第8話:指一本で制す
「触るな」
僕が静かに言い放つと、バルドはピクッと眉を跳ね上げた。
「あぁん? Fランクの分際で調子に乗ってんじゃねぇぞ! 魔法のイロハも知らねぇ木切れ持ちが!」
バルドが杖を構え、中級火炎魔法の詠唱を始めようとする。
ギルド内が一気に緊迫し、ギャラリーから「やっちまえ!」と声が飛んだ。
(詠唱に2秒、魔法陣の展開に1秒……遅すぎる)
僕は背中の和弓に手をかけることすらしない。
ただ静かに腰を落とし、足踏みから素早く踏み込み——バルドが魔法を発動させるより早く、彼の懐へと滑り込んだ。
「なっ……!?」
弓道で鍛えた体幹と軸。
バルドの魔法陣が完成する直前、僕は彼の杖を持つ手首を最小限の力で払い、同時に喉元へ指先を突きつけた。
指先には、小さな種火——『ボム・プチ』が揺れている。
「……ッ!?」
バルドの動きが完全に止まった。
僕の指先が彼の皮膚に触れている。もしこれが目や喉の粘膜なら、いくら小さな種火でも激痛と失明は免れない。
何より、「魔法の発動すら許されずに間合いを詰められた」という事実が、バルドの顔を蒼白にさせた。
「魔法の詠唱に頼り切って、自分の身を守る動作一つできないのか? ……無能はお前の方だろ」
僕は冷ややかに言い放ち、指の種火を消した。
「ひ、ひぃっ……!」
バルドは腰を抜かし、逃げるようにギルドを飛び出していった。
静まり返るギルドの中で、シルフだけが目を丸くして僕を見つめていた。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
第8話はいかがでしたでしょうか?
低スキルと馬鹿にされていた蓮ですが、和弓の理論と物理ハックを組み合わせることで、異世界の常識ではあり得ない成果を次々と出していきます。
「ただの弓道経験者」だと思っていた周りの反応が変わっていく様子を楽しんでいただけていたら幸いです!
次回第9話では、いよいよ本格的な依頼・実戦へと向かいます。
音速の矢が新たな強敵相手にどう威力を発揮するのか、どうぞお楽しみに!
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引き続き『異世界転移したけど、低スキルでもやっていけますか?(弓道経験は有ります。)』をよろしくお願いいたします!




