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第三章:ミルクソップ・アンド・ヘルキャット②

 琉貴の残した鎌を回収してあたしが通路を戻ってくると、誰かが倒れているのが見えた。辺りには赤や透明の液体が派手に飛沫を散らしている。

(うっわ……)

 肌の色が海松色ではなく、ゾンビとなってからの時間が浅いことを示す土気色であることから、写真サークルの誰かであることは見当がついた。しかし、いったい誰にやられたのか、頭部はぐちゃぐちゃに潰れ、ひどく状態が悪い。

 あたしは鎌の刃先で倒れたゾンビをつんつんとつついてみた。しかし、ゾンビは何の反応も示さない。どうやら完全に事切れているようだった。

 あたしは床を濡らす液体で滑らないように気をつけながら身を屈めた。ロングTシャツを汚したくなくて、あたしは裾を捲り上げて腹の前で縛った。

 ネイビーのストライプシャツ。その下に着た白の無地のTシャツ。そして何の変哲もないごく普通のジーパン。どっかでみたような気もするが誰だったかまったく思い出せない。

 あたしはゾンビの死体を観察しながら、ストライプシャツやジーパンのポケットを手早く確認していった。しかし、開始間も無くしてゾンビ化したのか、それとも他の参加者が既に死体を検めて使えそうなものを持っていった後だったのかは定かではないが、目の前のゾンビは何も持ってはいなかった。

 ちぇ、と舌打ちしながらあたしは立ち上がると、結んだロングTシャツの裾をほどいた。「いくら何でも死体漁りは引くわー」「それはねえわ……」とあたしを批判するようなコメントが近くの壁に投影されたあたしの配信画面を流れて行ったが、あたしは無視を決め込んだ。

 大雅の暇つぶしでこんなところにつれて来られてゾンビにされて。そして、こんなふうに惨たらしい形で二度目の死を迎えることになって。微動だにしない目の前のゾンビを哀れに思う気持ちがあたしの脳裏を通り過ぎていった。

 これが誰だか知らないけれど、あたしはこうはならないようにしないといけない。そのためなら死体漁りだとかディスられろうとも、あたしは手段など選ばない。

 あたしは配信画面のコメント欄を睨み返すとその場を後にした。


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