第4話:一撃必殺
「おい蓮! 何やってんだ、逃げろ! 魔法が効かないんだぞ!?」
逃げ惑う佐藤が僕の横を走り抜けながら叫ぶ。
僕は返事もせず、和弓に矢を番えた。
「ハッ、狂ったか! 魔法すら通じない相手に、そんな木の枝で勝てるわけ——」
佐藤の嘲笑を無視し、僕は深く息を吐く。
足踏み。
胴造り。
弓構え。
打起こし。
引分け。
会。
強豪校で毎日、血の滲むような練習で叩き込んできた『射法八節』の動作。
無駄な力みが削ぎ落とされ、世界が静寂に包まれる。
(魔法が通用しないなら、物理で穿つ)
(威力が足りないなら、極限まで高めた速度と回転を乗せる)
矢先に『ボム・プチ』の種火を灯す。
(高速回転する矢羽に炎魔法を組み込むことで、二つの現象が起きる)
矢のドリル回転が炎を巻き込み、前方空気の熱膨張を起こして空気抵抗を限りなくゼロにする。
後方へ渦巻く熱気が強烈な推進力を生み出し、飛翔中に加速し続けるラムジェット効果。
「——離れ!」
―――ズガアアアンッ!!!!
弦音が響いた瞬間、大気が爆砕した。
放たれた一矢は、螺旋を描く灼熱のブースターを身に纏い、音速の壁をぶち破る。
巻き起こる衝撃波で周囲の小石や砂塵が吹き飛び、逃げていた魔法使いたちが悲鳴を上げてひれ伏した。
音を置き去りにした一矢は、重甲獣の唯一の弱点——装甲の隙間にある極小の眼球へと一直線に突き刺さる。
音速を超えた「超高速回転矢」が装甲をドリル状に微塵に穿ち、その深部で、矢先の種火が内圧によって破裂した。
「グガッ……!?」
巨獣は脳天を内側から破壊され、即死。
地響きを立ててその場に崩れ落ちた。
戦場を支配したのは、完全なる静寂だった。




