第35話:王都の天才弓術士
鉄甲巨鳥を打ち倒した僕たちは、ついに目的の地である王都アルカディアへと到着した。
見上げるほどの石造りの建造物が立ち並び、行き交う人々の活気で街は溢れかえっている。
「うわぁ〜! すごい! さすが王都だね、蓮くん! 美味しそうなお店がいっぱいあるよ〜!」
ウィネットが目をキラキラと輝かせながら、僕の腕にぎゅっと抱きついてくる。
「ウィネットさんっ! 人混みだからって蓮さんにくっつきすぎです! ほら、早く離れてくださいっ!」
すかさずシルフが僕の反対側の袖を掴み、真っ赤な顔でウィネットを引き剥がそうとする。
二人の賑やかなやり取りに苦笑しつつ、僕たちは冒険者ギルドの王都本部へと向かった。目的は、氷塊都市と峡谷での討伐報告およびランク更新だ。
だが、広大なギルド本部の受付で手続きを行っていると、背後からつんと刺すような冷ややかな声が響いた。
「——フン。田舎のギルドから流れてきたと思えば、ずいぶんと奇妙な玩具を背負っているな」
振り返ると、そこには豪奢な革鎧を身にまとった一人の青年が立っていた。
美しい銀髪を後ろに束ね、背中には宝石で飾られた高級そうな『洋弓』を担いでいる。彼の立ち振る舞いには、育ちの良さと絶対的な実力からくる強い自負が滲み出ていた。
「あ、あなたは……『神速』のレオン様……!?」
受付の職員が息を呑み、周囲の冒険者たちがザワつき始める。
「レオン……? 誰だ、あいつ」
僕が静かに呟くと、ウィネットが僕の耳元でヒソヒソと教えてくれた。
「蓮くん、あいつ王都の天才弓術士だよ! 国立魔導学院を飛び級で卒業して、風と光の複合魔法を組み合わせた『誘導魔弾弓』の使い手なんだ。若いのにAランク冒険者で、王都の若手の筆頭なんだよ」
「へぇ……」
僕が淡々と頷いていると、レオンと名乗った青年は嘲笑を浮かべながら僕の肩にかけられた『和弓』に視線を落とした。
「弓身が異常に長く、握りが下寄りに偏っている歪な弓。おまけに照準器も無ければ魔力付与の刻印すらない。そんな不格好なガラクタで『音速の撃破』を成し遂げたと吹聴しているのか?」
「ガラクタではありませんっ!」
レオンの言葉に真っ先に反応したのは、シルフだった。
普段はおしとやかな彼女が、怒りで肩を震わせ、レオンを強く睨みつける。
「蓮さんの和弓は……そして蓮さんの弓術は、私たちが誰よりも尊敬している本物の技術です! 仕組みも理解できないのに、バカにしないでくださいっ!」
「シルフちゃんが言った通りだよ! 蓮くんの矢の凄さ、アンタみたいな気取り屋には分からないでしょ!」
ウィネットも腰に手を当て、勝ち気にレオンを言い放つ。
「……フン、威勢だけはいいな。だが、弓術とは極限まで練り上げられた『魔力』と『精密な魔導器』によって完成される芸術だ。初級魔法しか使えない落ちこぼれが、妙なハッタリで仲間を騙していると思うと反吐が出る」
レオンの冷たい視線が、僕の瞳と真っ向からぶつかり合った。




