第5話:立場逆転
「な……ッ!?」
「音速……!? 弓矢が音を置き去りにした……!?」
「ただの種火だぞ!? なんであんな化け物みたいな破壊力が生まれるんだよ!!」
静まり返る戦場に、魔法使いたちの狼狽する声が響く。
尻餅をつき、股間を濡らした佐藤が、信じられないという目で僕を見上げていた。
「れ、蓮……お前、いま何を……? 魔法が効かない化け物を、一発で……!?」
「簡単な話だ」
僕は次の矢を筒から引き抜きながら、冷ややかな視線を佐藤へと向けた。
「和弓の矢は回転しながら飛ぶ。その回転と炎による推進力、そして空気を切り裂く物理の力だ。……魔法にうぬぼれて『物理と工夫』を忘れたお前らの負けだよ」
「ひっ……!」
僕の冷徹な眼光に射抜かれ、佐藤は情けなく悲鳴を上げて後退る。
その時、後方から一頭の巨獣が再び咆哮をあげた。二頭目の重甲獣だ。
さらに周囲からは、数十頭の群れが街へ迫ってきているのが見えた。
「た、助けてくれ蓮! 俺たちじゃ倒せない! 頼む、助けてくれ!!」
さっきまで僕を「無能」「ゴミ」と見下していた魔法使いたちが、今や僕の足元にすがろうとしている。
「助ける?」
僕は弓を構え、ふっと口元を緩めた。
「勘違いするな。僕は街を守るために射るだけだ。——お前らのために引く矢は一本もない」
——ズガァンッ!!
再び放たれた音速の火矢が、二頭目の巨獣の頭部を叩き割る。
一興の隙もなく、次々とモンスターを射抜いていく僕の背中を、かつて見下していた者たちはただ、恐怖と羨望の眼差しで見つめることしかできなかった。
魔力底辺と蔑まれた僕が、この異世界の常識を全て塗り替える最初の物語は、ここから始まったのだ。




