌打ちを一つ。
「所で、エリッタ殿」
「陛下、私の事はエリッタとお呼び下さい。私は此のお城のメイドなのですから、敬称等必要御座いません」
「そう、で有ったな。では、エリッタ」
「はい。何で御座いましょうか?」
「ルデルトの育成は進んで居るか?」
その言葉に、ルデルト王子の眉がぴくりと動いた。だがそんな些細な変化に、誰も気付く筈が無く、話は進んで行く。
ソレイダ陛下の質問に、エリッタは顔色一つ変えずにこう答えた。
「はい。勿論で御座います。現段階では、何の問題も無く育成は順調に進んでおりますので、ご心配には及びません」
「そうか…。その言葉を聞いて安心した。その調子で育成を頼む」
「畏まりました」
満足げにワインを飲んだソレイダ陛下に、エリッタはお辞儀をする。だが、此処に納得出来ない人物が一名居た。
「ハッ。何馬鹿な事言ってんだ。俺が育成なんてされてる訳ないだろ」
不機嫌そうにソレイダ陛下を睨み付けながらそう告げたルデルト王子に、今度はソレイダ陛下の眉がぴくりと動いた。
「何お前もそんなデタラメな事言ってんだ」
「デタラメでは御座いません。ルデルト様の育成は順調で御座いますよ?」
「其れがデタラメだって言ってんだよ。よく言うな? お前も」
「むむ。ルデルト様、其れでは私が育成をサボって居る様では有りませんかっ」
「いや、あながち間違っても無いだろ」
ぷくーっと頬を盛大に膨らませ、ルデルト王子の空になって居たグラスに水を注ぐエリッタに、ルデルト王子は鼻で笑って興味深そうに横に立って居るエリッタを横目に見上げる。そんな二人のやり取りを、ソレイダ陛下も又、興味深そうに眺めて居た。まだ一週間が過ぎ二週目に突入したばかりの、此の城に来て間もないエリッタとルデルト王子のその姿は、随分と仲が良く見える。
ルデルト王子の女嫌いは結構有名な話だ。城に何十年と居るメイドですら、此処までルデルト王子と仲良く話す事が出来る者は少ない。というか、メイドではミレ以外には居ないのでないだろうか?
其れ程、ルデルト王子は警戒心が強く、基本女は信じず、女と話す時は仮面を被って居る。無駄に優しく話したり接したりして居る場合は、殆どの割合でその相手を信じて居ないか、一夜限りだと思って居るか、興味が無いかのどちらかだ。
そんなルデルト王子が、まだ来たばかりのエリッタに素を見せ、その二人の姿は何とも仲睦まじく、関係は良好に見える。とても王子とメイドの関係には見えない。だが其れは、エリッタのルデルト王子への接し方に有るのかも知れない。
敬語では話して居るし、態度もメイドとしての秩序は守って居る。だが時折見せる子供っぽく意地を張ったり、普通の年相応の少女の様にルデルト王子に接したりと。正に今まで見た事も、居た事も無い様なメイドなのだ。そんな使い分けが出来る者等、周りの状況や相手の様子をしっかり理解して居る者位だろう。其れが自然に出来て居るという事は、エリッタというメイドは流石派遣されて来たと言うべきか、他のメイドとは全てに関して能力が上回って居る。
ルデルト王子とエリッタのやり取りを眺めながら、ソレイダ陛下はエリッタを観察し、そう独自に分析して居たのだ。分析の結果、やはり依頼して良かったと、ソレイダ陛下は改めて思う。
「あっ。私、ずっと疑問に思って居た事が有ったのですっ」
「は? 急になんだよ…」
正に唐突に話を切り出したエリッタに、ルデルト王子は少し後ろに控えて居たエリッタを訝しげに振り返った。
「いえ、お二人の仲は随分…。何と言いましょうか……」
「はっきり言えよっ」
何とも言い難そうに言葉を濁すエリッタに、ルデルト王子は早く言えよと眉を寄せ、エリッタを急かす。エリッタが言い難そうにしたり、言葉を濁したり等した事が無かった為、ルデルト王子はそんなに言い難い事なのかと疑問に思って居た。勿論他のメイドや執事達も、一体エリッタが何を言うのかと、疑問というよりも余計な事を言うんじゃ無いだろうかと心配そうに見つめて居た。そんなルデルト王子や他の者達の心境を知ってか知らずか、エリッタは覚悟を決めた様に伏せて居た目を上げルデルト王子とソレイダ陛下に視線を向けた。
「あの……お二人って、余り仲が宜しく無いのでしょうか?」
その瞬間、食堂全体がピシリという音と共に氷付いた。正にエリッタの此の言葉だけで、此の室内は一気に北極へと姿を変えたのだ。そしてメイドや執事達は皆一斉に叫んだ。
『なんつー事聞いてんだよ!! どう考えてもその話題はタブーだろうがあああ!!』
何とも悲痛な叫びだ。だが勿論実際に叫んだ訳では無く、心の中での話だ。実際に叫べる者等居ないだろう。其れこそ正に空気を読めて居ない。しかしエリッタには、此の何とも言えない空気にも気付いて居ないのか、神妙な面持ちで固まったソレイダ陛下とルデルト王子を見つめて居るのだ。空気が読めて居ないと言うよりも、鈍感という言葉が一番エリッタには合うのではないだろうか?
そんなエリッタに鋭い視線を向けて居る人物が一人、居た。其れは勿論ソレイダ陛下の後ろに控えて居るデルドアなのだが、何時ものデルドアならば此の様な発言をしよう物ならすぐ様その者に怒り、部屋から追い出して居ただろう。だが今回、デルドアは鋭い視線をエリッタに向ける物の、怒鳴る事も部屋から追い出す事もしない。只じっと、その場で何事も無い様に立って居るだけだ。
其れは、この前のエリッタとの一件が原因だろう。エリッタは自分が何をしようが其れは育成に必要な事だから、口出しをしない様にと言われたというか、脅されたからだ。あんな話を聞かされた後な為、流石のデルドアも今口出しをする事が出来ない。そして今此のタイミングでエリッタがこんな話を持ち出して来たという事は、育成に必要な事で、何か考えが有るのだろうと自分に言い聞かせて居る。頭も良く、周りの状況や空気を読む事が出来るエリッタの事だ、只の好奇心等でこんな話を持ち出したりはしない。少なからず、デルドアはエリッタをそう評価して居る。のだが、其れを裏切る可能性も無い訳では無い。もしもの為にと、デルドアも睨みを聞かせて居るのだ。そうそう簡単に、完全に信じる事等出来ないだろう。
「……なんでそう思うんだ」
「いえ。此方へと派遣されて来ました時から、何だかお二人の間には、こう…ギスギス? して居る様な気がずっとしておりまして。ですが親子関係が余り宜しく無い依頼主様や育成者様達等、よく有る話で御座います。私も、何度もその様な方々の元に派遣された経験が有りますので。しかし、ソレイダ陛下に対するルデルト様の態度は、普通の、思春期の親に反発する様な、その様な物とは少し違う様に私には見受けられました」
ぽつりと呟いたルデルト王子に、エリッタは一言一言言葉を選ぶ様にゆっくりと告げる。其れに、誰も反論等出来なかった。エリッタの言う事は当たって居るからだ。当たって居るにも関わらず、其れを反論出来る訳が無い。そう、ルデルト王子の此のソレイダ陛下への態度は、思春期の時によく有る親への反発でも、只王位を継ぎたく無いからという理由だけでは無い。いや、王位を継ぎたく無いという理由も、あながち間違いでは無いのだが、其れだけでもなかったりする。
「エリッタ、キミは少し勘違いして居る様だ」
「と、仰いますと?」
「ルデルトは俺が気に入らないだけだ。若い時はよく有るだろう? 親の言う事もやる事も気入らず、すぐに反発する。ルデルトも其れと同じだ。そんな大層な理由等、此の者には無い。余りルデルトを過剰評価する必要等無いぞ? 王子だからと言って遠慮する事は無い。キミはルデルトを育成する為に来たんだ。もっと厳しい位が此の者には丁度良いだろう」
テーブルに頬杖を付き、ルデルト王子をちらりと見た後エリッタへと微笑み掛けたソレイダ陛下。その微笑みに、エリッタは顔色一つ変えない。そしてずっと黙って居たルデルト王子が、唐突に笑い出した。
「ぷっ。あははははは!」
「ルデルト様…?」
腹を抱えて笑い出したルデルト王子に、エリッタだけでは無く周りも驚いた。こんなルデルト王子の態度は初めてなのだ。何時もはソレイダ陛下がルデルト王子に対してこんな事を言おう物なら、すぐ様怒り反発し、部屋中で大暴れするか、ソレイダ陛下に殴り掛かろうとするのが殆どで在った。だが今回は、怒る訳でも無く、唐突に笑い出した。此れには周りも何時もよりルデルト王子が心配になる。
「アンタが気に入らないだけ? 若い時によく有る反発? アンタ、ずっとそう思って居たのかよ。俺が、そんな理由でアンタに反発してたと思ってたのか? ハッ、馬鹿みたいだ…」
ルデルト王子の言葉は、怒って居ると言うよりも、呆れて居る様な、そんな声色だった。
「そうだな。俺はアンタが気に入らない。アンタみたいな親殺しと同じ血が、自分にも流れて居ると思うだけで虫唾が走る。だが一番虫唾が走るのは……自分の妻を見殺しにした事なんだよ!!」
顔を悲痛に歪め吐き捨て、そして部屋から飛び出して行ったルデルト王子に、周りのメイドや執事達は追い掛け様と部屋から出て行こうとしたが、其れはソレイダ陛下によって止められた。
「追い掛ける必要等無い。放っておけ」
「し、しかし陛下…。今回は何時もと少し様子が違います。もしもの事が有ったら…」
「デルドア、お前は本当に心配性だな。ルデルトももう子供では無い。其処まで心配する必要は無いだろう」
「ですが……」
ルデルト王子が出て行った扉と溜息を溢すソレイダ陛下を交互に見るデルドアに、ソレイダ陛下は何でも無い様に食事を続ける。
「やはり、其処が一番の原因ですか」
其れを黙って見つめて居たエリッタは、誰にも聞こえない様な、本当に小さな声で呟いた。此れもまた、エリッタの作戦だったのだ。
「ソレイダ陛下。私に、ルデルト様を追い掛ける許可を下さい」
「キミが其処までする必要等無いぞ?」
「いえ、此れも育成には必要な事で御座いますので」
「そうか…。良いだろう。許可しよう」
「ありがとうございます。其れでは、失礼致します」
礼と共にエリッタは部屋から出て行った。其れを見送った者達は、エリッタのその冷静な態度と言葉に密かに驚かされた。エリッタがルデルト王子を追い掛けると言った時、ソレイダ陛下も含め、皆ルデルト王子が心配だから追い掛けると申し出たと思って居た。しかし、エリッタの表情に心配の色は微塵も無かった。そして追い掛ける理由も、育成に必要だから、という理由だ。
ルデルト王子と仲良く話して居たエリッタの口から発せられた、何とも残酷な言葉に、ルデルト王子が聞いて居なくて良かったとメイドや執事達は思う。すくなからずルデルト王子はエリッタを気に入って居る節が有る。そんなエリッタの口から、自分が心配等では無く、育成に必要な事だからと突き放されたらルデルト王子がどう思うか…。
「デルドア」
「どう致しました、陛下」
「俺は、彼女を買い被って居た様だ」
「陛下…。私も、で御座います」
二人が、改めてエリッタへの評価を変えた瞬間だった。そして、【王様候補、育成致します。】という組織が、一体どんな物なのか興味が湧いた瞬間でも在った。
彼女は、此の城の誰よりも優しく、そして――無情だ。




