↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したけど、低スキルでもやっていけますか?(弓道経験は有ります)  作者: sooomen


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/76

第45話:試行錯誤の鍛錬

「おい小僧! 矢軸(シャフト)の太さと長さを測るぞ! 和弓ってのは、弓の引き尺によって矢の長さが完璧に決まるんだろうが!」


「ああ。僕の矢尺は三尺三分(約100センチ)。矢の重量バランスは、やや前寄りに重みを残した『前重心』にしてくれ。回転した時の直進性が増す」

バログの工房は、一瞬にして熱気あふれる『開発現場』へと変貌していた。


バログはドワーフ特有の頑丈な手つきで、木材や竹材の選別に入った。工房の奥から出してきたのは、乾燥させ、煙で燻した最高品質の『魔導竹(アイアン・バンブー)』だった。


「しなりと硬度、軽量さを兼ね備えた竹材だ。お前の弓の威力を受け止めるには、これ以上の軸はねぇ」

バログは専用の小刀で竹の節を削り、火に煽ってまっすぐに曲がりを修正(ため)していく。

その手つきには、先ほどまでの荒々しさは一切なく、ミクロン単位の誤差も許さない熟練の職人技が光っていた。


「蓮さん……バログさん、すごいです。迷いが一切ありません」

シルフが感心したように息を呑む。


「うん! 最初は頑固なオジサンだと思ったけど、根はすっごく良い職人さんなんだね!」

ウィネットも目を輝かせて二人の作業を見守っていた。


作業は羽根の削り出しへと移った。

風切鳥の羽根は硬度が高く、通常のハサミや刃物では綺麗に切り揃えることが難しい。


「くっ……この風切り羽根、表面の鉱物層が邪魔して、羽軸(うじく)を均等に削ぎ落とせねぇ……! これじゃ三枚の重量バランスが崩れちまう!」

バログが額に汗を浮かべて歯噛みする。

三羽矢において、三枚の羽根の重量と空気抵抗がわずかでも不揃いになれば、回転軸がぶれて逆に精度が落ちてしまうのだ。


「バログさん、そこは私に手伝わせてください」

前に出たのはシルフだった。


「あん? お嬢ちゃんに何ができるってんだ?」


「私の『極冷』で、羽根の軸だけを一瞬で極低温に冷却します。分子間結合が収縮して脆くなった瞬間なら、綺麗に削ぎ落とせるはずです」

シルフは短杖を構え、繊細な魔力を羽軸の一点だけに集中させた。


『ピキッ……』


微かな凍結音とともに、羽軸の余分な部分が冷却される。バログが即座に刀を入れると、まるでバターを切るかのように、スッと完璧な直線で羽根が切り揃えられた。

「な……!? なんという鮮やかな冷却精度だ……! 魔法を破壊じゃなく、素材の加工(削り)に使うだと……!?」

バログが驚愕の声をあげる。


「蓮さんに教えていただいたんです。魔法は力を誇示するものではなく、理を助けるためのものだって」

シルフが誇らしげに胸を張り、僕に向かって柔らかく微笑んだ。

僕は深く頷き、シルフの頭をそっと撫でた。シルフは照れくさそうに頬を染める。


「へへっ、あたしも負けてられないよ! バログさん、羽根を接着した後の角度調整、あたしの風でチェックしてあげる! 微妙な風の引っかかり、あたしなら一発で分かるから!」


「おうよ! 助かるぜお嬢ちゃんたち! こんなに面白い矢作りは生まれて初めてだ!!」

ドワーフの頑固職人、物理を極める射手、そして氷と風のヒロインたち。

工房の中で、全員の技術と魔力が一つに噛み合っていく。


バログは風切鳥の羽根を120度の等間隔で竹軸に配し、接着剤と絹糸で強固に巻き留めていく。その角度は、僕が計算した通りの「わずか2度の傾き」。


夜が明ける頃——作業台の上には、息を呑むほど美しい一本の『三羽矢』が横たわっていた。

青銀色に輝く風切鳥の三枚羽が、竹軸の末端で螺旋を描くように凛と佇んでいる。

「できた……。俺の鍛冶屋人生で、最も美しく、最も理に叶った『三羽矢』だ……!」

バログが疲労も忘れ、満足感に満ちた表情で呟いた。

羽根の模様も鳥の種類によって様々です。

乳白色に波打つように模様が入っている「白鷹(しろたか)」。

全体的に黒いが裏側を少し傾けると微かに白っぽく変化する「黒鷲(くろわし)」

斑模様(まだらもよう)が目を引く「孔雀」

全体が白一色の「白鳥」

白から濃いめの灰色へとグラデーションする「花白鳥(はなはくちょう)」

この他にもまだいくつかあります。


個人的には「花白鳥」が好きでした。

実際には「花白鳥」という名の鳥はいません。

これは「白雁(はくがん)」という鳥の羽根の通称となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。