第24話:再戦、無の矢
翌日。
ガルガノスの外壁前。
渓谷を出た『虚無の粘獣』が、街を呑み込もうと蠢きながら迫っていた。
「蓮さん、本当に大丈夫なんですか……!?」
警備隊や冒険者たちが息をのんで見守る中、僕は一人、粘獣の正面へと歩み出た。
右肩の痛みは、不思議と完全に消え去っていた。
「キシャアアアアッ!」
僕の姿を認めた粘獣が、嘲笑うかのように再び周囲へ「絶対真空の結界」を展開する。
音の消えた暗黒の空間。
僕は静かに足を開き、地に足をつけた。
足踏み。
肩幅よりやや広く足を開く。
胴造り。
身体の軸を大地と垂直に揃える。
弓構え。
左手で握りを確かめ、右手の取懸けを整える。
打起こし。
肩の力を抜いて弓を静かに掲げる。
引分け。
左右均等に、力みなく引き降ろす。
雑念が、波が引くように消えていく。
勝ちたいという欲望も、敗北への恐怖も、敵への憎しみすらも。
世界からすべての色が削ぎ落とされ、僕と、和弓と、敵の核をつなぐ『一筋の射線』だけが白く浮かび上がる。
会。
矢筋に対して左右に緩むことなく伸び合う。
矢先に灯すのは、炎の赤でも氷の白でもない。
極限まで圧縮され、音も光も放たない『無の種火』。
(推進力も、空気抵抗も、ドリル回転も……今の僕には何も要らない)
(この一射は、お前の表面の障壁を『透過』し、直接内部の核へ衝撃を届ける)
離れ。




