↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したけど、低スキルでもやっていけますか?(弓道経験は有ります)  作者: sooomen


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/76

第23話:弓の原点と『無の境地』

深夜。月光が静かに差し込むギルドの自室。


「蓮さん……お粥を煮てきました。少しだけでも、お腹に入れてください」

シルフが盆を手に、心配そうな眼差しで部屋に入ってきた。


僕はベッドの端に腰掛けたまま、弱々しく首を振る。

「ごめん、シルフ……食欲がないんだ」


「蓮さん……」


「……僕は、天狗になっていたんだと思う」

絞り出すような僕の声に、シルフが息をのんだ。


「『現代の物理知識で異世界の常識をハックした』なんて、いい気になっていた。でも結局、仕掛け(カラクリ)を暴かれて対策されたら、僕は何もできない……あの傲慢な王都の魔法使いたちと、何一つ変わらなかったんだ」

拳を強く握りしめると、右肩の傷が激しく痛む。


悔しさと情けなさで、視界が歪んだ。

そんな僕の膝の上に、ぽとんと温かい温もりが重なった。

シルフが両手で僕の手を包み込み、青い瞳から涙をこぼしながら、まっすぐ僕を見つめていた。


「違います……! 蓮さんは、カラクリだけで戦ってきたんじゃないです!」


「シルフ……?」


「私、知っています……! 蓮さんが毎日、誰よりも早く起きて、誰もいない道場で何度も何度も弓の手入れをして、姿勢を正していたのを! 誰も見向きもしない弓という道具に、誰よりも真摯に向き合っていたのを!」

シルフの声が、部屋に優しく響き渡る。


「私を助けてくれた時の蓮さんの射撃は、手品なんかじゃありませんでした……! 私、信じています。蓮さんはこんなところで終わる人じゃないって……!」


胸の奥が熱く震えた。


(そうだ……僕は、トリックで勝つために弓を引いていたんじゃない)


高校三年間、道場に漂うピンと張り詰めた空気、静寂の中で弓と己に向き合ってきた日々。

僕の根底にあるのは『知識』ではなく、血のにじむ鍛錬で骨の髄まで叩き込んだ『弓道の心身』だ。

弓道の最高峰とされる境地——『正射必中(せいしゃひっちゅう)』。

正しい射法・正しい心で放たれた矢は、いかなる邪心や障害をも超え、必ず的に中る。


僕は立ち上がり、壁に立てかけてあった和弓を握りしめた。


「初級魔法『ボム・プチ』……これは、ただ燃やすための魔法じゃない。魔力を『高密度に凝縮した最小単位のエネルギー』だ」

熱を外に放つのではない。


矢の先端に『衝撃を内部へ直接到達させる透過エネルギー』として付与したらどうなるか?


空気の推進力に頼るな。


自分の放つ矢の「理」そのものを、一つ上の次元へ引き上げるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。